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feed バンドプランは誰のもの?(7MHz帯狭帯域データを中心にその変遷を振り返る) (2022/1/30 19:08:00)

「7041問題」(7MHz国内FT8周波数移転問題) について考えていくうちに、過去のバンドプランの変遷を調べたくなりました。・・・が、データ職人・JJ1WTL本林さんのウェブサイトにちゃんとまとめがありました(さすがです)。

本林さんのサイト「アマチュア関係の告示の変遷」
http://motobayashi.net/history/kokuji/index.html
→「バンドプラン」
http://motobayashi.net/history/kokuji/bandplan.html

バンドプランは、以前はJARLが決めた「紳士協定」でしたが、1992年に法制化されました。その後、必要に応じて改正されてきています。バンドプランを決めている総務省(かつては郵政省)の告示の名前はとっても長いので、以下「 バンドプラン告示 」と略称したいと思います。

http://motobayashi.net/history/kokuji/bandplan.html より
(本林氏の許諾を得て90度回転)

以下では、「7041問題」に関係する部分を詳しく見ていきます。

狭帯域データ周波数帯の歴史

「7041問題」が生じたそもそもの原因は、国際的なFT8の標準周波数7074kHzで、JA局同士のQSOが禁じられており、別の周波数を選ばないとならない点にあります。

この、「外国のアマチュア局とのQSOに限る」との制限はいつ入ったのか、遡っていくと、1992(H4)年7月1日施行、バンドプランが法制化された当初の時点ですでに存在していました(紳士協定時代から入っていた制限を引き継いだようです。)。

この時点のデータ通信帯は、
7025-7030 国内○/国外○
7030-7040 国内×/国外○
というとても狭い範囲でした。まだ7100kHz以上が開放されておらず、JT65もなかった時代です。

(注)7,030kHzから7,040kHzまでの周波数は、外国のアマチュア局との
F1電波によるデータ伝送にも使用することができる。
「アマチュア無線機器総合カタログ93年度版」より

1997(H9)年4月1日、画像系通信(SSTV・Fax)をデジタル帯から外し電話帯全体に拡張するなど、全面改正されたバンドプラン告示が施行されました。7MHz帯のデータ通信帯は
7025-7030 国内○/国外○
7030- 7045  国内×/国外○
となりました。外国局とのみデジタルOKな周波数帯が、5kHz拡張されています。

(注)7,030kHzから7,045kHzまでの周波数は、外国のアマチュア局との
狭帯域ディジタル電波による通信にも使用することができます。
「JARLアマチュア無線ハンドブック増補改訂版」(1997年4月20日発行)より

時は下って2002(H14)年、JARL理事会から周波数委員会に対し、「アマチュア無線のデジタル化に対応した周波数使用区分の改正案の検討」について諮問がありました。このころ、D-STARの開発がすすんでおり、実用化に向けた準備の一環と思われます。周波数委員会は、会員の意見を募集しながら1200MHz帯以上の周波数帯について検討し、同年6月に理事会へ答申を行いました。JARLは、この答申に基づき総務省に対しバンドプランの改正について要望し、2004(H16)年01月13日、全面改正されたバンドプラン告示が施行されました。

当時のJARL周波数委員会は、2004年の改正は1200MHz帯以上に限定したものであったが、1200MHz帯以下についてもJARL及び総務省に対し多数の意見が寄せられ、可能なものについては改正に反映されたものの、積み残しがあるとして、2004(H16)年12月15日から2005(H17)年1月31日まで、ふたたび 意見募集 を行います。

2005(H17)年1月31日までのこの意見募集の結果、74件の意見が提出され、同年4月4日、 意見に対する周波数委員会の考え方 と、バンドプラン案が公表されます。
https://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/freq-iken.htm

7MHz帯に関する部分を抜粋します。

https://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/freq-besshi2.pdf  より
改正案の「注2 7,030kHzから7,045kHzまでの」は
「注2 7,040kHzから7,045kHzまでの」の誤植と思われる。

寄せられた意見は、狭帯域デジタル周波数帯の拡張(及び専用化)を求めるものが多かった一方で、現状維持でよいとの意見もありました。周波数委員会の案は、狭帯域デジタルについては、国内QSOができる上限を7030kHzから7040kHzに広げるというという限度の修正に留めるものでした。

周波数委員会は、このバンドプラン案について同年(2005)年5月31日までふたたび 意見募集 を行い、 改正要望書 をとりまとめ、2006(H18)年にJARLから総務省に提出されています。

総務省は、さらに意見募集を行い、2009(H21)年03月30日、全面改正されたバンドプラン告示が施行されました。このとき、135kHz帯の開放と共に、待ちに待った7MHz帯の大幅拡大が実現したのですが、狭帯域データ周波数帯は、
7025- 7040  国内○/国外○
7040 7045  国内×/国外○
7100-7200 国内○/国外○
と、上記周波数委員会案のまま、国内QSOができる上限を7030kHzから7040kHzに変更するものに留められました。なお、7100kHzから7200kHzまでの拡張部分は全電波型式とされ、狭帯域データでもQRVできることにはなっていました。

JT系デジタルモードの登場

さて、FT8が登場する前、JT系デジタルモードとしてはJT65が使われていました。 「HF帯で極めて弱い局と交信するためのJT65の運用テクニック」(月刊FBニュース2013年6月号) によれば、2006年頃から、もともとEME用として開発されたJT65をHFでも運用する局が現れはじめ、2008年の「JT65-HF」の登場により一気に増加したということのようです。

JAでも、先進的な方々の間で、JT65を使ったスケジュールQSOが行われていました。JT65の運用は、世界的には7076kHzで行われていましたが、当時のJAの7MHz帯のバンドプランは上記のとおりであり、 7076kHzでは国内外問わず一切データ通信ができませんでした 。インターネット上には、2012年にJT65のスケジュールQSOがなされた記録がありますが、このときの周波数は 7026kHz だったようです。JAでデータが許される帯域の下限である7026kHzが選ばれたのかもしれません。

その後、JT65スケジュールQSOの周波数は、国内データ帯域の上限である 7039kHz にQSYします。CWとのQRMを避けたのかもしれません。先駆者による熱心なスケジュールQSOの結果、7039kHzに出る局は徐々に増えていき、JA局だけでなく外国の局が出てくることもあったようです(ちなみに、私がJT65で初めてQSOしたのは、2013年2月のことでした。)。

しかし、JA局が7076kHzに出られない状況については、改善が求められていました。

7076kHzの開放(ただし「外国のアマチュア局とのQSOに限る」)

2012(H24)年、JARL周波数委員会は、同年5月31日を締め切りとして意見募集を行います。「新しい通信方式の普及状況や、新規に分配された周波数の有効利用を図るため」というのは、JT系デジタルモードの登場や7MHzの拡張を指しているのでしょう。特に7MHz帯については、大幅な拡張があったにもかかわらず、2009年のバンドプラン改正は、その前の意見募集の結果に基づくものにとどまっていましたから、全面的な見直しが必須と考えられたのでしょう。

意見募集の結果は、2012年末発行のJARL News 2013年冬号に掲載されたようです(ネット上では入手できず。)。その後、周波数委員会は「改正の方向性」を公表し、2013(H25)年5月31日を締め切りとしてさらに意見募集を行います。
https://www.jarl.org/Japanese/A_Shiryo/A-3_Band_Plan/h25-ikenboshu.pdf

このとき、周波数委員会からは、バンドプラン改正の方向性として以下の基本方針が示されました。

また、このとき公表された7MHz帯の案は、以下のとおりでした。

つまり、国外局とのQSOのみが許されていた7040-7045kHzを国内局同士のQSOにも開放し、7045-7100kHzは「外国のアマチュア局とのQSOに限る」との制限を付して、狭帯域データ帯域として開放するという案でした。あくまで7MHz帯においては、国内と国外を分けたい、ということなのでしょうか。

この改正案についての意見募集の結果は、おそらく2013年中に公表されたと思われますが、ネット上では見つけられませんでした。

2015年1月5日、改正バンドプラン告示が施行され、7MHz帯は以下のように改訂されました。

7MHz帯の狭帯域データ周波数帯は、
7030 7045  国内○/国外○
7045 7100  国内×/国外○
7100-7200 国内○/国外○
となっています。2013年に公表された周波数委員会案と比較すると、データ帯域の下限が7025kHzから7030kHzに削られていますが、他は同じです。

これで、JAの局も、晴れて7076kHzに出られるようになったのですが、ここでも「外国のアマチュア局との交信に限る」との制約が残され、JA局同士のJT65によるQSOは別の周波数で行わざるを得なくなりました。

ここで、バンドプラン上は、改正前に使われていた7039kHzを使い続けてもよかったはずですが、なぜか、2kHz上の7041kHzが使われるようになりました。バンドプラン告示の改訂を受けて、2015年2月、JARL制定のCWコンテスト周波数が「7010-7030kHz」から「7010-7040kHz」に拡張されましたので、この帯域を避けた7041kHzを使う方が良いと考えられたのかもしれません。 この頃までは、JT65(続くJT9やT10等)のユーザー数はそれほど多くなかったので、先駆者の呼びかけによるQSYも容易だったものと思われます

2017年夏、FT8が発表され、瞬く間にブームとなりました。WSJT-Xには、7MHzのFT8用周波数として7074kHzがセットされていましたが、この周波数ではやはりJA国内局同士のQSOができません。ここで、7041kHzとは別の周波数を提唱する動きもあったようですが、 いったん成立した7041kHzという慣習はとても強力で、 結局、JT65と同じ7041kHzがFT8でも使われるようになりました。 これだけJT系デジタルモードのユーザー数が増えてしまえば、一部の個人の呼びかけではQSYは無理でしょう。 そして、今日に至ります。

バンドプランは誰のもの?

今回の調査で、 過去のJARLは、バンドプランについて、一般アマチュア無線家から 何度も意見募集を行い、実に丁寧に 検討を行い、改正案をとりまとめて総務省に働きかけ、バンドプラン告示の改正を実現してきたことがわかりました

しかし、2013年を最後に、JARLによるバンドプランに関する意見募集は行われていないようです。2020年の1.8MHz帯及び3.5/3.8MHz帯の拡張の際も、JARLによる意見募集は行われませんでした。2020年初旬から始まったIARUによる全世界的なバンドプラン変更(統一)は、JAに対しても当然大きな影響を与えるものですから、意見募集がされてしかるべきでしたが、国内に対し情報提供すらされていません。そして、 あの意味不明な7MHz国内周波数についてのアナウンス です。

バンドプランは、アマチュア無線家みんなのものであって、密室で決められるべきものではないと私は考えます。広く、アマチュア無線コミュニティから意見を募集するのは当然のことです。

過去のJARLにはできたことが、 なぜ、 今のJARLにはできなくなってしまったのでしょうか。

(2022-01-30 記)


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