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V/Uヤギアンテナの製作 (2021/10/30 0:51:04)
構想から2年以上が経過してもなかなか手も回らず完成できなかったV/U用の八木宇田アンテナが日の目を見ることになりました。
今回は、コンテスターであり、最近は衛星通信でもアクティブに運用されている JK1LSE 本田OM (AKCメンバーでもあります)に 設計・監修 をお願いし、 コラボ開発 と言うことで比較的短期間でここまで追い込むことができました。
本田OMは、コンテストや移動運用、また衛星通信用として既に開発され自作されたアンテナを使用されていますが、これをベースに、当局が以前より持っていた コンセプト
① 1mブーム長 (ホームセンターで容易に手に入る)
② 穴あけ加工しない
(加工が下手でエレメントがきれいに並ばないので)
③ とにかく軽くする
を実現すべく、ご協力をお願いしダイレクトメールを駆使しながら何とか使えそうで再現性のあるものができました。
ここまででほぼ目途が立ったものは
① 430MHz 8エレ
② 144Mz 4エレ
です。
移動用として軽く、簡単に組み立てられるもの、また、衛星通信用として開発中の仰角ローテーターでも簡単に回すことができるものとして使用することが可能です。
まず、① を実現するブームとしては10mm角x1mのアルミ角パイプを使用しました。
これに、② の穴加工をしないで簡単に取り付ける方法として3Dプリンタを使用してエレメントホルダーを作成しました。
ホルダーには、ナットがインサートされており、ユリヤネジを使って10mm角パイプの任意の位置で固定することが可能です。角パイプですのでエレメントはきれいに並びます。
ブームマウント用のホルダーも3Dプリンタを使用してブームの任意の位置で固定できるようにしました。
次は、給電部分です。最初は、シンプルに同軸直結でマッチングが取れるように設計をお願いしましたが、できるにはできるのですが、少々パターンがいびつになり、本田OMの実績のあるガンママッチを使うことにしました。マッチングロッドの固定や、ショートバーをどういう構造にするか悩みましたが、これも3Dプリンタを活用し、それなりに良いものができました。
最初ショートバーとして10mm角の角棒を使用しましたが、少々大きいので、最終的には5mmx10mmの角棒を使用することにしました。
ラジエーターエレメントとの接続部分には圧着端子をナットで絞めて、その端を半田付けする構造だったのですが、マッチング用のコンデンサーも含めて取付のバラツキを減らすために、基板を作って、それに半田付けする構造としました。
このラジエーターもブームの任意の位置にユリヤネジで固定することができます。
マッチング用のコンデンサーには、50V耐圧のチップコンデンサを使用してみました。
最終的にこれでいいのかもう少しテストが必要ですが、50W入力でも特に変化は見られませんでした。
こうして出来上がったのが最初の写真のアンテナです。
③ とにかく軽くする
この3つのコンセプトの最後の重量ですが、 144 4エレ、430 8エレ共 に、ブームマウントホルダを含めて 260g程度 に収まりました。とても軽量に出来上がったと思います。
とりあえず形はできましたが、所望の性能が得られているのか? とても気になるところです。
利得もそうですし、ビームパターンも気になります。
設計は、MMANAで行われており、144 4エレ、430 8エレの設計性能(利得、FB比、パターン)を下に示します。
これらの性能が実現できているかの確認は、測定してみるしかありません。
電波暗室があるわけではないので、一応ルーフバルコニーではありますが、マンションの壁や屋根、隣のマンションの反射などが想定され満足な測定ができるのかわかりませんでしたが、やってみることにしました。
パターンの測定は、当局が製作したPocke TATORを使用してアンテナを回転させますが、10度おきでいいだろうと思ってみたものの、毎回10度ずつ回転させてレベルを測ってという作業はとても大変です。
更に 再現性のあるレベル測定 が必要ですので、ちょっとした 治具(ツール)を作る ことにしました。
① レベル測定
(AD8307を使いダイナミックレンジ70dBを確保)
② 回転制御
(Pocke TATORを自動で10度ずつ360度回転させるプログラムを追加)
③ 信号源制御
(10度おきにリグのCWモードで短時間キーON自動制御プログラム追加)
④ データの記録
(マイコンのEEPROMに10度毎に測定したレベルを書き込み制御)
⑤ データの読出
(UP/DOWNボタンで10度毎のEEPROMのデータを読み出し、LCD表示)
これらを実現することで、360度のパターン測定が自動化されとても重宝しました。
記録したデータをシリアルでPCに掃き出して、エクセルなどでグラフ化すればもっと楽になるのでしょうが、ここまでやっていると何を開発しているのかわからなくなる(とてもできないが本音)ので、10度毎のレベルデータの読みながら手書きで円グラフを作成しました。
レベル測定のためのAD8307の回路、リグのキーON制御ともに、Pocke TATORのコントローラーの中に仕込みました。
まずマッチングの状況ですが、こんな感じです。nanoVNAで測定しました。SWR計でも帯域内1.5以下に収まっています。
144MHz 4エレ 430MHz 8エレ
次にパターン図です。
144MHz 4エレ 430MHz 8エレ
いびつに見えるかもしれませんが、マンションなどの反射の影響なども相当なレベルであると思いますので、それを差し引けばMMANAのシミュレーション結果の傾向はよく出ていると思います。
メインローブの雰囲気とか、サイドローブの出方とか、FB比もしっかりとれています。
角度の正規化を行っていませんので、頭を30~40度左に傾けてみてください。
実際には、何度も条件を変えて測定して周りの影響の少ない条件が見つかり、その結果を掲載しています。
ここまでのパターン図が掲載されている事例は少ないかと思います。
ちなみに、メーカー製 ダイヤモンド社の144 5エレ、430 10エレを同じ条件で測定したパターン図を下に示します。
144MHz 5エレ 430MHz 10エレ
次は利得です。
一般的にダイポールと比較されますので、比較用ダイポール(だいぶ以前に作っていた)とレベル比較してみました。また、ダイヤモンド社のカタログ値はわかっていますので、それと比較してみました。
アンテナとダイポールの測定レベルは絶対値ではなく相対レベルとしてみてください。
まず、ダイポールとの比較ですが、144MHzで6dB、430MHzで本機が9dB、D社製が10dBとなっています。
それぞれ、MMANAシミュレーション値、カタログ値に対して約1dB低い結果となっています。
この辺りの違いの要因は、詳細は不明ですが、送受信の測定距離が十分遠方となっていないことなどが考えられるかもしれません。
D社のカタログ値を正としてみてみると、144で同レベル、430で1dBの差となっており、シミュレーション性能が出ていることになります。
FB比はカタログ値が遠慮して記載されているのか、本機の方がシミュレーション値、実測値(パターン図参照)からも良い値となっています。
結果として、 利得、FB比、パターン図ともに、当初の期待値を満足 している結果が得られたと思います。
比較測定したアンテナ群
ダイポールでの測定状況
パターン図測定状況
送信側:モービルホイップ 受信側:測定アンテナ
結果として、当初の3つのコンセプトを満足する2種類のアンテナが完成しました。
性能測定用のツールもでき、メーカー製との比較、ダイポールとの比較において、性能の期待値もほぼ満足する測定結果が得られ、再現性のおいても430MHz 8エレは2号機も製作し同様の測定を行って同様の結果がえられ、再現性の確認もできました。
今回は、 設計・監修 として JK1LSE 本田OM に 絶大なる支援 をいただき、 感謝 申し上げます。
追記:
衛星通信用として、144と430をクロスに配置したヤギを見かけます。
今回の2つのヤギをクロスにしたらどうなるか、やってみました。ユリヤネジで簡単に、好きな位置に固定できる構造が幸いして、簡単に組み立て、測定を行うことができました。
左が144MHz 4エレ、右が430 8エレをそれぞれ垂直にして測定したものです。
ほぼほぼ同様な結果が得られ、クロスにしても使用できることがわかりました。
エレメントの位置を、マジックなどで印をつけておけばばらした状態で保管持ち運びが可能で、現地では印に合わせてエレメントを配置しユリヤネジを締めるだけで簡単に組み立てることができます。
追記に記載したように各バンド単独でも、1本のブームでクロスとして使用することもできます。
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