無線ブログ集
メイン | 簡易ヘッドライン |
第10回定時社員総会の議決権行使書について (2021/6/23 17:24:54)
JARL第10回定時社員総会の議決権行使書の注意書きが、社員総会議事運営規程と異なっていると指摘されています。
JARL正常化弁護団のメンバーと議論検討し、問題なしとは言えないということで、私から、以下のメールをJARL事務局とJARL顧問弁護士に送付しました。
(ここから)
JARL総務課
弁護士 西尾公伸 先生
弁護士 森中 剛 先生
JARL社員・弁護士の山内です。
さて、複数の社員から、第10回定時社員総会の議決権行使書の注意書き
「2 議案について賛否の両方に○印がある場合又は賛否のいずれにも○印がない場合は、本連盟提案については賛、社員提案については否の表示があったものとして取り扱います。」
の記載は、 社員総会議事運営規程 様式1に反するので無効ではないか、との指摘が寄せられていると思います。当該指摘に対し、JARLとしては、「顧問弁護士とも相談した」上で、「株式会社に関する裁判例」を引用して、適法であると回答されているときいています。
株式会社に関する裁判例とは、大阪地裁平成13年2月28日判決のことと想像しています。私も、他の社員から相談を受けて調べた際に、この裁判例でいけるかなと最初は思ったのですが、よく読むと、同裁判例は、参考書類規則7条を前提として、取締役提出の議案については賛成、株主提出の議案については反対の各意思表示があったものとして取り扱うことを認めたものです。
参考書類規則第7条は、
会社法施行規則第66条 に引き継がれており、以下のように定めています。
(議決権行使書面)
第六十六条 法第三百一条第一項の規定により交付すべき議決権行使書面に記載すべき事項又は法第三百二条第三項若しくは第四項の規定により電磁的方法により提供すべき議決権行使書面に記載すべき事項は、次に掲げる事項とする。
(中略)
二 第六十三条第三号ニに掲げる事項についての定めがあるときは、第一号の欄に記載がない議決権行使書面が株式会社に提出された場合における各議案についての賛成、反対又は棄権のいずれかの意思の表示があったものとする取扱いの内容
(後略)
同第63条3号二
ニ 第六十六条第一項第二号の取扱いを定めるときは、その取扱いの内容
ところが、 一般法人法施行規則 には、会社法施行規則第66条2号に相当する条文がありません。
(議決権行使書面)
第七条 法第四十一条第一項の規定により交付すべき議決権行使書面(同項に規定する議決権行使書面をいう。以下同じ。)に記載すべき事項又は法第四十二条第三項若しくは第四項の規定により電磁的方法により提供すべき議決権行使書面に記載すべき事項は、次に掲げる事項とする。
一 各議案についての賛否(棄権の欄を設ける場合にあっては、棄権を含む。)を記載する欄
二 議決権の行使の期限
三 議決権を行使すべき社員の氏名又は名称(法第四十八条第一項ただし書に規定する場合にあっては、行使することができる議決権の数を含む。)
つまり、株式会社と一般社団法人は、施行規則の前提が異なっているので、株式会社に関する上記大阪地裁平成13年判決が一般社団法人にも適用あるとするのは、無理があると思います。
熊谷「一般社団法人・公益社団法人の社員総会Q&A」51頁も、賛否の欄に記載が無い議決権行使書の議決権の取扱いを、社員総会の招集を決定する理事会により決定しておくことが望ましいとしており、一般法人法施行規則を根拠とはしていません。
そこで、JARLにおいても、第54回理事会で、今回使う議決権行使書の様式を決議しておけば良かったのですが、下記は、今年2月の第54回理事会議事録の抜粋です。そのような決議はしていないようです。
そもそも論として、一般法人法38条1項3号によれば、社員総会を招集する理事会において、「三 社員総会に出席しない社員が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨」を決議しなければいけない、つまり、議決権行使書を使うときは、毎年の理事会でその旨を決議しなければならないのですが、JARLの理事会では、日時場所と議題をきめるだけで、議決権行使書を使うことを決議していないようです。事務局におかれましては、来年2月の理事会では、議決権行使書を使うことも合わせて決議した方がいいと思います。それとも、議決権行使書も含めて、関係書類を全部作成してから2月又は5月の理事会にかけていますか?
もし掛けていないとすると、今年はもう取り返しがつきませんので、リカバリーとして議決権行使書を有効とするためには、定款42条の委任を受けた社員総会議事運営規程で、議決権行使書を使うことをいわば包括的に決議しているんだと整理せざるを得ないと思います。とすれば、社員総会議事運営規程に添付された議決権行使書のフォームを使うしかなく、そのフォームから外れた今年の議決権行使書は、社員総会議事運営規程に反し、ひいては定款42条に反するので無効とせざるをえないと思われます。
もちろん、実際に提出された議決権行使書にすべて○が付いていれば、議決権行使書の法令・定款違反を理由に決議取り消しの訴えを提起したとしても、266条に基づき裁量棄却されると思います。しかし、○がついていない議決権行使書があまりに多く、その扱いによって決議が変わってくるようなときは、決議取り消しの訴えを検討せざるをえなくなるかもしれません。
まさか、会長や専務理事が社員に対し「解任議案反対に○を付けにくいなら、空白でいいから議決権行使書を返送してほしい」などという勧誘は行われていないと思いますが、事務局と先生方におかれましては、議決権行使書につき慎重な取扱をお願い致します。
山内
(ここまで)
顧問弁護士からは、詳細な分析についての謝辞と、指摘にあるような勧誘はもちろん行っていないとの回答がありました。
(2021-06-23 記)