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JO7TCX アマチュア無線局 (2024/3/30 0:35:22)
現在データベースには 384 件のデータが登録されています。
先週に続き本日も泉ヶ岳。前回はいろいろと反省点があったことから、同じ場所、装備で運用してみることにしました。この間、アンテナ給電部の半田付けリペアおよびボルトの締め直し、手作り片支持ブームによるケーブル処理の見直しをおこないました。設営方法も三脚ではなくモノポールに変更。うまく設置できるかどうか試してみることにしました。
山頂付近より船形山(右手奥)
大東岳、面白山方向(左奥にかすかに飯豊連峰)
空気澄んだ秋晴れ。山頂付近からは遠く朝日連峰の全景、飯豊連峰の一部も確認できました。首尾どおりポール先端に片支持ブームと3エレ八木を取り付け、地面に突きさせば設営完了。3エレ+片支持ブームの重さは220g。今日は微風ということもあり問題なさそうです。ちなみにこのポールは雪崩捜索用のプローブ(ゾンデ)というもので、長さ2m~4mほどのものが各種あります。自分が使っているのはカーボンファイバー製で長さ2.4m、重さ200gほど。硬い雪面に突き刺して使うものなので丈夫でしなりがなく、アンテナ設置に重宝しています。
<本日の装備>
リグ FTM-10S(145MHz 10W弱で運用)
バッテリー 小型PD(12V給電)
アンテナ 3エレ八木
アンテナ向きは南西(飯豊連峰方向)。岩手、宮城、福島、新潟各局に応答いただきました。0エリアは妙高市、西蒲原郡弥彦村、五泉市、新潟市、長岡市、村上市。すべて固定局でFBな八木をお使いの局もありましたが、GPが多かったようです。ベランダ設置のモービルホイップから応答いただいた局もありました。定点運用を続けているこの山頂で0エリアと6局交信できたのは初めてです。最遠方は妙高市。53-55。12エレスタックをお使いとのことで終始安定して交信できました。妙高市とは山岳移動の局と何度かここでつながったことはありますが固定局は初めてでした。距離約280km。飯豊連峰や上越の山々が2重、3重の壁となる位置関係、FBなロケと設備で拾っていただいたようです。弥彦村とは53-51,五泉市とは51-41。0エリアから呼んでいただいているのはわかるもののコールサインが確認できず数回聞き返すという感じで、レポートおよびQTH、お名前を確認し、なんとか交信を続けることができました。アンテナの向きだけでなく、ポールを斜めに傾けると信号が浮いてくる場面もありました。モノポールなのでこういう場合の自由度は高く、いろいろとコツがありそうな気がします。
あっという間の2時間、アンテナ向きはほとんど動かしませんでしたが、南は郡山市、北は遠野市など。ほぼ途切れなく呼んでいただきました。
51cmのナロースペース3エレでこれだけ交信できれば御の字です。片支持ブームの効果大だったのでは? 八木はケーブル引き回しが勘所とあらためて実感しました。
泉ヶ岳での運用の際、同軸ケーブルの引き回し方により信号が大きく変化することにあらためて気づかされました。八木アンテナの意外な落とし穴と言えるのかもしれません。固定の場合は問題ないと思いますが、移動では毎回引き回し方が変わったりします。室内で再現してみたところ、やはり後方もしくは横に延ばすのがベスト。エレメント近くのマストで束ねたりするとSWR的にはさほど問題なくとも信号は悪化します。ということで、給電部コネクターから横にケーブルを伸ばせるように簡易的な片支持ブームを作ってみました。
以前も三脚ネジにストレートブラケットを取り付けて突き出す器具を作ったことはありますが、スチール製で重く、三脚以外のモノポールには使えない不便さがありました。今回は角材と目玉クリップ2個でポールに固定する方法としました。アンテナの固定は塩ビパイプ差し込み式。写真の通り簡便なものです。長さ25cm、重さ70g。
まだ実際に使ったわけではありませんが、三脚ポールにもモノポール(地面突きさし)にも対応可能となり、クリップ2個使用で自作の軽量八木なら問題なさそうです。わずか25cmであっても横に延ばすことでケーブルの影響が抑えられ、アンテナ本来の性能を引き出せるのでは?と少し期待しています。次回の運用で使ってみます。
山岳用アンテナの条件となるのは長さ、重さ、設営・撤収の手間、ある程度の丈夫さ、などなど。これらと利得との折り合いということになります。もう一つ重要なのは設営に三脚が必要かどうか。アローラインや軽量ホイップであればポールを地面に突き刺すだけで設営可能です。あるいは樹木を利用するとか。八木系の場合でも2~3エレ程度ならポール設置も不可能ではないと思うのですが、踏み切れないでいます。そこそこの利得があってもっと軽量なものはできないか?ということで、丈夫さにはこだわらず軽さに特化した4エレ八木を作ってみることにしました。5エレも考えたものの、ブームが1m近くになってしまい、ザックサイドに取り付けるにしても無理があります。ブームを分割すれば済むのですが、良い方法が思いつきません。4エレならなんとか許容範囲かと。
<材料>
角材 1cm×1cm×78cm
エレメント 60cmロッドアンテナ2本
太さ4mmアルミパイプ
太さ5mm銅パイプ
BNCコネクター
樹脂板、六角ボルト等
<製作>
放射エレメントはマッチング機構を兼ねてロッドアンテナとし、反射器、導波器はアルミパイプを使いました。エレメントにアルミパイプを使うのは初めてです。軽量化のメリットと変形しやすいデメリットがあり、今回は軽量化を優先しました。エレメント取り付けはブームに接着した5mm銅パイプに上下から差し込む方式としました。このような簡便な方法で下部エレメントが抜け落ちないのか、という心配はあります。またキツく入れ過ぎて、撤収の際に抜けなくなっても困るわけです。何度か試行錯誤しながらパイプの挿入部を慎重にヤスリで調整しました。アルミパイプはとても軽量で材質的にも少し弾力があり、うまく保持してくれるようです。手元での短時間の運用ならなんとかなるかな、と。エレメント寸法等は今回もネットデータを参考にさせていただきました。ブーム長78cm、重さ140g。2m用4エレ八木としては軽量なものにできたと思います。
<組み立て、調整>
反射器および第一、第二導波器エレメントを上下に取り付け、放射器ロッドの伸縮で調整します。データ通りの寸法でバンド内全域SWR1.3前後と良好な状態となりました。ベタ落ちとはならず、ロッドを伸ばしたり縮めたりしてみましたが、あまり変わりません。少しSWRが下がったところで調整終了としました。それにしても144~145MHz帯を中心にフラット。癖のない性格というべきなのか、このような鍋底状のSWRグラフはあまり目にしたことはありません。利得はともかく、広帯域で使いやすそうな特性ではあります。
この軽さならポール設置も可能な気がします。ただ、強風では持たないかも・・・。オープンスリーブによる430MHzデュアル化もそのうち試してみます。
定点運用を続けている泉ヶ岳。今年3回目、このところ週末の天気が崩れるのがパターン化していたのですが、やっと秋晴れに恵まれました。午前8時、登山口のバス停着。しばらくぶりの好天で広い駐車場はほとんど埋まっている状態でした。カモシカコースを直登、登り始めが南斜面のスキー場のため日蔭もありません。その日の体調が良いのかどうか、この斜面の登りでだいたいわかります。今日も足がはかどらず、後から登ってきた山ランのグループが追い越していきました。以前は追い越すことの方が多かったのですが、その後も次々追い越され、体力の衰えはいかんともしがたいものがあります。
岡沼
岡沼からの泉ヶ岳
山頂
それでもいつもとあまり変わらず90分ほどで山頂着。少し藪漕ぎしていつもの運用場所へ。この間作ったアンテナの中で、今回はブーム長51cmの小型3エレを持参しました。2mのみの運用なので430用エレメントは外して使用。
<本日の装備>
リグ FTM-10S(145MHz 10W弱)
バッテリー 小型PDバッテリー(12V給電)
アンテナ 3エレ八木
リグの電源を入れるとなぜかノイズ多めで、S1~2振ってきます。この山頂にノイズ源はないはずで、もしかするとPDバッテリー?とも思ったのですがどうも違う感じがします。気になりつつCQを出したところ、応答はあるもののどの局もなぜか弱めです。スケルチぎりぎりでとぎれとぎれだったり、ノイズに埋もれてしまったり。3エレなり利得が感じられません。腑に落ちないまま呼んでいただいた局と交信を続けていたのですが、こちらの信号はそれなりの届いているようでレポートは悪くありません。一方、こちらの受信は強くなったかと思うと弱くなったり・・・。ふと、同軸ケーブルの引き回しでは?と思い、だらりと地面に垂らしてみたところ51の信号が55まで上がり一気に了解度が良くなりました。ノイズも改善。八木の場合、反射器側の後方に延ばす、あるいは給電部から真横に引き回すのがベストなわけです。でも、それが不可能な場合はマストの途中で留めたりせず、なるべくエレメントから離してテントの張り綱のように垂らすのが良いようです。これまでも経験したことではあったのですが、うっかりしていました。
約2時間の運用。宮城、山形、福島、新潟の各局に交信いただきました。0エリアは新潟県長岡市固定局。相手局側で混信があったようで周波数を変え無事交信となりました。もう1局0エリアから応答ありとのアナウンスもいただき、エリア指定で呼んでみましたがノイズに埋もれて了解に至りませんでした。この時点でケーブル引き回しを調整していれば交信できたのかもしれません。11時過ぎ、ヘリコプターが飛来。山頂を10回近く旋回し、その爆音で交信不能になってしまいました。ちょっと消化不良な感じでしたが、帰りのバス時刻もあるので撤収、下山としました。
スキー場上部
帰宅後、3エレを点検してみたところ、給電部のボルトが緩んでおり、コネクター接続部が動いてハンダが取れてしまいました。半田不良? 運用中はなんとか持ちこたえたようですが、接点に問題があったかもしれません。今回はいろいろと反省することがありました。いろんな想定をして準備はするのですが、実際に運用してみてわかることは多いです。
山で無線運用しているといろんな虫が寄ってきます。アリやムカデ、ダンゴムシなどなど。人の体温やリグの熱を感知して寄ってくるのかもしれません。アリなどはIC-705のカラー液晶がお好みのようで、画面をはい回りながら色の変化を楽しんでいるようにも見えます。春から夏にかけては藪蚊の襲撃を受けるのはいつものことで、防虫ネットをかぶっていないと無線どころではなくなります。虫たちは時折ザックにも入り込み、自宅までお持ち帰り、ということもよくあります。無線と関係があるわけではないのですが、久しぶりに面白い本に出合えたので紹介してみます。
著者は里山を歩くのが趣味ということではなく、そこに棲む虫たちが好きでたまらないという正真正銘の昆虫オタクです。子どものころから蛇やムカデやクモを嬉々として捕まえては家に持ち帰る、不潔で不気味な生き物を連れて帰っても家族は目をつぶってくれたそうで、高じて今は研究者となり身近な裏山、はては異国のジャングルを徘徊して奇怪な生き物と戯れ格闘する。著者にとって裏山は、研究者になった今も、昆虫と出会えるフィールドであり、自由な実験室でもあるわけです。
専門はアリと共存しながら生息する好蟻性生物。たとえば著者の研究対象であるアリヅカコオロギはアリの巣に侵入した上、居候を決め込み、アリの餌を盗むことで生きている昆虫で、その方法はアリの体表をなめるようなしぐさで匂いをはぎ取り、それを自分の体に塗り付けることで仲間と勘違いさせる、身分偽造の達人なのだとか。プランターなどでもよく見かけるアブラムシも好蟻性生物で、「アリがアブラムシの体をシステマティックに叩くと、アブラムシが尻から透明な液体とプウッと出し、それを吸い込む。そんな彼らの様子を何も考えずにぼうっと見つめるのが、私は好きである」。
怖い話も出てきます。南米ペルーの森にはヒトヒフバエというハエがいるとのこと。このハエは蚊を捕らえて体表に産卵し解き放つ。卵を産み付けられた蚊はやがて人を見つけて血を吸う際にハエの卵が人の皮膚に入り込む。そして人体を栄養源に孵化、成長する・・・。実に巧妙な戦略に驚き、しばらくこのくだりは頭から離れなくなりました。幸い、著者たちは吸血されずに済んだのだとか。
こういう話がこれでもかと続くのですが、それでも研究をやめないのは、わかならいことをわかりたい、自分自身のとめどない知識欲を満たしたい、という純粋な知的好奇心ということのようです。探求していく過程での楽しさ苦しさ、そしてわかった時のなにものにも代えがたい達成感。金にもならず、すぐに社会の役に立つわけでもない。しかし、「それまで誰もわからなかったことをわかる状態にする、わからないことをわかりたい、それこそが科学の本質。頭の中でこれはこうだろうと思い描くだけで結局何もしないのと、実際にそれを見て確かめることとはまったく別次元の話である」「裏山での役に立たない小虫の研究は、わからないことをわかりたい好奇心、それだけでおこなうものである。何より、そうした研究のなかにこそ科学という言葉の本来持つ重みが隠されていると、私は思うのである。私には、裏山で解決したい謎がまだたくさんある。裏山は、まだ我々の知りえないものを隠し続けている」。
書かれたのは2014年です。寄生や共存、あるいはだまし合い、それによる複雑で豊かな共生、そして小さな昆虫たちが環境全体に与える影響・・・。新型コロナパンデミックとその後の社会を予見しているかのような記述もあり、考えさせられました。ワクチン接種にしてもいわばウイルスとのだまし合いかと・・・。書名に魅かれてたまたま手に取ってみた本ですが、読み始めたら止まらなくなりました。記述が詳細で濃く、密度感は相当なものです。移動運用の際に寄ってくる虫たちも、どこか親近感を持って眺められるような気がしてきました。
『裏山の奇人 野にたゆたう博物学』小松貴著
東海大学出版部 フィールドの生物学⑭
通常1/2λダイポールを使う八木アンテナの放射器を1λループアンテナに置き換えたものをLFA(Loop Fed Array)アンテナというそうです。立体構造となる多エレメントループアンテナと違い、平面なので設営や取り回しは容易な感じがします。この間いろいろと試してきたオープンスリーブですが、ループ型放射器の場合でもデュアル化が可能なのかどうか、可能であればエレメント配置はどのようになるのか、そんなことに興味が涌き、作ってみることにしました。
まずは145MHzのLFAアンテナを作ります。ネットにシュミレーションデータが公開されていたので、参考にさせていただきました。製作自体はデュアル八木やモクソンアンテナと同じです。角材ブームにロッドエレメントを取り付け、ループ型放射器は銅パイプとミノムシクリップで作りました。ロッドアンテナを8本使い、大きさ的には4エレ八木に近いです。ブームも長めでザックサイドに取り付けることになります。また、上下各4本のエレメントがきれいに揃うように角材を削って調整しました。これがけっこうクリティカルな作業で、見た目だけでなく性能に影響を与えるので気を遣う部分です。
組み上がってシュミレーションデータの寸法で測定したところ共振点がだいぶ上にあり、バンド内すべてSWR3以上となってしまいました。エレメント材質や太さが違うためデータ通りとはいかないにしても、ちょっと想定外。手ごわい調整が必要なのでは?と不安がよぎりましたが、そうでもありませんでした。反射器と導波器はいじらず、ループ放射器のロッドを少しずつ伸ばしたところメイン付近まで共振点が下がり、SWRもあっけなく1.1前後と良好な状態に落ち着いてくれました。気難しいところはなく、考えていたより素直な特性です。145MHzのLFAアンテナ完成。
続いてオープンスリーブによるデュアル化。といっても今回はうまく430MHzに共振してくれるのかどうか? 共振するとすれば第一導波器の位置はループの中なのか、あるいは前方外側なのか? 太さ2㎜、長さ33cmの銅パイプを例によってセロテープでブームに貼り、測定を繰り返しました。はじめループの中ほどに貼り付けたところバンド全域SWR2以上。でも、マッチングしそうな感触もあり、少しずつ移動させていったところ、給電部から2cmのところで急にSWRが下がってくれました。上の方に共振点があるようでさらに移動させたりエレメント長を調整してみましたが追い込み切れず、この位置で確定としました。
その上で、第二導波器の位置を同様に探っていきました。ループ内ではどこもSWRが大幅に悪化してしまいます。結局、ループの前方7cmでSWRグラフがもっとも良好となり、確定としました。第一導波器のみよりも第二導波器を取り付けた方がSWR的には改善します。また、430用エレメントを付けても外しても145MHzへの影響はみられません。これまでの経験からはループアンテナの中に金属類を入れると良いことはないのですが、このケースの場合は違うようです。略図、下記の通り。
430第一導波器のみのSWRグラフ↑
430導波器2本取り付けた際のSWRグラフ↑
ということで、LFAアンテナのオープンスリーブによるデュアル化、一応の奏功をみました。ただ、SWR的に問題ないとしても両バンドの放射パターンがどうなっているのか、などは不明です。実際に使ってみて何か気づくこともあるかもしれません。
室内の三脚に設置し145MHzをワッチしたところ、タイミングよく秋田県の秣岳移動局の交信が聞こえてきました。方角を合わせ51。3エレ八木に換えたところノイズが増えて41。さらに2エレ八木に換えたところ信号は確認できるもののノイズに埋もれ聞き取れませんでした。145MHzについては悪くない印象です。LFAは欧米で6mバンドを中心に人気があって、低ノイズかつFB比と利得に優れるとの評価のようです。ブーム長74cm、重さ220g。自分的には大きめなので持っていく機会は限られますが、時々使ってみたいと思います。
昨日、大年寺山にて3エレ/4エレデュアル八木を使ってみました。 145MHzに関しては2エレで51の信号が3エレでは54~55に上がり、耳Sでも利得の違いがはっきりわかります。一方、430MHzは4エレのわりに今一つな印象がありました。前作の小型デュアル八木(2エレ/3エレ)よりもほんの少し劣る感じがあります。試しに第二導波器を外して第一導波器のみにすると大幅に信号が悪化。反射器については外しても変化なし。反射器の意味をなしていない? ということで、帰宅後、反射器の配置と長さを見直してみました。
製作時はIC-705のSWRプロット機能を使い、共振点とSWRグラフを見ながら最適と思われる個所にエレメントを配置しました。今回は実際に固定局からの弱い信号(41~51ほど)をベランダで受信しながら、良く聞こえる位置を探っていくことにしました。第一導波器と第二導波器はいじらず、反射器のみいつものセロテープ貼り付け法で探ったところ、どの位置も大きな変化はありません。それでもこれまでの取り付け位置よりも放射器の後方2.0cmで信号が安定するのがわかりました。エレメント長も少し調整しました。第一導波器にしても反射器にしても放射器から近すぎ、これがベストではないようも思います。オープンスリーブの挙動、よくわかりません。この状態でSWRをプロットしたのが下の写真です。
修正後の寸法
変更前と比べ上の周波数で少し悪化しているものの問題なし。アナログレピーターに接続したところ、これまでよりSメーターで1~2個上がります。いくらか耳Sの向上も感じられるのでこれで良しとしました。SWRがバンド内ベタ落ち、それで性能を発揮するかというとそうでもなく、かえってSWRのみにこだわると肝心の性能を犠牲にしてしまっている、ということがあるのかもしれません。放射器の寸法も野外での測定に沿って少し修正しました。145MHzの性能は3エレとしては十分手ごたえがあり、使い勝手は悪くありません。防水などさらに手直しが必要かもしれませんが、山ではこれをメインに使おうかと考えています。
この間、オープンスリーブによるデュアル化を実験的に試してきました。共振という現象の深層に分け入るような面白さがあり、興味深く感じています。製品化もされており、自分が知らなかっただけで以前から普通に使われていた技術なのだろうと思います。比較的容易にデュアル化できる方法にも関わらず、ネットの製作記事やアンテナ製作本にもあまり見当たらないのが不思議です。
さて、いくつかのメーカーから3エレ/5エレタイプのVUデュアル八木が製品化されていますが、どれもブームはけっこう長いです。同様のものでザックにすっぽり入るようなものが作れないかと考え、ブームを50cm程に抑えた145MHz3エレ、430MHz4エレ(放射器共用)のデュアル八木を製作してみました。
<製作>
今回もブームに角材を使いました。軽く、精度が保ちやすく加工もしやすい、間違っても修正がきく、という点でとても重宝しています。固定用には向かないものの移動用なら強度も問題なし。塗装を施せば耐候性も悪くないと思います。製作は先に145MHzの3エレを作り、その上で430MHz用のオープンスリーブエレメントを追加します。145の3エレはネットに公開されていたデータを参考にしました。利得よりも小型化重視です。430用エレメントの反射器と第一導波器はモクソンデュアル化で使ったものを活用し、第二導波器のみ追加。5エレも考えましたがこのブームでは無理があり4エレとしました。ブーム長51cm、重さ175g。エレメント寸法、間隔は調整後に下記のようになりました。
給電部作製
前作(左)と今回のデュアル八木
収納状態
<調整>
145 MHzは上記の寸法がほぼ無調整の状態です。メイン付近でSWRベタ落ち。帯域は広くバンド内1.2以内。430MHz用エレメントは反射器と第一導波器をはじめに取り付け、その上で第二導波器を追加。モクソンデュアル化の経験から放射器からのおおよその間隔の見当をつけ、例によってセロテープで貼り付けて測定を繰り返し位置決めしました。放射器と第一導波器の間隔はわずか1.3cm。追加の第二導波器も33cmの銅パイプを同様に位置決めし1mmずつ切り詰めSWRの良好な寸法となったところで確定としました。オープンスリーブの特性なのか、1mmカットでも変化が大きくクリティカルです。調整の結果、バンド内SWRベタ落ちとなりました。かなり帯域が広いです。
なお、第一導波器1本のみでもマッチングしますが、帯域が狭くなりSWRも少し悪化します。430用エレメント3本を取り付けた状態で再度145 MHzを測定したところまったく影響は見られず、これで調整終了としました。
ベランダおよび室内で受信してみました。弱めの信号で前作の小型デュアル八木(2エレ/3エレ)と比較したところ145 MHz についてはS1ほど強くなり、3エレなりの利得が出ているようです。430MHzは明確な違いというほどのものは感じられず、といったところです。オープンスリーブによるデュアル化、感覚的にだいぶ慣れてきました。エレメント寸法、配置ともほぼ想定したスケッチ通り製作を進めることができました。期待した性能が出るのかどうはこれから。近いうち野外で試してみます。
製作したデュアル八木の145MHzエレメント間隔が28cmで、定型的なモクソンアンテナの寸法に近いということに後で気づきました。これならさほど手間なく2エレ部分をモクソン化でき、大きさも2/3ほどに抑えることができるのでは? ただ、放射器のサイズも変わってしまうことになり、オープンスリーブで作動している430MHzのマッチングはどうなるのか? そんなことを考えながら試してみることにしました。
145MHzエレメント部材はロッドアンテナなので、縮めるのみです。横エレメントはモクソンの定型サイズに切った銅パイプとミノムシクリップをハンダ付け。隙間部分には今回もaitendoの4cm樹脂ナットを使いました。隙間1.7cmを確保し固定します。あとはロッドエレメントの上下に挟むだけです。ほぼ定型的な寸法なので145MHzのマッチングは問題なく、微調整しデフォルト以上にベストな状態になりました。一方430MHzは予想通りまったくマッチングが取れなくなってしまいました。下記のような試行錯誤でなんとか事なきを得ましたが、オープンスリーブの難しさも実感しました。
横エレメント
前作(左)と今回のデュアルモクソン
<430MHzの調整>
430用導波器2本の長さを変えればなんとかなるのでは?と安易に考えていたのですが、ほとんど変化ありません。前作と同じように放射エレメントの後ろに反射器を付けてはどうかと思い、32cm程の銅線をセロテープで貼り付け、位置を変え、銅線の長さも変えて測定を繰り返しましたが、はやり同調する気配がありません。何を試してもバンド内SWR3以上。少し甘く考えすぎていたかもしれません。万事休すと思いましたが、ダメもとで導波器を追加してみることしに、放射エレメントと第一導波器の間に銅線を入れてみたところ、ストンとSWRが下がってくれました。放射エレメントとの間隔は1.3cmしかありません。他の導波器2本はこれまでどうりで変更なし。こんなに放射エレメントの近くに導波器を入れて、145MHzの方は大丈夫なのかと再度測定したところ、何の影響も見られません。オープンスリーブの振る舞いというのは一筋縄ではないようです。
導波器3本状態でのSWR ↑↓
<使用感>
本日、大年寺山にてJP7IEL局にお相手いただき、デュアル八木の状態とモクソン化した状態で使ってみました。結論を先に書くと145MHz、430MHzとも性能的な違いは感じられませんでした。RH770およびナテックの3エレ(430MHz)と比較したところ430はRH770で41、デュアル八木およびモクソン化状態で52となり、明らかに信号が上がり変調も力強さが増しました。ナテック3エレとは同等の感触です。145ではRH770よりも少し変調が強くなった感じはあるものの信号自体は変わらずといったところでした。JP7IEL局からのレポートも同様です。手間なく設営できるのはデュアル八木、コンパクトさではモクソン。
デュアル八木
モクソン化
今回もっとも興味があったのはオープンスリーブの430でうまく電波が飛んでくれるのかという点ですが、直接給電したアンテナと同様に送信、受信とも問題なく、何か違和感のようなものもありませんでした。145はいずれも2エレなりの性能、むしろ430の方が期待以上という感じでした。オープンスリーブ、なかなかです。どこか捉えどころのない手ごわさはあるものの、短いブームで多エレメント化するなどいろいろ考えられそうな気がしています。
モクソンアンテナのデュアル化でふと脳裏に浮かんだのがCQオームのOHM-2243VBという小型八木です。145MHz2エレ、430MHz3エレとして機能するベランダ用アンテナで、以前に購入を考えたこともあります。ナガラ製とのことで重さが1.2kgあり、とても山に持って行けそうになく躊躇しました。ホームページに掲載されている略図をみると430用エレメントへの給電はなく、オープンスリーブとなっているようで、モクソンデュアルと同じ原理と考えてよさそうです。実際どのように動作するのか、モクソンデュアルとの違いは? そんなことに興味が涌いて略図を参考に自分なりに自作してみることにしました。いつものことながら山で手軽に使えればよい、そんな考え方なので耐久性は考慮せず、軽量化優先で作りました。
<材料>
ロッドアンテナ60cm 4本
直径4mmおよび3mm銅パイプ
BNCコネクター
角材1cm×1cm×46cm
樹脂板、丸端子ほか
すべてあり合わせの材料です。寸法はOHM-2243VBを参考にほぼ同じに作りましたが、エレメント材質や太さに違いがあり、最終的に調整し下図のようになりました。
<製作>
2エレ、3エレであっても八木の場合エレメント間の歪みが出やすいので、今回もブームは角材です。給電部は同軸ケーブルの引き回しを考慮し直結でなくBNCコネクターとしました。前回同様430エレメントは上から差し込むだけの銅パイプ差し込み式を採用。軽量化できる上に手間がかからず気に入っています。給電部(放射器)、反射器、差し込み用銅パイプ(4mm)を所定の位置に取り付けたら補強のため接着材で固定。あとは乾いてしっかり固定されるのを待つのみ。工作は以上です。ブーム長46cm、重さ125g。コンパクトさではモクソンに分があるものの、山に持っていく気持ちになるくらいの軽さには仕上がったと思います。
<調整>
はじめOHM-2243VBと同じ寸法にしたところ、145MHzは問題ないものの430MHzは上の方に共振点がありました。この状態でも悪くはないですが、放射器および430第一導波器の長さを少し調整しました。その結果、145はバンド内SWR1.2フラット、430はメイン付近で1.2~1.3、430.000~436.000まで1.5以下。両バンドとも帯域が広く、モクソンよりも性格が素直というか使いやすそうなアンテナといったところです。なお、430の第一導波器のみでもマッチングするのはモクソンデュアルと同じです。また430エレメント2本は取り付けても外しても145MHzのマッチングに影響はないようです。
モクソンデュアルは導波器1本と反射器、このアンテナは導波器2本、ならば反射器を追加して4エレ? にしてみるとか・・・。まあ、暇を見て追々試してみます。直接給電せず、エレメントの寸法と配置のみで別の周波数帯の電波を乗せてしまう。オープンスリーブによる八木のデュアル化、なかなか興味深く、面白いです。