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国内FT8周波数が7041kHzから7037kHzに移行? (2021/9/26 17:52:03)
2021年9月20日から22日に、3年に一度のIARU-3の総会が、タイ連盟の主催で行われました。Zoomを使ったオンライン開催だったそうです。
興味深いことに、 HF帯におけるQRMの解消のために、 バンドプランの変更が議論されています。特に、 JARLに対し、日本の国内FT8周波数を7041 kHzから7030-7040 kHzの間(具体的には7037kHz)に変更できないかを検討し、2021年末までに回答することが求められた ことが注目に値します。
この件は、 ARRLの2021年9月23日付けニュースレター の”IARU Region 3 Considers Significant Expansion of HF Digital Segments”というタイトルの記事で知りました(より詳細には、このARRLレターを紹介されていた 「SDRでBCLを」さんの9月25日付け記事 で知りました。)。
ARRLのニュースレターは、非会員でもリンク先( http://www.arrl.org/arrlletter?issue=2021-09-23 )で読むことができます(ここにも、活動の成果をコミュニティに返そうというARRLの意思が感じられます。)。
IARU-3の総会の資料はここで公開されている ので、調べてみました。
Bandplan Committeeの原案
以下のドキュメントです。特に029と031。
- 029 Bandplan Committee Report
- 031 IARU Region 3 Conference 2021 – WIA – IARU R3 Interim HF Band Plan Proposal – Data Segment Revision
- 035 Proposal to Seperate Bandplan Committee
- 039 IARU Region 3 Conference 2021 – WIA – Band Planning Control Mechanisms
バンドプラン改定の目的として、以下が謳われています。
- HFバンドプランの世界的なハーモナイゼイション(統一・調和)
- Conversational(会話的)なデータモード(PSK, RTTY, Olivia等)とTime Synchronised(時間で同期された)なデータモード( FT8, JT9, JT65, WSPR 等)の分離
- 時間で同期されたモードの増加に応じた帯域の拡大(主に、現時点では利用が減少したRTTY用帯域とのトレード)
- 40m bandでのvoiceとdataのより効果的な分離
具体的には、下図において、現在上のようになっているプランを、下のように変更したらどうかという提案です。
よく見えないので赤枠部分だけ拡大すると、現在は
であるものを、
このように改訂したいという提案です(上からR1/R2/R3。青はCW、赤はData、緑はVoice)。
そのココロは、こういうことのようです(若干の意訳を含む。)。
- 7000~7050でCWが出られるようにしたい。
- 7040~7050を「会話的なデータモード(PSK, Olivia, RTTY)」のため確保したい。なので、voiceは7050以上とする。CWは7040~7050でいちおう出られるが、secondary baseとする。
- 国内データ通信は7030-7045だけしか出られない日本みたいな例があることも理解している。
- ただ、7040-7044が、IARU-R1(EUやAF)でPSK/Oliviaの中心周波数になっている。そこで、この範囲を他のモードも含めた(会話的なデータモードの)世界的な中心周波数にしたい。
- そこで、7030-7040を「Domesitic Data Only(国内通信に限ってはのデータ通信も可能)」な周波数として残すので、JA国内周波数の7041は、7030-7040の間(031の文書では、より特定して「7037kHz」)に移動してもらえないだろうか・・・。
- (7050-7060のデータモードはR3だけだが、さらに検討したいのでとりあえずそのままにする)。
40m以外については、
- R-3の非常通信周波数3600kHzを3680kHzに変更する。
- 世界的な20mのSSTV周波数を14230kHzから14330kHzに変更する。
Working Group 2での議論
「WG-2 Report」に書かれています。WG-2としては、
- Bandplan Committeeの提案を直ちに採択はしない。その代わりに、
- JARLに対し、JA国内周波数の7041を7030-7040の間に移動できるか検討し、2021年末までにBandplan Comitteeに報告せよ。
- 他のR3連盟に対し、(特に40mにおいて)法制化された(administration-mandated)バンドプランがあるかを調査して、2021年末までにBandplan Comitteeに報告せよ。
- 各国の連盟は、Bandplan Comitteeの提案文書(031と039)を各国のアマチュアコミュニティに配布し、意見を集めて、2021年末までにBandplan Committeeに報告せよ。
という意見でした。
総会として、このWorking Group 2の意見がそのまま採択されたのかどうかは、公表文書からはまだわかりません。ですが、ARRLのニュースレターによれば、そのまま採択されたものと思われます。
JAコミュニティ/JARLとしてありうべき対応
これをうけて、JARLはどう動くべきでしょうか。
- まず、IARU-R3の要請を受け、今回の提案を大至急JAの「アマチュアコミュニティ」に提示して、パブコメにかけるべきでしょう。締め切りは2021年末ですから時間がありません。
- JAの「アマチュアコミュニティ」としては、国内周波数を7041kHzとする必然性はあるでしょうか。 黒点数が上昇するこれからの時期に、FT8ばかりでなく、RTTYやPSKといった他のモードでDX交信のチャンスを広げるために、FT8を7037kHzに移動して 7040-7044をクリアにする という提案は、受け入れ可能ではないでしょうか。
なお、JAの現行バンドプラン(下記)と今回のR3の提案をさらに比べてみます。
- JAの現行バンドプランは、今回のR3の提案と、Phoneが下限7045まで出られてしまうこと、7045~7050の間で国外局とのデータ通信ができないことが整合していません。そこで、今後、「狭帯域データ」と「CW, 狭帯域の電話・画像」の区切りを7045から7050に移動させる必要があるかもしれません。
- ですが、この部分はバンドプラン告示( 無線局運用規則第二百五十八条の二の規定に基づくアマチュア業務に使用する電波の型式及び周波数の使用区別 )で決まっていることなので、総務省にお伺いを立てて告示を改正してもらう必要があります。
- そもそも論として、バンドプランといったアマチュア無線界の内部事情のために、いちいち総務省にお伺いを立てて告示改正をしてもらうのは手間で、申し訳ないと思います。2015年のバンドプラン改正まで7MHzと24MHzでJT65に出られなかったように、アマチュア無線家にとっても不都合があります。
- また、JAの法的バンドプランの制約がなければ、R3のバンドプランにおいて、7030-7040を「Domesitic Data Only」として残してもらう必要もなかったように見えます。国際的にも迷惑をかけていることになります。
- 確かに、違法局・不法局が蔓延しているVU帯については、法的な強制力があるバンドプランが必要です。ですが、HF帯とSHF帯以上については、規制緩和の一環として告示から外してもらい、JARLがバンドプランを自主的に制定できるようにした方が、国際的な動きにも柔軟に対応できてよいのではないでしょうか。
(2021-09-26 記)