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接合型鉱石検波 (2015/10/6 17:53:14)
入手したいくつかの鉱石標本を使って、検波実験をしてみました。オシロなど測定器がなく整流作用の視覚化はできません。なので、ゲルマラジオ実験ボードにつないで放送の受信を試み、聞こえたかどうかのみの実験となります。
はじめに金属針による検波。金属針は、ボールペンのスプリング(ステンレス?)、スズメッキ線、銅線、タングステン線の4種類を使いました。定番のタングステン線に期待したのですが、材質による違いはほとんど感じられないとの印象でした。シャープペンシルの芯も試してみたところ、若干の音量低下がみられました。材質よりも圧力のかけ方、というか、ほとんど圧力をかけないでそっと置く、といのがコツのようです。
シャープペンシル芯
受信できた鉱石は、音量が大きかった順に次の通りです。
紅亜鉛鉱>方鉛鉱>黄鉄鉱>白鉄鉱>磁鉄鉱>自然銅>カーボランダム
紅亜鉛鉱(ジンサイト)による検波は最も良好で、感度、安定度とも群を抜いています。カーボランダムは1V程バイアスをかけると良好に検波します。バイアスなしでは検波ポイントを探るのにかなり難儀しました。白鉄鉱、磁鉄鉱も難儀しましたが受信できました。導体である自然銅も受信できるポイントが何か所か見つかりました。一方、期待した黄銅鉱、班銅鉱はカサカサ音が聞こえるものの、受信には至らず、でした。
カーボランダム(人工結晶) これも半導体
続いて本命、金属針の代わりに紅亜鉛鉱を使った接合型検波の実験。実験の仕方は、外付け検波器を使ったり、標本の上に紅亜鉛鉱を置き、ミノムシクリップと金属針で挟み、放送が聞こえるかどうか試してみました。二つの鉱石は、ある程度圧力をかけて接触させた方が良好な印象でした。結果は、次の通り。
黄銅鉱>班銅鉱>方鉛鉱>黄鉄鉱>白鉄鉱
金属針で受信に至らなかった黄銅鉱、班銅鉱ですが、今度は、まるで別の物体に変わったかのうな変身ぶりで聞こえてきました。しかも、大音量かつ超安定。検波ポイントを探す必要もないほど。方鉛鉱も金属針では、慎重にポイントを探る必要がありますが、紅亜鉛鉱による検波では安定度が増し、音量の増加もみられました。黄鉄鉱、白鉄鉱についても同様です。ただ、接合型は相手の鉱石は限られるようです。たとえば、単体では最も良好に検波するシリコン結晶との組み合わせでは、まったく受信できませんでした。そのほかもいくつか試してみたものの、上記の5鉱石以外は受信ならず、でした。半導体の性質を増加させたり、消滅させたり、不思議な現象ではあります。
黄銅鉱
班銅鉱の上に紅亜鉛鉱を乗せ検波
白鉄鉱
方鉛鉱
金属針にしても紅亜鉛鉱による接合検波にしても、ポイントを探りあてた時の音質の良さには驚かされます。いつまでも聴いていたくなるクリアかつ重厚で落ち着いた音。雑味なし。鉱石によって微妙に変わりますが、ダイオードには真似のできない音質で、特に接合型検波の黄銅鉱や班銅鉱との組み合わせは素晴らしいものがあります。
1900年代初頭、鉱石ラジオ全盛時代には、多くの先人たちが鉱石検波に没頭し、さまざまな鉱石が試され、研究、検証されたのだろうと想像できます。その後、ゲルマニウムダイオードに、さらに新たなデバイスへと雪崩を打って収斂されていくわけですが、その中で、置き去りにされ、忘れ去られてしまった技術や知見もあるのではないか。鉱石検波の澄み切った音を聴いていると、ふとそんな気がしてきます。
簡易的接合検波
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