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<ヤマト運輸のQSL拒否やハムフェアのアンテナ問題など、詳細が明らかに>JARL「第4回定時社員総会」の要点をリポート (2015/6/16 6:30:50)
2015年6月14日(日)13時、一般社団法人 日本アマチュア無線連盟(JARL)の第4回定時社員総会が東京・新宿の民間会議施設で開催された。その討議の中で明らかになったJARLが抱えるトラブルの真相や収支状況などについての要点をリポートしよう。
今回のJARL第4回定時社員総会は、選挙で選ばれた全国127名の社員のうち125名が出席し(開会10分前の12時50分現在で出席者は116名)開催された。このうち第2号議案の「理事選任の件」で、JG3CCD石本氏の理事就任が反対多数で否決されたことは 当日の速報記事で紹介したが 、それ以外にもさまざまな注目点があった。
本記事では、討議の中で明らかになったJARLが抱えるトラブルの真相や収支状況、さらにはさまざまな事業へのJARLの取り組みなどの要点をリポートする。まず山之内俊彦会長(JA7AIW)の開会挨拶の要旨を紹介しよう。
★山之内俊彦会長の挨拶より
「JARLはいろいろ問題を抱えている。一番の問題は会員の減少である。平成6年にJARL会員は18万5千名いたが、現在は5万5千名しかいない。ここ20年ずっと減少が続いている。もう一つは会員のピーク年齢が60歳代であるという点だ。連盟なくしてアマチュア無線の今後の発展はない。そこで私が会長に就任した際、やろうと思ったのは会員増強だ。インパクトの強い“創立90周年キャンペーン”は、会員増強の絶好の機会だと思う。ぜひ協力をお願いしたい」
続く第1号議案(平成26年度決算承認)と、報告事項である平成27年度事業計画案と予算案で玉眞専務理事(JA1SLS)が説明した内容から、注目されるものを抜粋してみた。
★玉眞専務理事による説明と質疑応答から注目されるポイント
・JARLの平成26年度経常損益は「マイナス1,420万円」で、これは昨年よりも5,170万円の収支改善が図れた。
・平成26年度の経常収益は前期よりも2,540万円増加した。特に会費収入はここ10年減少が続いていたが、今期はライフメンバー会費の収入があり、受け取り会費はプラス3,140万円となった。
・JARL NEWSはライフメンバーに配布していた分の印刷が約2万部減ったことから、年間で760万の節約が図れた。
・TSSからアグレックスに業務変更を行ったことで、JARL Webやメール転送サービスの費用が510万円節約できた。
・TSS株式会社との裁判で、現在までに弁護士費用とJARL職員の人件費を合わせて8百数十万円の費用がかかっている。裁判はTSS側の弁護士が何度も代わり、その都度主張も変わっているため論点整理に至っていない。まだ時間がかかりそうだ。
・TSSの代表者を会員除名することは現時点では考えていない。裁判に勝訴した場合、TSSにかかった弁護士費用の負担を求めることは法律的に難しい。
・6月14日午前中に開催された理事会で、青少年のJARL入会優遇処置として、入会金(1,000円)の免除を7月1日から実施することが決まった。次の会費改定の際には「青少年会費」も検討したい。また今後は「子供の科学」誌で子供たちに向けたアマチュア無線のタイアップ企画を行っていく。
・長野県茅野市に保有する1,000坪の土地は、信越地方本部の担当者が定期的に巡回している。三菱UFJ不動産販売に2,450万円で売却依頼を行っているが、なかなか買い手が見つからないのが現状。売却に特別な経費は掛かっていない。
・ライフメンバーの中で年額7,200円の会費を支払ったのは2,651名、年額3,600円のQSL転送手数料を支払ったのは3,382名。合計でライフメンバーの約26%が支払いに応じてくれたことになる。引き続きライフメンバーの皆さんの支援をお願いしたい。
・JARLの創立90周年イベント関係の費用は約700万円で、これは平成27年度の広報活動費に計上する。
・JARLは現在、Webサイト(JARL Web)の大幅見直し作業を行っている。会員の関心が高い話題を表示したり、検索窓を設けるなどの工夫を行っていく。
・「旧スプリアス基準」のアマチュア無線機での免許問題は、極力アマチュア無線設備の不利にならないようまとめてもらうよう、総務省と詳しく打ち合わせを行っている最中だ。方向性が出た段階で報告したい。
続いては、5月16日に開催された第22回JARL理事会の開催報告で明らかになった「ハムフェア2015会場のアンテナ設営問題」と、「ヤマト運輸がQSLビューローからのカード発送を拒絶」という問題について、社員の質問によるJARL側の説明をまとめてみよう。
★ハムフェア2015会場のアンテナ設営問題
・これまでハムフェア会場のアンテナ建設は、JARL賛助会員である株式会社FTIが請け負ってきたが、同社から今年の賛助会費の支払いが行われなかった。
・そのためJARLがFTIに確認したところ、ハムフェア実行委員でもあるJARL理事とFTI社の過去の取引において若干の金銭トラブルが起き「FTIとしては、そのような方がいらっしゃる連盟とは今後取引できない」という回答があり、「賛助会員を退会し、ハムフェアのアンテナ建設も今後請け負わない」ということだった。この件は、山之内会長に入ってもらい先方とも話をしたが進展がなかった。
・ハムフェア2015会場のアンテナ建設は、他の企業にお願いする準備を進めているが、費用はFTIがこれまで請け負っていた約80万円という代金から、数倍のコスト増になりそうである。今後も費用面の折衝を続けたい。
・なお同理事は現在もハムフェア実行委員の地位にある。これは1回だけ実行委員を降りても業者との軋轢は解消しないためで、現在のところ退任は保留となっている。
★ヤマト運輸がQSLビューローからの発送を拒否した問題について
・従来JARLはQSLビューロー(島根県出雲市)から会員宛のQSLカード発送に、ヤマト運輸のメール便を使っていたが、2015年3月末で廃止されることが1月に発表された。
・ヤマト運輸はメール便の大口需要客については、廃止を半年程度は猶予してくれるということだったので、JARLは2015年9月ぐらいに発送システムの変更を行う予定で準備に取りかかっていた。
・ところが、あるJARL会員が「QSLカードは信書である(メール便での発送は郵便法に違反する)」とヤマト運輸に執拗に迫った。
・その結果、ヤマト運輸から「もうQSLビューローからの発送引受はできない」という通告がJARLにあった。
・JARLは急遽5月下旬から、QSLカードの発送を郵便などに変更したが、その対応費用や梱包費用の増加で、これまで1200万円程度掛かっていたQSL発送費用が、今後は2倍かそれ以上に増加する見込みだ。
・JARLは従来から「QSLカードは信書ではない」と思っている。社団法人時代は毎年総務省(郵政省)による監査を受けてきたが、QSLカード転送が問題になったことはなかった。
・ところがこの会員は、総務省に「QSLカードは信書に該当するか」を照会した模様で、同省は「信書である」と回答したようだ。
・JARLは総務省に呼び出され(玉眞専務理事と担当課長が出席)「QSLカードは信書ですよね?」と問われたので、「私共としてはそう思っておりません」と回答した。
・総務省側は「もし(信書に該当しないという)記録が残っていたら、それを示して下さい」と求めてきた。斉藤専務理事(JA1AD)時代と思われる古いJARL NEWSに「QSLカードのリマークス欄に言葉を書くと信書になるので、なるべく控えてほしい」と書かれていたので、それを説明した事実がある。
--なお、本件を質問した社員によると、「QSLカードが信書である」という指摘をヤマト運輸や総務省に入れたJARL会員は1人ではなく、複数名いた模様だ。
動向が注目されるJARLの「モールス符号をユネスコの無形文化遺産に登録推進」という運動について、現在の状況は次のように説明があった。
★モールス符号の「ユネスコ無形文化遺産」登録について
・モールス符号をユネスコの無形文化遺産にするため、JARLは文化庁と接触したが、日本国内では登録待ちの候補が300から400もあるようだ。1つの国に対して1年に1つしか採択できないので、400年かかる計算になる。
・この運動はIARUあげてのプロジェクトなので、諸外国と連携し、日本以外の国で採択してもらえればと考えている。
・いずれにしても実現までに5年から10年はかかるかもしれないがJARLとして推進していきたい。
・なお「和文モールス」を候補に盛り込むのは難しい。ユネスコの無形文化遺産ではないが、なんらかの方法で和文モールス符号も残していきたいと考えている。
今回の第4回定時社員総会は16時42分に終了した。出席した社員は合計125名(総数127名のうち欠席者2名)だが、実際に質問や発言を行ったのは、事前に質問事項をまとめた「準備書面」の提出者が18名、準備書面は提出しなかったが当日質問や発言をした11名の計29名だった。ここから議長団の2名を除いた94名は「出席したが、質問も発言も行わなかった」ことになる。この話題と質問者・発言者のコールサインなどが、社員である JJ1WTL・本林良太氏のブログに掲載されている 。
●関連リンク:
・JARL第4回定時社員総会開催される(速報)(JARL Web)
・社員総会報告1(CIC:JJ1WTL 本林良太氏のブログ)