無線ブログ集
メイン | 簡易ヘッドライン |
了解度の高いAMの音(変調/受信)とは (2021/5/17 21:04:46)
■Esシーズン突入
また更新に間が空いてしまいました。最近は新たな事にのめり込み始めてますが、「無線実験もゼロでは無いよ」ということで更新します。
さて、今年もGW前半から本格的なEsシーズンに入りました。その恩恵を受けているかどうかは別として、直接波QSOはもちろん、Es-QSOでは少しでも確実に繋がる様にしたいものです。
繋がる為には、まず受信が出来なければいけません。そして聞こえたからには届かなければなりません。どういう音であれば聞きやすく、届きやすくなるのか?を考えてみたいと思います。
■人の声の聞きやすさ
無線で言うと、ノイズの中から人の声を聞き分ける必要があります。ノイズと人の声の差が大きければ聞きやすくなりますが、その比率の事をSN比と言います。そのS/Nがどのくらいあれば聞き取れるのか?を示したわかりやすいグラフがこちら。
*「聞こえのぶろぐ」より引用 (元となっている、もっと詳細な論文はすぐに見つかると思います)
個人差があったり、無線受信音に当て込むのも正確では無い所もありますが、概ね同傾向かと思います。グラフセンターの0dB、即ち「人の声の大きさ=ノイズの大きさ」であば、90%程度は聞き取れるということになります。
了解度を上げるためには、まず人の声とノイズの分離度を大きくする必要があるという当たり前の結果になります。
そこでやるのが、LPFやDSPノイズリダクションです。
LPFは、ノイズレベルが高くなりかつ人の耳の特性(ラウドネス特性)で感度の高い周波数のレベルを下げる事で、聞きやすくする事が出来ます。
ただやり過ぎてしまうと、人の声の倍音成分のレベルも一律に下げてしまうゆえに、極端に了解度が向上すると言うわけでもありません。
ではどの程度までか?ですが、概ねfcは2kHzまでがいいところでは?と思います。
ある論文では、2~5倍音、3~6倍音、2~6倍音とそれぞれで構成された複合音の知覚実験をした結果、2~5倍音で構成された音が一番知覚度が高く、逆に3~6倍音が悪くなっていたとの事でした。
これをわかりやすく変調の方で言えば、「カリカリ変調は聞き取りにくい( =MC20とかは不利 )」ということです。
また、変調度を低くしてしまうと、変調回路のf特も相まって、より聞き取り辛くなるとも言えます。いわゆるキレイな変調は弱くなると聞きづらいのはコレもあるかと考えてます。
難しいですが、基本波主体の太い変調も☓、低音がなさすぎても☓ということになります。
*NCB-8では、2~5倍音付近がほぼフラットになるようになっています
一方、ノイズリダクション。こちらはDSP様様の技術で、かなり活用しています。特にFIRLMSでは、ホワイトノイズを低減する効果があり、受信音のベースにある位相がランダムに変化するノイズ成分だけを削除するので、結果的にノイズから人の声が浮いてくる様になります。
ただ、このノイズリダクション、効きを強くしていくと確かにノイズが下がっていきますが、了解度がめちゃくちゃ上がるものでも無く、更には「水が流れる様な音」がし始めます。理由は良くわかりませんが、群遅延特性で倍音部分の位相がずれてしまうからであり、了解度が上がりきらない理由なのかな?と考えてます。
■まとめ
送信/受信とまぜこぜで散らかってしまいましたが。。。一旦まとめたいと思います。(他にも測定実験データがあるので、それはそのうち)
結局の所、人の声を聞き取りやすくするためには、倍音部分のコントロールが非常に重要であることがだいぶ分かってきました。
特にAMは信号強度が落ちてくると極端に聞き取り辛くなります。送信・受信ともにS/Nを良くするためには攻めどころを絞り込む必要があるようです。
■おまけ
AM用のアナログフィルタであれば、「電解コンデンサ(+抵抗を直列)+コイルの並列共振型パッシブフィルタ」が手軽に作れ、ぼちぼちの効果があります。LCの並列共振回路ですので、共振周波数前後の周波数が減衰するフィルタです。どぎつい特性とはかけ離れていますが、逆に自然な感じであり、私はこれをモービルの外部SPに内蔵して使っています。
共振周波数をまずは1kHz程度になるように作ります。後は受信スピーカーに並列に接続すればOKです。
使うスピーカーの周波数特性によって共振周波数を聞きやすい状態となるように多少調整すればOKです。
コア(コイル)は0.5mH程度、抵抗は4.7~10Ω程度、コンデンサは47μF程度の無極性オーディオタイプがオススメです。
ただし、D級アンプ等の出力に接続すると、L負荷駆動になりアンプが上手く動作しないものがあるかもしれません。