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良いのか悪いのか?【CB+調整式電圧給電アンテナ】 (2021/6/28 22:45:33)
■電圧給電
NCB-8の2Lot目も落ち着き、少しずつですが再びICB-770へシフトしつつあります。
とは言え、週末ですら時間が取れない感じは、恐らく今年いっぱい続くのかなぁ・・?。
さて、今回はアンテナの話です。 以前の記事 では簡単に扱えるアンテナ調整システムとして、GAWANTに代表される”調整型電圧給電アンテナ”を実験していました。
これのメリットは
・調整箇所が一箇所と簡便である
・アース(ラジアル)側に余り依存しない
です。
逆にデメリットは
・Qが高く調整がピーキー (R1/R2<130くらいまでが実用的)
・良好なラジアルが取れる場合は、逆に不利
・(磁界結合型なので)損失が大きい
です。
これらについてちょっと実験と考察をしてみました。
■理論上の放射効率
まずアンテナの輻射効率は、アンテナサイズ kRとアンテナ材質のパラメータ(loss merit factor M)にほぼ依存します。
ここで言うkは自由空間中の波数であって、一般的には複素数です。ただし、無損失媒質中では実数となります。ここでは面倒なのでAirは無損失媒質とすると
k = ω√εμ=ω/v = 2・π/λ
となります。
Rはアンテナを取り囲むことが出来る最小半径です。
一般的にはkR<<1の場合は小型アンテナとなります。ちなみにダイポールアンテナはλ/2≒1.57ですので小型じゃないですね。で、CBのアンテナ2mで虚像を考慮しないで考えると約1.13となります。
また、ロッドアンテナも細くは無い(≠ ka<π/50)良好金属ですので、総合的に見れば 放射効率ηはほぼ最大輻射効率 になっていると思われます。
*中央大学博士論文「電気的小型アンテナの放射効率向上に関する研究」より引用
■実損失の測定
次に、調整式電圧給電回路の損失を測ってみます。今回の電圧給電回路はインピーダンス変換を伴ったLC並列共振回路です。所謂トランスの磁界結合部分の結合度は一般的に0.3程度とされており、ここの結合度が大きなネックです。一応考慮しながら以前製作したものの実損失を測定してみました。
測定の仕方は単純で、リグ側にはSGからRFを入力。アンテナに相当する部分を抵抗に置き換え、オシロスコープで両端電圧を測定し、実損を算出する方式です。
*プローブはGNDPINを用いるべきだが、面倒なので、GND線を巻きつけ 実インダクタンスが小さくなるようにして測定。プローブは帯域500MHzのものなので27MHz<<500MHz/√2で問題無し
27MHzにおける実変換損失は58%。 約2.3dBの損失 となりました。
結合損失が大半を占めているはずですが、かなり上手くいっている様です。
ただ、 「完全同調状態であっても、半分近くはロスをしている」 と言う事です。
ちなみに、低損失に作るためにはコアの作りが肝であり、十分にSRFが高く取れる様に大きなコアを用いる必要はあるでしょう。
■良かれと思って
アンテナチューナーを入れる事は、不要輻射を抑制する観点から見ても良い事だと思います。
一方、忘れがちなのがアンテナ・チューナーの挿入損失です。アマチュア無線用のT型やπ型の耐入力が取れるものですら一般には0.2dB以上あるのが通常です。
確かにこの程度であれば問題無いのですが、LC共振型の整合回路を組み込んだ場合には、その挿入損失はあまり馬鹿に出来ものでは無く、慎重に考えるべきものとも言えます。
ましてや、LC並列共振型は、アンテナを短くしたり、はたまた外してしまっても見かけ上の整合が取れる仕組みでもあります。即ち 100%損失のダミーロードにもなりうる ということになります。
輻射されている電波が見えないが故に、本当に理想状態で飛んでいるか?がわかりにくく、実使用上扱い辛いアンテナの一つでもあると思います。
無論、条件が揃い、タイミングが合えばキチンとQSO出来る実用アンテナではあります。
実際に組み込むリグと設置状況におけるアンテナインピーダンスを把握し、そのインピーダンス比における最適なアンテナ整合回路を組むと言うのが、特定条件下における最適解なのでしょう。