無線ブログ集
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音なの話 (2021/6/10 12:00:00)
■無線の音
今回は、ちょっと無線らしく無い、けどもの凄く無線と切り離せない。しかも余り一般的では無くちと難しい話…、大人な話です。
栃技研設計部音響研究課(笑)には、音に関する研究をしています。学生時代に音響工学を履修していたり、オーディオにハマっていたり、音楽屋さん(演奏)だったり、実は仕事でも音の定量評価をしていたり・・と、そんな”音屋さん"で構成されてます。
今回、なぜ音か?と言うと、無線機の基本性能でありながら、殆ど議論される事の無いので、ちょっと陽を当ててみようと思ったわけです。
▼同じSONYでも770、707、87R、680…皆音が違い、感じ方も違う
■なんちゃらサウンド
アマチュア無線をやっている方は、ほぼ無意識的に(受信音は)ICOM派、ヤエス派…なんてあると思います。これは特にSSBなどで差が大きくなったりしてるかと思います。
これはAGCの時定数が各社こだわりがあったり、筐体とスピーカーの組合せで作られる共振特性も気にされているからです。
また、ラジオなんかもそうです。例えば(関東圏ですみません)FM放送のNACK5。リスナーも多いとは思いますが、NACK5は「NACK sound」と言われるこだわりがあり、パワフルでパンチのある音質で、しかも電界強度が下がってきても聴き取りやすい音を作り込まれています。
▼ラジオ局にもコダワリを持ったエンジニアが居た。単に過変調にならない事だけを管理している訳では無い。
■官能評価
悪意は無いですが、分かりやすくする為にSR-01を例にしてみます。01は「音が小さい」等の話が有りましたが、回路設計の段階ではアンプの出力、スピーカ定格などが考慮され問題が無かったと思います。いわゆる物理量と言われるパラメータです。
ただ、音が「どう伝わるか?」「どう聴こえるか?」「どう感じるか?」と言った部分が抜け落ちてしまったものと思われます。これらはファクターはいわゆる”音質”であり、また心理音響技術などとも言われ今でも活発に研究されている分野でもあります。
01の場合は、使われ勝手やシャーシャーと言った耳障りとなってしまうヒスノイズ等々、音質観点が甘かったと言うのはあると思います。
こういった"人間が感覚的に捉える"部分を定量的に評価する方法は、自動車を始め、家電開発でもかなり古くから積極的に取り入れられています。
▼広く知られている”音解析アプリ”。棒グラフで表示されるものは「1/3オクターブスペクトル」で有ることが多い。これは残念ながら 音質評価には使えない ことがほとんど。
■聴きやすいが価値(勝ち)
QPR+AM変調と言う、現代においてはMとしか思えない市民ラジオの世界。
確かにアンテナ・チューナーやノイズブランカ等、機能名がついているものは華々しく購買意欲を刺激するキーワードでもあります。しかしながら、基本機能である「音」について考え、「聴き取りやすく、疲れない音」というのも、とても大事だと思ってます。これは、これまでの技適機やNCB-8もそうだったりします。
NCB-8はとにかく極普通に使って欲しいので、普通の状態でのストレスを低減するために、AGCの時定数を変更したり、追加したAFフィルタやパルスフィルタを工夫しています。また、送信変調音も受信側で明瞭度が向上する様にも工夫をしていたりします。
既存機種の改造、そして市民ラジオと言う限られた条件下において、今どきのウンチクを投入するのも悪くない。結局それが価値なのかな?と私は思うのです。
▼変調音の明瞭度はとても大事。お空のコンディション、運用地の周辺コンディション、相手のリグ、その日の体調…色んな条件により感じ方が変化する