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IC-705 亀井堂総本店 瓦煎餅缶 アンテナ・チューナー (2020/10/22 11:27:00)
製作の動機
で貰ったオマケ。
蓋に
IC-705 がプリントされた 亀井堂総本店 の煎餅缶。
何か有効な利用法が無いかなと思案し、最初は小物入れに使う位しか思いつかなかったけど。
せっかくHFにも出れる 705
だから、適当なワイヤーアンテナで送信できるようにアンテナ・チューナーを組み込もうと目論む。
構想
ミズホ QRP カップラー版
昔にハムフェアで買っていた、
ミズホの QRPカップラー
用の 空芯 コイル LA-1 が手元にあったので、
これでミズホ・コピーのアンテナ・チューナーを作ろうとした。
このミズホの QRPカップラー に採用されている
π-c型という形式、
米国
DRAKE 社 MN-4
で採用されて広まったようです。
八重洲などの国内メーカーのアンテナ・チューナーにも使われていました。
MN-4 等では BAND
毎に固定だった送信機側の頭のキャパシタを、
ミズホ
QRPカップラー ではバリコンにしています。(一番左のつまみ)
3つのキャパシタ全部を可変にしているので MN-4 より整合範囲は広くできそうです。
は、 おそらくミズホのQRPカップラーと同じ回路でしょう。
しかし!!
コイルのタップ切替以外に、バリコン3つの調整が必要なのも面倒臭そうだし。
なによりも、内部高さが約 30 mm と低く、
LA-1コイルが瓦煎餅缶に収まらず、蓋が出来ないのに気が付いた!
煎餅缶を使えないと意味が無い。今回は
Z-match 版
簡単で使いやすいアンテナ・チューナーの回路がないか調べていたら。
コイルの途中から出したタップと2連バリコンでつくられる2つの
共振点を利用した Z-match
という巧妙なトポロジーを見つけた。
Frank, G3YCC さんがモディファイ したバージョンや。
コイルの切替無しに可変キャパシタ2個の調整で HF帯全域の整合が取れるという、
小さく作れて使いやすそうな回路。
しかし、逆にキャパシタ2個だけの可変でHF帯全域をカバーするというのは、
調整がクリティカル過ぎるようにも思うし。
損失が多いという評価もあるので、
今回はパス。
興味はあるので、一度は実際に作って評価してみたい。
T-match 版 (採用)
いろいろ調べて結局。
部品が少なくて損失が少なそうな、
一般的な π-match か T-match
が良さそう。
LPF になる π-match では高調波がカットされるのに対して、
HPF の T-match
では高調波がスルーされてしまうのですが。
- EFW アンテナのように高いインピーダンスにも T-match ならなんとか整合できる?
- 技適取得済の IC-705 では高調波は問題にならないだろう。
という事で、
単連バリコン2個とコイル1個で作れる T-match 回路を採用する事に。
煎餅缶が金属なので、
「コイルは磁束漏れの少ないトロイダルコアを使うしかないなあ 」とか、
「トロイダルコイルの固定は?直接、ロータリースイッチに半田付けすればいいか。」
などと考えながら調べていたら。
David Cripe, NM0S さん
というのを見つけた。
LED 2個の SWR
インジケータ―回路は、かなり使い勝手が良さそうだが。
IC-705 には SWR
メーター機能が内蔵されているので、
T-match 整合回路の部分のみ参考にさせて頂く。
製作
回路
基本的に、 4S-Tuner/Antenna Coupler から SWR インジケーター回路を省略。
ただし、コイルの未使用タップを何処にも接続しないと、
高電圧が発生してアーク放電が起きるかもしれない。
未使用タップの端を、接地にショートする為コイルの向きを逆さまにしました。
(未使用タップをショートするとコイルの Q が下がるという報告もあるのだけど)
部品
- ポリバリコン 260 pF 2個
2020年10月現在まだ購入可能
- トロイダルコア T-106-2 1個 :
- 12接点ローターリーSW 1個 :
- BNCコネクタ 2 個 :
- つまみ :
ポリバリコンの注意点
私の入手したポリバリコンは回る羽根のローターが、つまみ軸と導通していました。
T-match 回路では、ポリバリコンの両端の端子が接地からフローティングしています。
特に真ん中のコイルとポリバリコンの接続点は、インピーダンスが非常に高くなります。
この高インピーダンス点をポリバリコンのローター側にした場合、
つまみを回そうとして手を近づけると不安定になって SWR がふら付きます。
ローター側を送信機出力/アンテナ端子に接続した場合は、
コイル側ほどは高インピーダンスにならないので、
実用上は大丈夫のよう。
必ず、
テスター等でポリバリコンのつまみ軸と端子が接続されているローター側端子を確認して、
コイルと反対側のBNCジャック側と接続してください。
そういう意味では、π-match 回路ならローター側を確実に接地できるので安心だったかも。
ケースの加工
こんな感じにドリルで穴開け。
φ 9.5 はリーマーを併用。
しかし、煎餅缶の金属板が柔らくて薄いので、意外に苦労。
組み立て、配線
トロイダルコアをロータリーSWの背中に載せて、
SWの端子の穴を利用しながら電線を巻いていき。
巻き終わったらSW端子と半田付けしておく。
穴あけが済んだら、
- 各々の部品をねじ止めして
- 各部品の間をショートしないように注意して空中配線
- 最後につまみをねじ止め
で、完成
使用感
ベランダに100円ショップ針金で作った、21 MHz 1/4 波長に共振する様に長さを調整したアンテナを設置しています。
大昔にヤフオクで安く入手した ヤエス FC-757AT
DRAKE π-c 型で、コイルのタップ切替とエア・バリコンをCPU制御の DC
モーターで回転させるという
原始的なオート・アンテナ・チューナー。
FC-757AT では、21
MHz 用なので 7 MHz には長さが足りないアンテナを
無理やり整合させようとしても、
SWR 3
付近までしか落ちず整合不可能だったのですが。
この T-match 煎餅缶チューナーなら、SWR 1.0
まで追い込む事ができました。
さらに、千石電商で買ってきた BNC ロッドアンテナ(50 MHzには長さが足りず
SWRが下がらない)で、なんと50 MHz でも SWR 1.0 に持っていく事ができました。
- 整合可能範囲はかなり広いようです。
- 10 W 連続送信後に、コイルやポリバリコンを触ってみても、殆ど温度上昇が感じられないので、損失も少なそう。
- 対称的な回路なので。送信機、アンテナをどちらのジャックに接続しても使えます。
- ポリバリコンの耐電圧が不明なので。整合がとれるまでの調整時は、送信機の出力を絞っておいた方が安心。
- 挿入損失を少なくする為、整合がとれて一番インダクタンスが少なくなるコイルのタップを選ぶと良いでしょう。
- コイルのタップを切り替えるときは、念のため送信しないでください。
ただ、煎餅缶ではバリコンのつまみの径に限界があり、
もう少し大きな径のつまみにした方が調整しやすいですね。
煎餅缶を諦めて、普通のケースに組み込む方が良かったかも :-)
参考
アンテナ・チューナーに関して、すごく良く纏まっているサイト
トロイダルコアの計算に便利なサイト。インダクタンスだけじゃなく必要線材の長さも
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