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<5時間17分にわたり活発な討議>JARL、「第10回JARL定時社員総会」を開催 (2021/6/28 18:30:07)
一般社団法人 日本アマチュア無線連盟(JARL)は2021年6月27日、東京・新宿区のベルサール西新宿で第10回JARL定時社員総会を開催。5時間17分にわたり活発な討議が行われ、第1号議題「令和2年度決算の件」は賛成多数で原案通り可決、社員23名の提案による第2号議題「理事 日野岳 充解任の件」、第3号議題「理事 髙尾義則解任の件」、第4号議題「監事 佐藤 眸解任の件」は、いずれも反対多数で否決された。
JARLは2011年秋の一般社団法人化を機に、会員(正員)すべてに参加・議決の権利があった「通常総会」の制度を廃し、正員から選挙で選ばれた「社員」によって行われる、代議員制の「社員総会」へ移行した。社員の定数は138名だが、現在は一部の地域で欠員が生じているため総数は134名となっている。
その10回目となる定時社員総会が、2021年6月27日(日)13時から東京都新宿区にある民間の会議施設「ベルサール西新宿」で開催された。
今回は新型コロナウイルス感染拡大のため、社員には極力出席せず、議決権行使書または出席社員への委任状提出とするように呼びかけが行われ、傍聴希望者も抽選で少数に絞り込むという異例の対応となった。また入場時には検温と手指消毒が行われ、マスク着用が義務づけられた。その結果、実際に出席した社員は39名(12時50分現在。その後数名が到着)にとどまった。
13時に事務局長による案内と会長挨拶があり、13時04分に開会宣言が行われ、議長団(議長:JA1STY 鈴木氏、副議長:JA7UQB 佐藤氏)の指名と総会成立審査が行われた。
議事開始前に事務局が発表した「総会成立審査」の結果は次のとおり。
・議決権を有する社員総数: 134名
・議決権の数: 134個
・12時50分現在の出席社員数: 39名
・議決権行使書の提出社員: 15名
・委任書面による出席社員: 77名
・12時50分現在の合計出席数: 131名
(定款に規定された過半数の67名を超えているので総会は成立)
それぞれの議事の審議時間と採決結果は次のとおり。
★第1号議題「令和2年度決算の件」
・審議時間(採決含む): 13時14分~14時48分(1時間34分)
・採決(挙手)結果:
賛成: 79 (うち議決権行使書11)
反対:53(うち議決権行使書4)
棄権保留:0
※可決には過半数の賛成が必要
★第2号議題「理事 日野岳 充解任の件」 (社員提案)
・審議時間(採決含む): 15時00分~15時45分(45分)
・採決(挙手)結果:
賛成:61(うち議決権行使書8)
反対: 70 (うち議決権行使書7)
棄権保留:1
※理事解任には過半数の賛成が必要
★第3号議題「理事 髙尾義則解任の件」 (社員提案)
・審議時間(採決含む): 15時45分~16時42分(57分)
・採決(挙手)結果:
賛成:57(うち議決権行使書8)
反対: 73 (うち議決権行使書7)
棄権保留:2
※理事解任には過半数の賛成が必要
★第4号議題「監事 佐藤 眸解任の件」 (社員提案)
・審議時間(採決含む): 16時44分~17時08分(24分)
・採決(挙手)結果:
賛成:52(うち議決権行使書7)
反対: 75 (うち議決権行使書8)
棄権保留:5
※監事解任は3分の2の賛成が必要
★報告事項(令和2年度事業報告、令和3年度収支予算、令和3年度事業計画)
・審議時間: 17時12分~18時21分(1時間09分)
<議事内容ピックアップ>
■この日の議事を通じ何度も質疑があったのが、今回の定時社員総会から「総会速記録」の作成・公開を廃止した点について。JARL側は「総会速記録の作成は法律で義務づけられておらず、JARLだけの特別ルールはできるだけ避け、法に沿った運営を行いたい。作成には費用も時間も相当かかってしまう」と説明したが、社員からは「法律は作成を禁止しているわけではない」「総会でどのような質問、回答が出たかを一般会員に知らせることは極めて重要」「社員提出の準備書面と、その回答を公開してはどうか」「手間がかかるということなら、この議事を録音している音声ファイルを会員限定で公開してはどうか」などの意見が出た。JARLは議事音声ファイルの公開について「検討します」と回答した。
■法改正で今年3月に実現した「社会貢献活動でのアマチュア無線の活用」に関連し、JARLが作成する「運用ガイドライン」の公開が遅れているとされることについて、総務省には事前に3月の施行時点での公開は間に合わない旨を伝えており、今年9月の理事会に諮る予定で作成を行っていることを明らかにした。
■令和2年度のJARL会員数は27年ぶりに増加に転じたが、この1年間の入会者と退会者の内訳は「入会:3,957名」「退会:3,383名」であることを明らかにした。なお会員増の理由については「コロナ禍による巣ごもり」の影響もあるが、退会者が減っていることが大きく、これまで行ってきた各種キャンペーン等の成果と認識しているとした。
■またJARL QSLビューローにおける転送処理枚数(=転送作業をした枚数)は昨年度よりも減少しているが、一方でビューローに届いたQSLカードの枚数は昨年比117%となっている。その結果、QSL転送作業に若干の遅れが発生していることを明らかにし、今後改善のため契約見直しも視野にビューローと交渉を行っているとした。
■今年度(令和3年度)は会員台帳の整備を実施する。総務省のデータベースを期間をあけて2回使用し、正員として会員台帳に記載されているが、実際には個人アマチュア局の免許が切れている会員(定款上、正員の要件を満たさず“准員”となる)を確認する作業を行う。該当する会員には照会を行い、その結果を2022年2月7日の会員台帳に反映させる予定との説明があった。
■「青少年お試し入会キャンペーン」における入会者数は、平成28年度が366名、平成29年度が562名、平成30年度が375名、令和元年度が324名、令和2年度は174名で合計1,801名。お試し期間終了後、有料でJARL会員資格を継続したのは23.9%という数字が発表された。
■「C4FMレピータ」の導入については現在18団体から要望が出ており、ワイヤレスネットワーク委員会等で検討中。
■社員から“対立するグループ”との意思疎通の必要性について質問があり、髙尾会長は「我々も必要と感じている」とした上で、「しかし突然、裁判所から通知が届く。双方の弁護士が代理人として話し合っている現状で、直接の意思疎通は難しいと思う」と答弁。これに対して、同グループの社員からは「ぜひ意思疎通のための面談をお願いしたい。帳簿開示請求についてもいきなり訴えるのではなく、手順を踏んで行っていることを理解して欲しい」と述べた。
<まとめ>
怒号とヤジが飛び交って何度も議長団が立往生する場面があった昨年までの定時社員総会からは一変、今回は終始落ち着いた雰囲気で進行したのが印象的だった。議長団は当初「各議題は20分、報告事項は40分で済ませ、15時にはすべて終了したい」としていたが、結局は3時間17分オーバーし18時21分の終了となった。その分、各議題や報告事項への質問はほぼ出尽くすまで対応したのは好感が持てた。
例年そうだが、JARL側が「検討します」と答弁したことの“検討結果”が公表されず、結果としてまた翌年も同じ質問や要望が出ることがある。積み残しになっている検討事項も多いのではないだろうか。総会速記録が公開されなくなると「検討します」という答弁自体が公的に残らない可能性すらある。
また社員からの質問や指摘を受け、内心「これはまずかったな」と感じた点があるのなら、ぜひ脇を締め、改善を図るようにしていただきたい。会員から選ばれた代議員である社員の意見は十分に耳を傾け、尊重されるべきと考える。
JARLは日本のアマチュア無線を代表する唯一の団体だ。無線ライフに欠かせないQSLカード転送などのサービスを受けるためには、たとえ運営に不満や不安があっても入会せざるを得ない(他に受け皿になる団体が存在しない)。それ故、会費収入は1円たりとも無駄遣いせず、オープンな運営を心掛け、会員の誰もが「入会して良かった」「しっかり運営している」と評価する団体を目指して欲しい。
●関連リンク: 第10回定時社員総会議案等について(JARL Web/6月11日掲載)