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「新スプリアス規格への移行期限の延長」省令改正案の読み解き (2021/4/3 13:02:51)
2021年3月26日に、パブコメが始まりました。
無線設備規則の一部を改正する省令の一部改正等に係る意見募集
-新スプリアス規格への移行期限の延長-
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban12_02000124.html
経過措置の期限を「令和4年11月30日」から「当分の間」とするという改正案です。
何が「延長」されたの?
お手元の局免をご覧ください。備考欄に、以下の記載はありますでしょうか?
無線設備規則の一部を改正する省令(平成17年総務省令第119号)による改正後の無線設備規則第7条の基準(新スプリアス基準)に合致することの確認がとれていない無線設備の使用は、平成34年11月30日までに限る。
局免にこの記載がある局には、旧スプリアス機が含まれているはずです。その旧スプリアス機の使用期限は、2022年11月30日までしたが、これが「当分の間」に延長されるというのが、今回の改正です。
局免にこの記載が無い局には、今回の改正は関係ありません・・
なお、 新スプリアス規制が完全になくなるわけではありません。
また、
新スプリアス規格を満たさない古いリグで開局したり、増設したりすることができるようになるわけでもありません(その猶予措置は、2017年11月30日に終わっています)。
より詳しく
アマチュア無線家からみた、スプリアスに関する現時点の規制は(おおむね)以下のとおりです。
①新スプ規格に合致する技適無線機 |
新規開局・増設OK(JARD/TSSの保証不要) 使用期限なし | |
②旧スプ規格時代の機種だが、実は新スプ規格を満たす無線機 (= JARDの「保証可能機器リスト」掲載機種 や、測定の結果、新スプ規格を満たすことを示せた無線機) |
JARD/TSSの保証を受ければ、新規開局・増設OK 使用期限なし | |
③新スプ規格を満たさない無線機 | 新規開局・増設はもうダメ すでに免許を受けている無線機は2022年11月30日まで |
今回の改正案は、③の 赤字の部分 のみに関わるものです。つまり、平成29(2017)年11月30日までは、旧スプリアス規格の無線機も一定の場合は免許を受けることが可能でしたが、その使用期限は2022年11月30日まででした(この期限を解除するのが、 JARDの「スプリアス確認保証」 です。)。 その期限が、「当分の間」に延期されます。
言い方を変えると、 平成29(2017)年11月30日までに免許を受けた旧スプリアス機は、JARDの「スプリアス確認保証」を受ける必要がありましたが、今回の改正が通れば、「当分の間」は、スプリアス確認保証を受けずに使って良いことになる、ということです。
このように、 正直言って、アマチュア無線に関して言えば、対象範囲は、そんなに広くありません。
なお、 旧スプリアス規格の特定小電力無線(特小)や市民ラジオ機については、2022年11月30日までだった寿命が、「当分の間」に延びました。これは大きいと思います。
「当分の間」っていつまで?
明確には示されていませんが、手がかりはあります。今回の改正案の趣旨を、総務省は以下のように説明しています。
(引用ここから)
これまでに、国内の約276万局(携帯電話等包括免許を除く。)のうち、約210万局(約8割)は新スプリアス規格への移行が行われているところですが、
新型コロナウイルス感染症による社会経済への影響等
により、新スプリアス規格への移行に遅れが生じることが想定されます。
引き続き、新スプリアス規格への移行を継続し、各免許人等へ働きかけを行う一方、
このような社会経済情勢に鑑み 令和4年11月30日とする経過措置を当分の間に改めることとし、・・・
(引用ここまで)
新型コロナ禍の影響を最も受けているのは、医療現場ではないでしょうか。医療現場では、旧スプリアス機がまだ多く使われているのかもしれません。また、旧スプリアス規格のETC機や特小トランシーバーの置き換えが進んでいないという話も、ときどき目にします。これらに対応するための改正であって、アマチュア無線を主眼とするものではないように思われます。もちろん、JARLの要望に対応したものではないでしょう。
新型コロナ禍が理由として挙げられていますので、理屈としては、新型コロナの「社会経済への影響」が解消されれば、元に戻す=新たに期限を設定する、ということになりそうです。イメージとしては、日本社会が新型コロナ禍を克服し、無線機の生産サイドもユーザーサイドも元の生活に戻り(あるいはNew Normalに対応し)、 「さあ、遅れていた新スプリアス対策でもやるか・・」と思えるようになったら、その数年?後があらたに使用期限として設定される、 というところでしょうか。
とはいえ、よく見ると、新型コロナウイルス感染症による社会経済への影響「等」と、役所お得意の「 等 」が入っています。コロナとは別の要素を考慮して、新たな使用期限はなかなか設定されないかもしれません。ひょっとしたら永遠に復活しないかもしれませんし、意外とすぐに復活するかもしれません。
どんな風に使っても良いの?
「 他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限り 」という条件が付されます。局免の注意書きも、
無線設備規則の一部を改正する省令(平成17年総務省令第119号)による改正後の無線設備規則第7条の基準(新スプリアス基準)に合致することの確認がとれていない無線設備 については、令和4年12月1日以降、他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限り、使用することができる。
という注記に変わる(読み替えられる)ことになるようです。
まあ、アマチュア無線の場合、混信は付きものです。意図的な妨害はもちろんダメですが、常識的な使用であれば、アマチュアバンド外にスプリアスをまき散らさない限りOKといえるのではないでしょうか。
パプコメ意見
今回の改正案それ自体には、反対する理由はないと思います。
「当分の間ではなく永遠に旧スプ機を使えるようにしてほしい」とか、「旧スプ機による新規開設・増設もできるようにしてくれ」と、さらに踏み込んで「そもそもアマチュア無線には新スプリアス規格は適用しないでくれ」という意見を出すには、それ相当の理由を付ける必要があると思います。よく考えます。
(2021-04-03 記)