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feed IC-705 TUNER 一定キャリア送信プラグの作成 (2021/8/29 23:20:00)

IC-705 でアンテナ・チューナーの調整を行う時に。

SSB モードやエレキ―使用 CW モードでも、ワンアクションで一定キャリアを送信できる、
送信ボタンを作成した。

概要

瓦煎餅缶アンテナ・チューナー を調節するために、一定キャリアを出す為には、
・FM または AM モードに変更して PTT を押す。
・SSB モードの場合は、一定レベルのトーンを入力して PTT を押す。
のいずれか操作が必要で、ちょっと面倒臭い。

しかし IC-705 には、オート・アンテナ・チューナー用に本体右側面に
[TUNER] Jack が装備されている。
この端子を流用して、ワンタッチで一定キャリアの送信が出来ないか調べる。

すでに同じような事を考えている先人達が居るもので。

どちらも、
IC-705 に外部オート・アンテナ・チューナーが接続されたと認識させて [TUNER] 機能を有効にする為。
[TUNER]  Jack のKEY 端子に出ている 3.3 V を利用し、START 端子に電圧を与えている。

                                                          
さらに、キャリア送信するため KEY 端子を接地した瞬間も START 端子の電圧を保持させるために、
逆流防止のダイオードと電荷を溜めておくキャパシタ―を使用。

IC-705 [TUNER] Jack 回路

かつてのアマチュア無線機には、回路図が必ずついていたものですが、
なぜか最近の日本製の無線機には付属されないようです。
(普通に家庭用の据置テレビの背面にも、回路図が添付されていた時代が有りました。修理する人のため用だったのだと思うけど。
ちなみに大昔の自動車や二輪車の取説にも、電気配線図が掲載されていましたね。)


電波法施行規則 第三条 第一項 十五  に「アマチユア業務」とは、
「金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう。」
とあるのですから、必ず回路図を付属して欲しいところです。

どこかに IC-705 のサービス・マニュアルが落ちていないか探していたら、つい最近とうとう見つけた。

  [TUNER]  Jack 周りの回路はこんな感じ ( IC-705 Service Manual  より)
  • CONNECT UNIT

  • MAIN UNIT


[TUNER]  Jack 
  • START 端子 (3.5mm Plug RING)
IC161 のバッファを通して CPU に入力される。
一定以上の電圧がかかると、外部オート・アンテナ・チューナーが接続されたと判断し、
[TUNER] 機能を有効にする。

[TUNER]機能が有効であれば、IC-705 の画面で [TUNER] ボタンを長押しすると、
外部オート・アンテナ・チューナーに TUNE 動作開始を指示する為。
Q162  MOS FET のオープンドレインを ON にして、0.5 秒間端子を接地する動作をしている。


  • KEY 端子  (3.5mm Plug TIP)
IC161 のバッファを通して CPU に入力される。
[TUNER]機能が有効時、接地されると一定キャリアを送信。

調査

[TUNER] 機能が有効になる、START 端子の電圧

手始めに、START 端子の電圧がどれ位なら [TUNER] Jack に外部チューナーが接続されたと認識して、[TUNER] 機能が有効になるかしらべた。

端子に電圧を 0V から徐々に上げていくと、約 1.5 V 以上になると [TUNER] 機能が有効になるようです。

KEY 端子からは約 3 Vの電圧が出ているので、これが利用可能。

START 端子電圧保持用のキャパシタ容量

KEY 端子を接地する事でキャリア送信が開始されるのだが。
同時に START 端子の電圧が下がってしまうと [TUNER] 機能が無効になるようで、
キャリア送信されない。

そこで、逆流防止のダイオードと電圧保持用のキャパシタが必要になる。
START 端子が本体側から接地されたときに、
電流が流れ過ぎないように抵抗も入れておく。

KEY端子を接地しても、しばらくSTART 端子の電圧を保持しておくキャパシタの容量が
どの程度以上あれば良いのか調べる為、ブレッドボードに回路を仮組み。

  • キャパシタ無しでは、スイッチを押しても送信が始まらない。 nocap.png

  • 0.1 uF 2個を直列にした、0.05 uF でも送信は始まらない。 0_05u.png

  • 0.1 uF 1個では、送信する時もあるが、かなりの割合で送信が始まらない。 0_1u.png

  • 0.1 uF 2個を並列にした、0.2 uF にすると、百発百中で送信が始まる。 0_2u.png
この場合、KEY 端子を接地してから、START 端子の電圧が 1.5 V を切るまでの時間は約 50 ms。

CPU による
  • 端子電圧ポーリング周期
  • デバウンス処理の手法
  • KEY 端子と START 端子の監視の順番
等の都合で、最低でも約 30~50 ms 以上の時間が必要になるようだ。

0.2 uF に対してマージンを持たせた 0.47 uF 以上の容量があれば十分そうであるが。

ちょうど手持ちに、電解コンデンサよりも小さくプラグに内蔵させるのに都合の良い、
ムラタの 1.0 uF という大容量の積層セラミックが有ったので、
これを使う事にする。
この時の START 端子の波形がこれ。START端子電圧 1.5 V を切るまで約 300 ms。 1u.png

製作

回路定数決定に必要な情報が集まったので、設計(という程大したことはない)した回路。
部品も少ないし。
移動での持ち出しも楽になるし、設置撤収時にケーブルが絡んだりして手間が増えないように。
直接 3.5 mm ミニ・フォーンプラグに組み込む事にする。

部品はこれだけ。
  • PUSH SW は押している間だけ ON する、ジャンクBOXにあったもの。
  • ダイオードも手持ちの、一般的なシリコン・小信号スイッチング・ダイオード。
  • キャパシタは前述のムラタの積層セラミック。
  • 3.5mm ミニ・ステレオ・フォーン・プラグ。カバーは不使用。
  • 抵抗の値はあまり神経を使う必要がないけど。 IC-705側のQ162 が ON してしまった時の電流を制限しており、あまり大きいと電圧降下が発生するので、だいたい1 k~数100 k オーム位の範囲なら問題ないでしょう。

各部品とプラグ、スイッチを空中配線で半田付けして。

念の為、実際に [TUNER] Jack に挿入して動作を確認しておく。
動作がOKなら。

振動や機械的ストレスで断線しないように、ホットメルトで固めて。

最後に、さらに熱収縮チューブを被せて補強して完成。


使用法

完成したプラグを、IC-705 の右側面の [TUNER] Jack に挿入。

MODE に関係なく、プラグ頭の SW を押している間。
一定キャリアが送信されます。

まとめ

この [TUNER] Jack に差す、一定キャリア送信プラグを使うことで。
AH-705 以外のマニュアル・チューナーや他社のオート・チューナーの調整時に、
いちいち送信モードを変えたりしなくてもキャリア送信がワンタッチで出来るようになりました。

ただ残念なのは。

  • IC-705 の [TUNER] 機能でキャリア送信時には、何故か SWR メーターを表示させていても、全然メーターが振れない。
AH-705 や AH-4 では TUNE 時に、ATT が挿入されて IC-705 側から見ると SWR が実際より良く見えてしまいユーザーが誤解するのを防止する為か?
そんなお節介せずに、IC-705 から見える SWR を表示してくれれば、マニュアル・アンテナ・チューナーの調整に便利だったのに。


  • もう一点、145 MHz帯と 430 MHz帯では [TUNER] 機能が有効に出来ません。
これも AH-705, AH-4 が前提という仕様でしょうね。

どちらも、 MENU>機能設定>チューナー>チューナー選択
「その他」 を選んだときは有効にして欲しい。
次回のファームウェアアップデートで改善されないかなぁ。

あと、SPDT 単極双投 Non-Shorting のモーメンタリ PUSH SW が使えれば、
Diode 無しに出来ましたね。



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