ホーム >> 無線ブログ集 >> 「社会貢献活動・体験機会拡大」改正案パブコメの読み解き

無線ブログ集

  メイン  |  簡易ヘッドライン  

link 7K1BIB/AC1AMの業務日誌 7K1BIB/AC1AMの業務日誌 (2024/11/22 12:36:09)

feed 「社会貢献活動・体験機会拡大」改正案パブコメの読み解き (2020/10/17 18:23:52)

2020年10月15日(木)、以下の改正案がパプコメにかかりました。

電波法施行規則の一部を改正する省令案等に係る意見募集-アマチュア無線の社会貢献活動での活用、小中学生のアマチュア無線の体験機会の拡大-

この改正案を巡り、ネット上で議論が「沸騰」しています。建設的な指摘もありますが、誤解に基づくと思われるものもあるように見えます。

私なりに読み解いてみます。最初に、私は「条件付き賛成」の立場です。

改正案の内容

① アマチュア無線の社会貢献活動での活用
② 小中学生のアマチュア無線の体験機会を拡大

の2本立て。両者は別物です。混同してはなりません。

「社会貢献を無資格で出来るようにするなんてけしからん!」
→ちがいます。①の社会貢献活動は、あくまで従免と局免を受けた有資格者が行うものです。

「①アマチュア無線の社会貢献活動での活用」を認める目的

概要説明パワポ (別添1) によれば、改正の目的は、

「アマチュア無線の積極的な活用や地位向上を図り、地域社会に貢献する。」

とされています。

「アマチュア無線を使って社会貢献をしたい人に、途を開く」ための改正です。決して、アマチュア全員に社会貢献を義務づけるものではありません。

日頃から行っている「専ら個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究」を生かして社会貢献をしたいと思っている、ボランティア精神のあるアマチュア無線家が、現にたくさんいらっしゃいます。そういう活動は、必ずや、これに接するまわりの方々のアマチュア無線への理解を深め、アマチュア界全体の「地位向上」につながると私は確信します。私は、そういう方々を、無線仲間として尊敬申し上げますし、できる範囲で、私もその輪に入りたいと思っています。

また、アマチュア無線家は、無線制度・無線技術に関する知識を生かした貢献が可能です。「無線機はケータイと違って、同時にみんなに伝達できるんですよ」「その距離なら特小で届きますね」「デジ簡?きちんと登録してますか?」「その距離だと届かないから、友達のアマチュア無線家呼んでくるから、その部分はアマチュア無線でつなぎましょう」「PTTちゃんと押してます?」「最後に『どうぞ』って言ってね」「雑音が多い?窓際に寄ってみて。」「無線機を高く持ち上げると聞こえやすいですよ」・・・。無線家なら何となく「当たり前」と思っていることも、世の中誰もが知っているものではないのです。

無線通信に関する知識経験で社会貢献できること。それは、料理や手芸ができる人がバザーに出品すること、音楽ができる人が市民祭りで演奏することと同じように、尊いことだと私は思います。その意味で、今回の改正は、「アマチュア無線 による地域社会への貢献の背中を押す」ものと言えるでしょう(ただし繰り返しになりますが、あくまで義務ではありません。)。

「社会貢献はデジ簡・特小でやるべき」「業務無線でやるべき」「秘話のないアマチュアは役に立たない」
→おっしゃるとおり、社会貢献はデジ簡や特小でもできる範囲もあります。その点は否定しません。どうしても秘話が必要なときは、デジ簡を使えばいいのです。ですがそのことが、「アマチュア無線を使って社会貢献をしたい」という無線家の意欲を否定する理由になるのでしょうか。組み合わせの中にアマチュア無線を入れられる可能性を開くことが、そんなに強く否定されるべきことでしょうか(認めることによる弊害の除去については後で述べます。)。

「そんなのはアマチュア業務ではない」「アマチュア業務を変質させるものだ」
→「金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務」という部分は、1ミリも変更されません。したがって、「従来から存在するアマチュア業務」は、一切「変質」しません。
他方で、新しい業務が加わるのは事実です(具体的な範囲は次の項で検討します。)。「そんなのは[今までの]アマチュア業務ではない」→その通りです。新しいことに抵抗感や不安感をお持ちになるのは理解できます。ただ、社会貢献活動は義務ではありません。新しいことに関わりたくない方は、今までどおりアマチュア無線をお楽しみいただければよいのです。他方で、「アマチュアは進歩的であること」という アマチュアコード に心打たれて、社会貢献という新しいことにアマチュア無線を活用したい方もたくさんいらっしゃるのです。

「①アマチュア無線の社会貢献活動での活用」を認める具体的範囲

別添1( https://www.soumu.go.jp/main_content/000712092.pdf )の3枚目

このポンチ絵だけ見て脊髄反射されている方が多いように思いますが、条文案をきちんと読みましょう。 別添3 です。以下、読み解きます。

金銭上の利益のためでなく 、もっぱら個人的な無線技術の興味によって行う、

1号 NPO法に定める特定非営利活動その他の社会貢献活動のために行う業務
2号 ①国・(地方)公共団体が実施する事業活動(含:これへの協力)であって
   ②地域における活動又は当該活動を支援するために行うものであり、かつ、
   ③ 金銭上の利益を目的とする活動以外の活動 のために行う業務

まず、「 金銭上の利益のためでなく 」=「カネの絡む活動はダメだよ」という要件が、 全体にかかっている ことを忘れてはなりません。なので、

「ダントラ配車運用を追認するなんてけしからん!」
→ちがいます。工事現場のダンプ、トラックの配車は、明らかに「金銭上の利益のため」です。今後も、アマチュア無線を使って絶対ダメです。

「ダントラの無免許運用を追認するなんてけしからん!」「狩猟ハンターの無免許運用を追認するなんてけしからん!」「○○の無免許運用を・・・」
→ちがいます。アマチュア無線の免許を持っていることが前提です。免許なしにこれらの運用を認める訳ではありません。

アマチュア無線の使用が認められる活動の中核は、「国・公共団体の実施する地域活動」と「NPO法人による活動」です。事業主体が限定されており、アマチュア無線を利用すべき場面かどうかを、当該事業主体が適切に判断することが想定されていると理解されます。

「『その他の社会貢献活動』の部分の事業主体はNPO法人に限らないじゃないか!」
→おっしゃるとおりですが、NPO法人と同等のきちんとした事業主体による活動が想定されていると私は読みました(「その他の」という文言は、「その他」とは異なり、前者が後者に包摂されていることを意味するからです。)。この部分にさらに何らかの限定が必要か、パブコメ意見提出までに少し考えてみます。

加えて、2号では、「 ③金銭上の利益を目的とする活動以外 の活動のために」という制限がかかります。マラソン大会で「1位の選手が通過しました」といった連絡や、お祭りでの人誘導係の連絡には使えますが、お祭りに出店している焼きそば屋の在庫連絡には使えません。地域の清掃活動、観光案内、消防団、有害鳥害対策も、交通費等の実費だけならともかく、報酬が支払われていれば、やはりアマチュア無線は使えません。

(なお、第1項の社会貢献活動も、営利性のない部分とある部分で構成される可能性があり、そうであれば、「③金銭上の利益を目的とする活動以外の活動のために」という制限は、第1項にも掛けた方がよいような気がしています。パブコメ意見提出までに考えます。)

こうしてみていくと、今回の「社会貢献活動」は、それほど広範なものが想定されている訳ではないことがわかります。しかも「社会貢献活動のためのアマチュア業務」と「従来のアマチュア業務」の間に優劣は設定されていません。「バンド内がボランティアで埋め尽くされる」「従来のアマチュア業務が排除される」という心配は、杞憂でしょう。

広範でなくても、「観光ガイドボランティアが、おすすめのレストランを地元のローカル局に尋ね、教えてもらたお店をガイドしている人に教えてあげること」は、完全に適法になります。「え?それトランシーバーですか?」「ええ、アマチュア無線なんですよ」・・・素敵じゃないですか?

違法局対策

違法局の存在は、私も大変不愉快に思っています。この記事を書いている土曜日も、430MHz帯は、コールサインを言わない局で埋め尽くされています。ですが、

「社会貢献活動なんか認めたら、VUバンドにはびこるダントラ違法局と区別がつかなくなる」
→いやいや、運用形態だいぶ違いますよね?区別がつかなくなる、ということはないと思います。

「ダントラ違法局の口実に使われる→『 オレたちは公共事業という社会貢献のためにやってるんだ、ゴチャゴチャ言うな 』」
→これは確かに困ります。法の無知は、広報により正さなければなりません。パブコメで、がいだんす局と規制局の充実・運用体制の拡充を要求しましょう。今後は「ボランティア」という大義名分がありますから、総務省に、今までよりも熱心な対策を要求して良いでしょう。
また、ちょうど今回の改正は、国、地方公共団体、NPOが絡んでいます。そこで、総務省から各省庁・地方公共団体・NPOに対し、「社会貢献活動のためのアマチュア無線の利用が限定的に認められることになったが、決してダントラ違法局を認めた訳ではない。」と通達を出してもらえないでしょうか。そうすれば、アマチュア無線の周知になると同時に、ダントラ違法局は違法であることも同時に周知されます。

なお、ひとことでダントラ違法局といっても、いくつかの種類に分けられそうです。

①従免も局免も持っていない。または、従免はあるが局免はない。
→話になりません。徹底的に排除すべきです。

②実は局免を持っているが、配車連絡に使っている。
→配車連絡は(改正が施行されたとしても)アマチュア業務ではありません。これも排除されるべきです。

③局免があり、配車には使っておらず、雑談にだけ使っている。
→「アマチュア無線が設置されているタクシー」と変わりません。むかし憧れた方も多いのではないでしょうか。この限度なら、違法とは言えません。ただし、コールサインを言わない、一つの周波数を独占している、といった運用をしていれば、問題です。また、つい②をしてしまいかねないという危険もあります。

これらを排除するために、デューラスで方向探知してひとりひとりとっ捕まえていては間に合わないくらい、違法局は増えてしまったという残念な現実があります。ですが、先にも述べたとおり、ちょうど今回の改正は、国、地方公共団体、NPOが絡んでいます。これらの主体は、公共事業の発注側に立つこともあります。そこで、総務省におかれては、免許を持たない運用は違法であることを周知するだけでなく、一方踏み込んで、入札要綱に「車両へのアマチュア無線機の設置を禁止する。」という一文を入れることが違法局排除に有効であると、通達に盛り込んでいただけないものでしょうか。

もちろん、民間側、つまりJARLやJARDも、今回の改正が違法局を認めるものではないことを周知しなければなりません。国に要請することも必要ですが、がいだんす局のさらなる積極的な運用(リモート運用の開発等)、アマチュア無線の業務利用は違法である一方でZelloのような法的に何の問題もなく混信もないアプリがあることの周知等、民側の自助努力としても、まだまだできることはあるのではないでしょうか。

「② 小中学生のアマチュア無線の体験機会を拡大」を認める目的

概要説明パワポ (別添1) によれば、改正の目的は、

「無資格の小中学生が身近なくらしの中で電波の利活用の可能性や楽しさを体験できるようにし、ワイヤレスIoT人材の育成に資する。」

とされています。

今年4月に認められた「体験局」の拡充です。ワイヤレスIoT人材の育成という共通の目的が掲げられています。

ポンチ絵を見ているだけでワクワクしてきます。特に、学校での体験運用が認められるのは革命的ではないでしょうか。理科の授業で、アマチュア無線部の仮入部で、学園祭で、こどもたちに「じゃあ、試しにちょっとしゃべってみようか?」と言えるんですよ。「無線技術に対する理解と関心」を深め「IoT人材の育成」に資する教材として、学校アマチュア局を設置・復活してくれるように、みんなで母校に働きかけることもできそうです。

アマチュア無線コミュニティとその外

アマチュア無線コミュニティは、いままで、あまりにも自分たちの殻に閉じこもっていたのではないでしょうか。JARL会長肝入りの「WAKAMONO」イベントは無線家がお子さん、お孫さんと遊んでもらうイベントですし、JARLが隣接趣味のイベント(Maker Faireや秋コレ、コミケ等々)に出展するという話も聞きません。私自身も、最近までは、趣味はアマチュア無線であると公言していませんでした。

しかし、今回の改正案にしても、4月に認められた体験局にしても、大げさに言えば、「 我々アマチュア無線コミュニティが、そのサークルの外とどのように関わっていくのか 」を問いかけて来ているように感じられてなりません。問われているのは、我々なのです。

今回公表された資料( 別添1 の5頁)に、衝撃的な表が載っています。

小中学生のハムは、全国で3000人強しかいないというのです。このままでは、この子たちが大人になったときには、そもそも「アマチュア無線」いや「無線通信」なるものを知る人がほとんどいない状況になってしまうのではないでしょうか。

私たちアマチュア無線家(の一部)が、恥ずかしがらずに「アマチュア無線コミュニティ」の外に一歩踏み出して、「アマチュア無線」「無線通信」なるものがあることを知ってもらい、できれば少し体験してもらう。アマチュア無線家はそんなに増えないかも知れませんが、得意分野を生かした社会貢献活動ができ、市民全体の無線技術に対する理解と関心を深めることにも貢献できるようになる。そういうきっかけを生む制度改正が、そんなに悪いことでしょうか。

(2020-10-17 記)


execution time : 0.028 sec
サイト内検索

メインメニュー

ログイン
ユーザ名:

パスワード:



パスワード紛失


オンライン状況
153 人のユーザが現在オンラインです。 (50 人のユーザが 無線ブログ集 を参照しています。)

登録ユーザ: 0
ゲスト: 153

もっと...