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feed 21MHz帯ベランダ・ワイヤー・アンテナに7MHz帯延長エレメント追加してみた (2021/5/23 12:00:00)

製作の動機

庭付き一戸建てのような恵まれた条件とは違って。
集合住宅住まいでは、まともなHF(短波帯)アンテナを上げられないと、長年諦めていた HF 帯だが。
IC-705 を入手して、どうしてもHFに出てみたくなった。

ベランダに21MHz帯(波長 15 m)に共振させた、1/4波長の針金アンテナを設置してみたところ。
集合住宅の地上階という最悪に近いロケーションにも関わらず。
FT8 や WSPR のデジタル・モードなら送信出力5Wで、
東南アジアから豪州などのオセアニアだけでなく、北中米位までは飛んでいく。
秋になって来たら交信は出来ていないけど、夏には入感していなかった東欧の局が受信されるようになってきた。

これに味をしめ。
出ている局数が21MHz帯の何倍も多い7MHz帯にも出られるように、延長エレメントを追加してみた。


21MHz帯版ワイヤー・アンテナ

7MHz帯は波長40mもあって、1/4波長でも10m, 半波長なら 20m もあるのでベランダには到底張れそうにはないから、21MHz帯をターゲットに。

最初、メーカー製の出来合いのHFアンテナも検討するが。
  • ダイポールはグランド不要で魅力的なのだが。長さが1/2波長で7m超になるし、給電線引き出しのセンターを支えるのが面倒そう
  • 両端を支えるだけで良くて、水平に張れそうなツェップ(ライク)なアンテナもあるが。これも1/2波長で長すぎる。
  • その他の固定用のアンテナは、見た目がいかつ過ぎて目立ち過ぎ。近隣からの不審の眼が怖い
  • モービルホイップ流用は短縮がきつ過ぎるので、効率が落ちて飛びがイマイチっぽい
というデメリットも有るし、結構なお値段。

残念ながら地上階なので、釣り竿から長いワイヤー垂らすという普及している方法も採れない。

21MHzの波長は15mなので、1/4波長なら導線の短縮率の考慮なしで約3.6m。
これならば垂直アンテナは無理だとしても、ベランダにL字型風に張れそう。
100円ショップかホームセンターで園芸用の針金買って来て、簡単に作れるだろう。
それに、ただの針金なら目立ちにくくて、近所から怪しまれずに済むか??

ベランダでグランドは取れるか

1/4波長アンテナは接地型アンテナなので、いかに良好なグランドを取れるかが鍵。
まずは、アルミ製のベランダ・フェンス手摺が接地されているかを調査。

100V コンセントのLIVE側(非接地側)とフェンス手摺の間の交流電圧をテスターで測ってみると。
ちょうどAC 100Vあるので接地されていそう。

!!注意!!
100VコンセントのNEUTRAL側(接地側)とフェンス手摺の間を、テスターの抵抗計で測ろうとしないでください。
間違えてコンセントのLIVE側(非接地側)と接触すると、
ブレーカーが落ちてしまったり、
大電流が流れてテスターが壊れるだけじゃなく、
火を噴いて怪我をする可能性もあります
s

給電ボックス

グランドの取れる目途がついたので、手持ちの防水ボックスを加工して、
  • アンテナ線と、グランド線を接続する、ターミナルポスト
  • 無線機からの同軸ケーブルを接続する、M型ジャック
を取り付け。

クランプ金具で手すりに固定して給電部とする。


グランド線

手摺フェンスの固定用ボルトを利用して、給電ボックスのグランド・ターミナルに接続。


二つに分かれている、手摺フェンス同士も接続。



接地されているとはいえ、高周波的にどれだけ良好なグランドになっているか心配もあるので。
念の為に、5m位と10m位の電線もカウンターポイズとしてターミナルに接続して、
ベランダ床に適当に這わせておいた。

アンテナ線

MMANA というアンテナ・シミュレータで、超簡略化した垂直アンテナ
(ベランダという狭い空間では周囲に色んなものがあり過ぎて、精密にシミュレートするのは無理なので、かなりの手抜きの簡単なモデル)
で 21.050MHzで共振する長さを出してみたら。

  • 長さ 3.46 m
  • インピーダンス 36 - 0.5j Ω
という結果。
約 3.5 m ならばベランダに張るには現実的な長さ。

そこで長めの4m弱の針金を、給電ボックスのアンテナ・ターミナルに接続し。
物干しポールを利用して略L字型にアンテナを張る。

少しでも周囲の影響を避ける為に、上階ベランダの下部と自階ベランダ・手摺フェンスの上端の中間位を狙って展開。

アンテナ線の固定は、100円ショップで買ってきた園芸用のビニール?製の絶縁ロープ。
折り曲げ部は写真のように、アンテナ針金線に輪っかを作って固定。

調整

余裕を持って長めにしておいた、アンテナ線の共振周波数を測り。
目的の周波数に近づくようにアンテナ線を徐々に短くしていく。

給電ボックスの M型ジャック に、ワンターン・コイル
を付けて、これにディップ・メータのコイルを結合させて、ダイヤルを回してメータがピクッと下がる共振周波数を探します。

共振周波数の測定には、かなり昔にオークションで入手した。
いまは亡き  DELICA 三田無線
本当に真空管のグリッド・リーク電流でメータを振らせるクラシックでビンテージなグリッド・ディップ・メータを使用。


NanoVNA を入手した今となっては。
共振周波数を目盛りで読み取れるだけだし、
真空管式なので100 V電灯線が必要で、電源入れてから暖まるのを待つ
等のデメリットもあるのですが。

直接物理的に接続不要で、影響少なく非接触で
アンテナ線そのものの共振周波数が測れるし、
共振時の抵抗分が 50 オームからかけ離れていても大丈夫という、
捨てがたいメリットも。

グリッド・ディップ・メータについては、
ラジオ温故知新  のリンクにある、
三田無線の社長だった茨木悟氏が著した 「 グリッドディップ・メーターの使い方 」 に詳しいです。


最初は目標の 21.050 MHz より少し低い周波数になるように、
段々とアンテナ線を切り詰めていき。
後から長さを調整して共振周波数を調整できるように、端を折り曲げて調整ヒゲを残して、
絶縁ロープで引っ張ってアンテナをピンと張ります。

調整の結果、
  • 給電部からの垂直立ち上げ部 約1.1 m強
  • ほぼ水平に斜めに張った 約2.1 m強
  • 端の調整用ヒゲ 約0.3 m弱
の合計約 3.5 m と、シミュレーションより少し長い感じで、
ちょうど目的の周波数に共振してくれました。


7MHz帯用 延長エレメント 追加

最悪なロケーションにも拘らず、単なる針金アンテナで十分に 21 MHz 帯を結構楽しめていたのですが。
局数の多い 7 MHz 帯に出て見たくなり、アンテナ・チューナーで無理やり SWR を落として電波を出してみた。
共振していないアンテナでは、やはり無理があるみたいで全然飛ばない。

そこで、現状の 21 MHz帯1/4波長エレメントに、21 MHz帯への影響をあまり与えずに、
7 MHz 帯にも共振させる追加延長エレメントを考える。

シミュレーション

一番最初に思いつく、21 MHz は阻止して 7 MHz は通過させる21 MHz 並列共振トラップを仕込んで延長する方法を 、MMANA でいろいろ試してみる。

トラップの L が小さいと
  • 7 MHz用の延長部の長さが長くなりすぎてベランダに収まりそうにない。
と分かった。

そこで、トラップの L を大きくしていくと
  • 7 MHz 用の延長エレメントも 2 m 以下で 7 MHz に共振できる。
と分かってきた。
共振周波数が 21 MHz 固定で、L を大きくしているので当然 C が小さくなるのだが、
ほぼ無視できる位に、かなり小さくなってしまっているのに気が付く。

ならばと発想を変えて、トラップではなく
  • 21 MHz には十分大きなインピーダンスをもつコイル
  • 7 MHz には延長部を実用的な長さにする中間ローディング短縮コイル
となる L の大きさを求めることにする。

単純化した垂直アンテナのモデルで 30 uH 位の L ならば、

  • 給電部 ~ 3.77m ワイヤ ~ 短縮コイル 30 uH ~ 1.95 m ワイヤ
VERT15and40_load30uH_Geo.png
で、

  • 21 MHz の電流分布とインピーダンスは


  • 7 MHz の電流分布とインピーダンスは
VERT15and40_load30uH_07MHz_View.png


と、実現できそうなシミュレーション結果が得られた。

延長コイル

問題となるコイルだが、
PET なら耐候性も十分ありそう(だから環境ゴミ問題にもなる位)なので、
飲み終わったコーラのペットボトルを切り出し利用して、
エナメル線を巻き付けて作る。

巻き数は、RF Design Note の  ソレノイド・コイル  設計 ツール
を使って算出。27 回巻きで約 30 uH が得られる計算。

ただし、写真のコイルはいろいろ調整した後に、結局最終的に 23 回巻きの約 23 uH (共に 23 なのは偶然)にしたものです。

調整

既設の 21 MHz 用エレメントの先に、
30 uF コイルを取り付け、
その先に余裕を持って2 m強のワイヤーを付けて、
7 MHz 帯の共振周波数を測ると。
妙に低い 6 MHz 位に共振してしまった。

ワイヤーを切り詰めていって共振を 7 MHz まで持っていくと、
長さが 20 cm 位まで短くなってしまい。
やはり簡易シミュレーションと現実は違うのかと、しばし悩む。

21 MHz の共振周波数を測ってみると、以前と変わらない周波数だったので、
コイルのインダクタンスが大きすぎると判断。

今度は、逆に延長ワイヤーを周辺環境で現実的に張りやすい約 2 m の長さに固定し、
コイルの巻き線を減らしてインダクタンスを小さくしていき、
現物合わせで 7 MHz帯に共振させる方向で調整する。

いろいろ試行錯誤の結果、
  • コイルの巻き数 23 回のインダクタンス約 23 uH
  • 延長ワイヤの長さ約 1.6 m 
というところに落ち着きました。

再度、21 MHz の共振周波数を測ると、まだあまり変化が無かったので、
もっとベランダの大きさに余裕があればインダクタンスを減らして
延長ワイヤを長くできそう。

使用感

IC-705 外部電源使用 10 W出力で、こんな貧弱なベランダ針金アンテナでも、
7 MHz 帯 FT8, WSPR では国内全域はもとより、アジア、豪州に加え北中南米とも交信可能になりました。
まだ応答した事はありませんが、 CW でアメリカ大陸の局もばっちり聴こえています。
また、少し心配していた 21 MHz帯への影響も、全く感じられません。

21 MHz帯は1/4波長フルサイズのため十分に帯域が広く実用的ですが、
7 MHz 帯は中間ローディング・コイルによる約 57% 短縮率となるので、
かなり共振帯域が狭くなります。(それでもモビホよりは緩いですよね)

私の場合は、FT8等のデジタル・モードと CW がメインですので困りませんが、
SSB も含めてアクティブに運用したい場合は、もう少し工夫が必要になるか。
コイルのインダクタンスを少なくして、延長ワイヤーを伸ばせば少し帯域も広がるはず。

このアンテナの共振周波数のインピーダンスを、最近入手した NanoVNA で測ってみました。
当然、共振周波数でのリアクタンス成分は 0 に近いのですが、
シミュレーションの傾向どおり、抵抗成分は 50 Ωよりかなり低くなっていました。

そのため送信機の 50 Ωに整合させる為、結局のところアンテナ・チューナーが必要になってしまいます。
ただ、近年流行している非共振のランダム・ワイヤーにATUの組み合わせとは違って、
アンテナ・ワイヤー自体は共振しているのでワイヤーからの放射効率は良いのでは?
延長エレメント無しの 7 MHz 非共振ワイヤーに、
アンテナ・チューナーを使って無理やり 7 MHz帯で使用した時との差から。
ワイヤー・エレメント自身が共振している重要性を実感しています。

今後の改良

つい最近、やっと CW デビューしました。
夜間になると 7 MHz帯では少なくなる CW 国内局が、3.5 MHz帯は逆に多く出ているのに気が付き、今度は 3.5 MHz 帯にも出たくなってきました。
そこで、3.5 MHz帯用の延長エレメント追加しようかと目論んでいます。

簡単に MMANA でシミュレーションしてみると、7 MHz帯延長エレメントの先に、
300 uH 位のコイルと 80 cm 位の延長エレメントの追加で 3.5/7/21 MHz帯対応が出来そう。
ただ 300 uH となると、手巻き空芯コイルでは厳しそうなので、
フェライト・トロイダルコイルを使うか?などと思案中。

最後に

集合住宅住まいでは厳しいだろうと、漠然と諦めていた HF 帯運用が。
100円ショップで揃うような安価な材料で、
7/21 MHz帯の2バンドで実用になると分かったのは、
かなりの収穫でした。

以前の私のように HF 帯を諦めているアパマン・ハムの方々の参考になれば幸いです。














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