無線ブログ集
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無芯コイル鉱石検波ラジオ (2015/9/23 5:54:10)
先日の鉱石検波実験の際、銅板だけの簡易装置では、安定して検波する難しさを痛感したことから、単体で受信できる鉱石検波専用のラジオを作ってみることにしました。構想は以前からあって、『ゲルマラジオ製作徹底ガイド』や『レトロラジオの製作に誘う本』などを参考に、やっと実現をみたというところです。製作にあたっては、これまで同様、1)外部アンテナ、アースなしで受信できること、2)セラミックイヤフォンではなく市販のステレオイヤフォンを使えるようにすること、を課題としました。鉱石の場合、ゲルマニウムダイオードほどの感度は期待できないことを考えると、ハードルはより高いと言えます。
まずはコイル。石で検波するレトロなラジオなので、リッツ線を使ったバスケットコイルを思い浮かべ、実際、直径10cmのコイルを作ってみましたが、期待したほどのQは得られませんでした(実験ボードで実際聞いてみての印象)。そこで考えたのが、表皮面積のとれる太いポリウレタン線を使い、かつ、直径をさらに大きく巻き、少しでも巻枠の影響を受けないよう無心コイルにしてしまう、という方法。昔のエナメル線と同様のもので、いかにも工作実験という雰囲気があって、鉱石ラジオにふさわしいのでは?と思えなくもありません。巻枠(ボビン)が受信に影響するのかどうかは未確認ですが、無いに越したことはないし、巻枠からフリーになるということは、余計なコストもかからず好都合なわけです。
ということで、太さ1.7mmのポリウレタン線を直径15cmで巻いてみました。いったんパイプに巻いて、あとで外すことにします。太くて巻きにくいですが、コイル巻きは大好きなので苦になりません。巻き終わって、ホットボンドで固定。一晩置いてパイプから外し、今度はコイル内側をホットボンドで再度固定し、外側のボンドは取り除く、こんな手順を踏み、何とか完成させることができました。41回巻き。30回巻きのところに中間タップを一か所。リッツ線に比べ、タップ出しは楽ですね。インダクタンス252μH、中間タップ145μH。891KHzのNHK仙台第一放送メインなので、これで良しとします。
パイプに巻いた状態
パイプから外し無芯に
次に、検波装置。『ぼくらの鉱石ラジオ』には、上から針で突くタイプや横から差し込み針を載せるタイプなど様々な検波器が紹介されています。全盛期は、鉱石が動かないよう金属カップに入れてハンダ固定したものが多かったようです。自分としては、様々な鉱石を交換して検波する目的であること、しかし、安定受信のためには動かない工夫が必要なこと、などから、直径15mmnの銅パイプで深めのカップを作り、その中に半固定することにしました。針は3mm銅パイプにボールペンのスプリングをハンダ付け。持ち手部分は基板用のベーク材です。上から突くオーソドックスな形にしました。
こんな感じではんだ付け
以上でコイルと検波器完成。あとはいつも通り板材に配置、配線ですが、今回は、見た目にもこだわって、裏面配線にしてみました。トランスはラジオ少年の200KΩ:8Ωタイプを使用。今風にならないよう基板は使わず、板材に穴を開けて直に固定。こんなことができるのも板材ならではです。タップ切り換えも1か所のみなのでスイッチ式とし、木片で固定。
完成
正面から
検波部
検波器、切り替えスイッチ、トランス配置
検波器上部
トランス取り付け
コイル部取り付け 銅パイプで補強
裏面配線
実際製作を始めてみると、考えていた通りにいかなかったり、逆に作っている最中に新たなアイディアが浮かんで変更を加えたり、今回は想定外のことが多く、時間ばかりかかってしまいました。丸2日を要し完成。
はたして結果はいかに? 鉱石での受信の前に、ミノムシクリップでダイオード(1N270)を接続し、受信感度の確認および同調を取っておくことにします。窓際に置いてステレオイヤフォンで聴いてみると、NHK仙台第一放送が十分すぎる音量で聞こえてきました。第二放送もメリット5。直径が同じリッツ線を巻いたコイルと遜色なく、むしろ今回の方が低音良好で野太い音質。この無芯コイル、Qの高さはなかなかのものです。
そして本命の鉱石検波。方鉛鉱をちょうど良い大きさに割り、検波器にセット。針を突くと、すぐに人の音声らじきものが聞こえてきました。何度か突いていると、突然、大音量に。1N270には及びませんがかなりな音量で、かつ前回の実験時と違って、すぐに聞こえなくなるということもなく、安定した受信状態が続きます。石の固定のみでなく、スプリング針の微妙な接触、圧力加減がポイントのようです。黄鉄鉱でも試してみたところ、こちらも実験時より格段に検波しやすくなりました。ベランダに出て、手持ちで動き回ってみても、受信できなくなるということもなく、受信感度、安定度とも、十分な感触が得られました。ただし、日中その状態でも夜に聞いたら、同じように受信できるわけではありません。針の微妙な動きに伴うコンデンサーの変化や熱や光による抵抗値の変化が影響しているのだろうと思われます。なので、受信を始める時は、必ず「探る」という作業が必要となり、ここに操作のし甲斐と面白さもあるわけです。また、コイルの中に手を差し込むと感度がアップするということを経験しました。原因は不明ですが、あちこちにコンデンサー成分が潜んでいるのかもしれません(感度アップのみで同調は変わらない)。
鉱石ジャストフィット
動き回っても良く聞こえる
鉱石検波で外部アンテナ、アースなしの単体受信、そしてステレオイヤフォンで聴ける、という課題は一応クリアできました。無芯コイルの手ごたえを感じされたのも収穫でした。より高感度にするために、回路を見直してみるとか、検波針をタングステン製や他の材質にしてみるとか、ループコイルを追加し磁界誘導を図るとか、まだまだ工夫の余地はありそうです。
なんにしても、このラジオで、まだお目にかかったこともない世界中の各種鉱石を、検波してみたいものです。
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