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feed RFパワーメーターSWR計の較正 (2022/10/22 17:32:34)
アマチュア無線RFパワーメーター、SWR計の較正(校正)をして欲しいとのことです。

WELZ SP-620
1,8〜525Mhz

IMGP7796

HFからUHFまでカバーできるパワーメーターです。


IMGP7832

内部のVRにて調整します。


IMGP7797

残念ながらパワーメーターの較正器は持っていませんが、基準にするものは必要です。

パワーの出力に使う無線機を用意します。

V・UHFはYAESU FT-4700です。

IMGP7829

HFはYAESU FT-897です。


IMGP7820

フジソク 無線機テスター 50〜470Mhz

較正有効期限2018年3月までのもの

IMGP7830

抵抗の両端にかかる電圧を測定し、計算により出力を求める方法。

やり方は過去記事にもあります。 ↓ 

http://jr2jhg.livedoor.blog/archives/9411249.html

高周波出力の測定は主に2種類の方法があります。
・熱電対の発熱を電力に換算する
・ダイオードで検波した電圧を電力に換算する
今回はダイオード検波した電圧を測定するものを自作します。

自作機器の配線図

パワー計較正器計算式

配線図のとおり、平ラグ板にて作成しました。


IMGP7822

ダイオードはソケット式にして交換できると便利です。

ゲルマニウムダイオードのIN60を使いましたが、周波数特性が良くないので50Mzhくらいが限界です。
高周波検波用ダイオードで、ガラス管タイプのショットキバリアダイオードなどファストリカバリー(FRD)タイプが理想です。

ダイオードIN60の耐圧は45Vほどであるため、10Wまでの測定が可能ですが、20W以上ではダイオードが壊れてしまいます。
交換式にする利点は壊れやすいダイオードを取り換えられることと、より周波数特性が良く耐圧が高いデバイスと挿し替えが効き、トランジスターのB‐C間でも可能であることが確認できました。

耐圧に関しては、抵抗にかかる高周波電圧を計算する式から算出です。

V=√(PR)×√2 

10W50Ωの場合  
31V=√(10W×50Ω)×1,41

10Wでも高い電圧だと思いますが100Wでは99Vにもなります。

IMGP7823

同軸変換アダプターを使います。


IMGP7827

50Ωのダミーロードの両端にかかる電圧を取出します。


IMGP7792

50Ωダミーロードの自作例

200Ω3Wの酸化金属皮膜抵抗4本並列にして作ります。

IMGP7828

デジタルテスターにて電圧を測定します。


IMGP7793

無線機をLOWパワーにて送信します。


IMGP7829

無線機テスターにて、LOパワーは1Wであることを確認しました。


IMGP7788

1Wです。


IMGP7789

自作機器でのパワー測定。

基準器の作り方です。

交流の半波整流回路です。
ダイオードにて交流の半分だけが検波されて出力となります。
出力はコンデンサーで平滑された直流となります。
負荷抵抗のダミーロードより直列抵抗の1kが大きいため、交流の最大値(ピーク)の電圧が出力されます。

アマチュア無線で使われているパワーメーターの指示は実効値のため、

E=e/√2

として実効値を求め、次に電力を求める式、

P=E²/R

により計算にてパワー(P)を求めます。

パワー計較正器計算式

145Mhz 1Wのとき、測定電圧は8,77Vでした。


IMGP7818

計算をすると。

E=e/√2
E=8,77÷1,41
E=6,2

P=E²/R (Rの値は50Ω)
P=6,2×6,2÷50  
P=0,76

0,76W

ダイオードの周波数特性により145Mhzでは無理がありますが、近似値にはなりました。

IMGP7819

HF 7Mhz では。


IMGP7820

パワーは10Wに設定しました。


IMGP7821

7Mhz 10Wのとき、測定電圧は30,75Vでした。


IMGP7824

計算結果は9,5Wとなりました。

ダイオードの周波数特性ではHFまでが限界のようです。

IMGP7826

整流に使用したダイオードIN60の順方向電圧を測定します。


IMGP7834

ダイオード測定機能があるテスターなら順方向電圧VFを測定することができます。

0,27Vです。

IN60の場合、0,27Vがダイオードによる電圧降下となります。

よって、前記の電圧30,75Vに0,27Vぶんを補正する必要があります。

実際には温度、周波数、電流、コネクタのインピーダンスマッチングによっても補正値を考慮する必要があります。

IMGP7835

本当に電圧降下の補正が必要なのでしょうか。

直流の10Vで実測します。

IMGP7867

ダイオード1個のときのVFは 0.25V


IMGP7876

ダイオード2個直列にしたときのVFは 0,5V

0,25+0,25=0,5V  

IMGP7877

ダイオードを通す前の電圧は、安定化電源の出力電圧である10Vです。


IMGP7870

ダイオード1個のときの電圧は 9,99V


IMGP7872

ダイオード2個のときの電圧は 9,97V

電圧降下が起きないのはなぜでしょうか。

IMGP7875

閉じた回路ではなく、電位が同じだからです。

33kΩの抵抗を入れてみると電圧降下します。

ダイオード1個では0.2V降下しました。

IMGP7878

ダイオード2個では0,4V降下しました。


IMGP7879

デジタルテスターはとても電気が流れにくくなっています。

YOKOGAWAテスターの規格表です。

10MΩとなっています。

Screenshot from 2022-10-06 04-09-06

電気を流れにくくするために1MΩの抵抗を入れてみました。

ほぼ10Vです。

デジタルテスターで測定する場合に入力抵抗が測定に与える影響はあるだろうか。
理想は無限抵抗であるが、本自作機器における補正は考慮する必要はないと言えます。

IMGP7881

依頼品のパワー計の調整。

V・UHFは無線機テスターで測定した1Wにて、
出力はFT-4700

HFは10Wにて、
出力はFT-897

無線機のパワーが正しい出力であるものとした上で、実施することとしました。

メーター0点位置を調整しました。

IMGP7798

V・UHFの調整。

3Wレンジ 1Wに調整しました。

IMGP7799

20Wレンジ 1Wに調整しました。


IMGP7800

HFの調整。

20Wレンジ 10Wに調整しました。

IMGP7808

200Wレンジ 10Wに調整しました。


IMGP7803

FT-897 100Wでは、


IMGP7812

200Wレンジ 100Wを指示することを確認しました。


IMGP7816

SWRの調整。

SWRが2,0になる100Ωのダミーロードです。

1kΩ3Wの抵抗 10本並列で100Ω

IMGP7817

キャリブレーション。


IMGP7813

SWR 2,0に調整しました。


IMGP7814

アマチュア的に調整したものにすぎません。

HFまでを限定とするなら、自作機器でも十分基準にできるのではないかと思います。

IMGP7831

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今回の自作機器作成につき、テスト実施中の未公開画像があるので
追加記事にします。

YAESU FT-817

1Wの設定です。

IMGP7845

この配線図をブレッドボードに仮組みしました。


パワー計較正器計算式

配線図どおりの部品配置ですが、コンデンサーのみ0,1uFになっています。

7,10Mhz FM波形を取出したところ。

IMGP7837

オシロスコープ 7,10Mhzの波形。


IMGP7838

交流の半波整流とは。

ダイオードで整流されて上側半分だけの出力となる。

出力は直流(脈流)です。

M

ダイオードの次にあるコンデンサーで脈流が平滑されて、直流らしい波形となる。
コンデンサインプット半波整流。

50Ωの抵抗の両端にかかる電圧を取り出す。

負荷抵抗50Ωと直列抵抗1kΩの関係や、CRの時定数などから交流の最大値の電圧が出力される。

IMGP7842

交流の最大値 Em 電圧とは

0からヤマの天辺までの電圧

max_graph

50Ωの抵抗の両端にかかる出力1Wの電圧は10V(最大値)となる。

計算式 P=√(PR)・√2

10V=√(1W×50Ω)×1,41

脈流(リプル成分)無しの直流10Vです。

IMGP7839

テスターで測定した状況。


IMGP7843

コンデンサーと抵抗を取り去り、ダイオードだけにしたらどうなるか。

電圧は矢印の場所から取出します。

7626f139

コンデンサーと抵抗を外した状況。


IMGP7840

変化は感じられませんでした。

10Vです。

脈流はあるのでしょうが、7Mhzという高い周波数ではズーッとつながった直線に見えるというわけです。

ダイオードだけでも良くないでしょうか?? 頭では考えたものの、結果はこんなもんです。

半波整流の実効値 Vm/2=0,5Vm  
全波整流の実効値 Vm/√2=0,707Vm 

自作機器のように平滑コンデンサーがある場合の無負荷電圧は、交流のほぼ最大値となり、半波整流と全波整流では無負荷時の出力にはほとんど差はありません。

計算式は全波整流で求めます。

IMGP7841

10,9Vにて計算をします。

E=e/√2
E=10,9÷1,41
E=7,73

P=E²/R (Rの値は50Ω)
P=7,73×7,73÷50  
P=1,19

1,19W

となりました。

無線機にはパワー調整用のVRがあります。

Screenshot from 2022-10-04 00-12-31

無線機を10Wに調整したい場合はテスターの電圧が31Vになるようにパワー調整をします。

P=√(PR)・√2
31V=√(10W×50Ω)・√2

10Wの値を20Wなどに当てはめてゆけば電圧が求まります。
50Wに調整するなら70Vです。
しかし、ダイオードが壊れます。

70V=√(50×50)・√2

ダイオードほか、部品の耐圧には注意が必要です。

IMGP7818

10Wまでなら較正できると思いますが、無線機を正しい10Wになるように調整したら、パワーメーターが10Wを指示するように較正してください。

200Wレンジでも10Wを指示するように調整すれば100Wでの測定もOKです。

IMGP7847

高周波エネルギーから直流を取り出したわけです。

はじめから直流で較正すれば良いと思いますよね。

われわれが使う安定化電源の13,8Vはどうでしょうか。

E=e/√2
E=13,8÷1,41
E=9,78

P=E²/R 
P=9,78×9,78÷50  
P=1,91W

IMGP7848

1,9Wまでの調整ならできそうです。

パワーメーターのセンサー部分から入れてみてはどうでしょうか。。。

精密機器なので、やめておきました。

IMGP7846

QRPパワーメーターの較正ならできます。

過去記事の事例です。

http://jr2jhg.livedoor.blog/archives/916898.html


「較正」と「校正」の違い。

法律の上では「較正」は電波法に基づくもの、「校正」は計量法に基づくもので、「較正」は測定器の調整を含みますが「校正」は調整を含みません。
「校正」は、測定器が示した値と正しい値(標準器)との差分を証明書に示すことであると決められています。

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