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feed 続・探り式鉱石検波 (2015/9/20 20:53:43)



 『ぼくらの鉱石ラジオ』によると、JOAK東京放送局(現在のNHK第一放送)の本放送がが始まった大正14年(1925年)頃、国内の受信機の7割は鉱石ラジオだっとのことです。それから、90年、現在の高度な集積回路への変貌を思うと、「鉱石検波」というのは、偉大な発見だったのだな、とあらためて考えさせられます。ラジオに限らず、鉱石や鉱物というのは、いつの時代も資源として役立てられたり、多くの元素が発見されたり、はたまた争いの種になったりと、人類と深い関わりを持ち続けてきたわけです。鉱物は世界に約4700種ほどあって、今でも毎年数種類の新鉱物が発見されているのだそうです。

 さて、数年前、磐梯山登山の帰りに寄った資料館の売店で方鉛鉱を入手し、鉱石検波の実験をしたことは以前に書いた通りです。「石」で検波できることに素直に感動した記憶があります。その後、しばらく遠ざかっていたのですが、鉱物とか鉱石にまた興味がふつふつと涌いてきて、今回、いくつかの新たな「石」を入手し、検波実験をしてみました。

 
 ・方鉛鉱
 ・黄鉄鉱 
 ・紅亜鉛鉱
 ・シリコン(ケイ素)単結晶
 ・シリコン精製結晶(製造加工品 純度99.9999%)





 方鉛鉱と黄鉄鉱は、前回使ったものです(産地不明)。 『ぼくらの鉱石ラジオ』で、最も高感度と紹介されている紅亜鉛鉱は、どうしても試してみたかった鉱石の一つで、今回入手したのは、天然ではなく、ポーランドの亜鉛精錬工場の煙突内で、偶然に生成した酸化亜鉛の結晶です。厳密には鉱物とは呼べませんが、組成としては紅亜鉛鉱と同じもの。
 
 もう一つは、ミズホ通信研究所で領布されていたシリコン結晶2種。現在の半導体原料の主流をなす物質なので、ある意味、検波できて当たり前、という感じもしなくもありませんが、興味が涌いたので、入手してみました。

 ゲルマラジオ実験ボードに簡単な鉱石検波装置(ただの銅板)をつなぎ、実験開始、今回は、検波器の針を、1)縫い針、2)ノック式ボールペンのスプリング、3)針穴の糸通しの3種類で試してみました。


検波器具

検波器の針各種 (昔ながらのスプリング式がベストでした)


 実験の前に、ゲルマニウムダイオードでNHK仙台第一放送に同調をとっておきます。これをしないと、永久に針で探り続けることになります。鉱石ラジオ全盛期は、同調をとりつつ、検波したことを考えると、当時の苦労と根気は並大抵ではなかったと思います。


 はじめに、方鉛鉱と黄鉄鉱。どちらもうまく探り当てると、かなりの音量で聞こえてきました。針を手持したこともあって、安定して受信するのは難しく、大きな音量で聞こえたかと思うと、すぐに聞こえなくなったり。突然、さらに大音量で聞こえてきたり。この唐突感が探り式の楽しいところでもあります。どちらかというと、方鉛鉱の方が、探るのも楽で、感度も一枚上手という印象です。


黄鉄鉱


 次に、本命の紅亜鉛鉱。入手したのは直径1.5mm、長さ約3cmの小さな針状の鉱石です。磨いて宝石にされることもある美しい結晶。これで半導体??? 方鉛鉱や黄鉄鉱は、見た目にも金属という感じはありますが、これは透明感のある結晶そのもので、亜鉛が主成分といわれてもにわかに信じられない姿をしています。


半透明の紅亜鉛鉱


 折れないよう、そっと検波器に置いて、針を当ててみると・・・。なんと、なんと、感覚的には方鉛鉱の倍近い音量で聞こえてきました。不思議なことに、結晶のどこに針を当てても安定して検波できるのです。これぞ鉱石の神秘。

 続いて、『ぼくらの鉱石ラジオ』に紹介してあった、もう一つの方法。この紅亜鉛鉱の結晶を検波針として使う接合型鉱石検波を試してみました。結晶を慎重にミノムシクリップで挟み、方鉛鉱に当ててみたところ、音量アップが実感できました。安定感も良好で、スプリング針で検波が難しくとも、接合型にすると検波可能に。黄銅鉱との組み合わせがベストのようですが、方鉛鉱でも接合型検波の優位性を確認できました。ただし、黄鉄鉱ではうまく検波できず、相手の鉱石を選ぶようで、この辺りは課題としておきます。


紅亜鉛鉱と方鉛鉱の接合検波


 最後に、シリコン結晶。ケイ素単結晶はタテヨコ4cmほど、もう一つは工業的に純度を高めた直径3cm程の円盤型結晶。言わずと知れた半導体の主要元素。地殻中に大量に存在し、希少鉱物というわけではありませんが、結晶の現物を見るのは初めて。

 さっそく、針を当ててみると、どちらもたいへん良好に検波します。どこに針を当ててもほぼ検波可。安定度抜群。感度も今回実験した中では最も大きな音量で受信でき、ケイ素単結晶と高純度精製したもの、二つの違いはほとんど感じられませんでした。ケイ素の元素としての発見は古く、90年前にも既に精製技術は存在していたようですが、これを使えば、探る必要もほとんどなく、楽に受信できたのでは?


どちらも良好に受信



 1N60や1N270などのゲルマニウムダイオードには感度では及びませんが、放送が聞こえた時の感動は、探り式鉱石検波ならではのものがあります。空中の高周波信号と地中深くの鉱石、そして自分自身とが共振しているような・・・。異界に迷い込む楽しさ、そしてしばし異界に転んでみる、そんな感覚。いつか、自分の住んでいる県内産の鉱石を探して、そんな異界の声を聴いてみたいと考えています。





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