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feed 【読み解き】「ワイヤレス人材育成のためのアマチュア無線の活用等に係る制度改正」2023年3月施行部分(その2) (2023/3/6 23:11:27)

その1 の続きです。2023年3月施行部分のうち、一般アマチュア無線家に特に関係しそうな項目を読み解きます。

ワイヤレス人材育成のためのアマチュア無線の活用等に係る制度改正案 (要旨)  より

体験運用の全面解禁(続)

昨年11月のJARL理事会で、安孫子理事が、体験運用をJARLとして推し進めるために、「体験局・ニューカマー支援委員会」の設立を提案しましたが、髙尾会長が「(尾形理事が委員長を務める)会員増強組織強化委員会が準備する」と発言、10名の理事を巻き込んで、新委員会の設置を否決したという事件がありました( 反対した10名の理事の氏名はこちら )。

その後、 2月25・26日の理事会の報告が公表 されたのですが、田中理事からの提案の箇所にこう書かれています(10頁)。

JARL第64回理事会報告 (会員のみ閲覧可) (10頁)より

髙尾会長も尾形委員長も「宿題やってきませんでした」「3月の施行には間に合いませんでした」ということだそうです。。。

2020年、髙尾会長は、総務省に「アマチュア無線の社会貢献活動での活用についてのマニュアル」の作成を約束しながら、 2021年3月の施行までに間に合わず、電波監理審議会の委員の先生から苦言を呈されたことがあります (実際にマニュアルが公表されたのは9月でした。)。

昨年11月に「体験局・ニューカマー支援委員会」が設置されていれば、体験運用のマニュアル等々、もうとっくに準備はできていたことと思います。髙尾会長、尾形理事は、新委員会を否決しておきながら、また同じく、「宿題間に合いませんでした」をやったということです。自分でできないなら、他の人の協力を求めるのが組織のトップとしてあるべき姿でしょう。なぜこんなことをしてしまうのでしょうか。

記念局

「行事等の開催に伴い臨時かつ一時の目的のために運用するアマチュア局」要するにいわゆる記念局のことです。ここは残念ながら規制強化です。

改正前 改正後
(1) 行事等は、国、地方公共団体又は 公益的団体 が主催、後援、協賛等をしているものであること。 (1) 行事等は、次に掲げるものであること。また、当該行事等の主催者、後援をする者又は協賛等をする者は、それぞれ当該行事等を主催、後援、協賛等するものとして適切なものであること。

ア 国、独立行政法人、地方公共団体(教育委員会を含む。)、 連盟、公益社団法人若しくは公益財団法人又はその他これらに準ずると総務大臣又は総合通信局長が認めるもの が、主催、後援、協賛等をしているもの

イ  学校教育法第1条の学校 が、当該学校の行事として主催等しているもの。ただし、本規定によるアマチュア局の運用は、当該アマチュア局の構成員のうち当該学校の児童、生徒及び学生並びに教職員(施行規則第34条の10 に基づくアマチュア無線の体験運用の体験運用者にあっては、当該学校及び当該学校以外の児童、生徒及び学生並びに教職員を含む。)に限る。
「公益的団体」の範囲を明確化したいということなのでしょうが、「総務大臣又は総通が認めるもの」を厳しく判定すると、記念局の開設が大きく制約されることになります。今後、例えば JARDやNPO法人は、行事の主催者/後援者/共催者として認められるでしょうか。

「学校」が明示されたのは、パブコメでの意見を受けてのことです。一見よさそうに見えますが、「ただし」書きが大問題です。運用者が、その学校の児童生徒学生と教職員(と体験者)に限定されてしまっています。 今後は、OB/OGや保護者や地元クラブ員は「学校記念局」を運用できないことになりそうです。

⇒学校記念局における体験運用者も、児童生徒学生と教職員に限られるようです。

カッコ内の日本語がちょっとおかしいのですが、おそらく「・・・体験運用者にあっては、当該学校及び当該学校以外【の学校】の児童、生徒及び学生並びに教職員を含む。
」という意味でしょう。
(2) 行事等の趣旨・内容等は、政治的又は宗教的なものではなく、相当の公共性を有するものであること。 (2) 行事等の趣旨・内容等は、政治的又は宗教的なものではなく、相当の公共性を有するものであること。 また、特定の関係者だけでなく、地域や社会全体に社会的利益をもたらすものであること。
⇒「また」以下が追加されたことで、今後は、記念局の開設が大きく制約されそうです。以下の総務省の回答が非常に気になります。

『改正案は、「相当の公共性」があるものを明確にしたものであり、審査基準の各要件に適合したものについて、いわゆる記念局として呼出符号の変更を認めるものであり、 従前、認められてきたものであっても、認められない可能性はあります。 改正後は、適切な制度運用に努めてまいります。』

なお、一般に、一民間企業の行事等について特別な呼出符号を認めることは難しいと思われますが 、総合通信局等に対して、審査基準に適合することについて、詳細な説明や資料の提出をお願いします。』
(3) 当該アマチュア局を運用することにより、行事等を記念すること及びその意義を広めることができるものであって、かつ、アマチュア無線に対する理解の増進、アマチュア無線の健全な普及、発展等に寄与できるものであること。 (変わらず)
(新設) (4) 当該アマチュア局の運用について、主催者や免許人等が、 インターネットの利用その他の方法により、広く一般に周知広報 を行うものであること。
⇒これまでも、多くの記念局が、特設サイトを作ったり、行事サイトやクラブサイトの中に特設ページを作っていました。今後はこれが半ば義務化されるということですね。
(新設) (5) 当該アマチュア局の運用について、その期間中、積極的な運用が行われるものであり、かつ、 公開運用又は 施行規則第34条の10に基づくアマチュア無線の 体験運用 を行うものであること。
⇒クラブメンバーのシャックからの持ち回り運用だけでなく、公開運用や体験運用をするよう求められています (この意味でも「体験運用マニュアル」は重要なのに・・) 。パブコメで総務省から以下の回答がありました。

『また、公開運用【又は】体験運用の要件については、いわゆる記念局の運用中全ての時間を条件としているものではなく、相当の時間についてこれらを行っていただくというものです。 公開運用や体験運用は、特定の関係者だけでなく、地域や社会全体に、直接目に見える形で、行事等を記念すること及びその意義を広めるとともに、かつ、アマチュア無線に対する理解の増進、アマチュア無線の健全な普及、発展等にも貢献する効果が高いと考えられることから 、相当の公共性を有するものとして必要な条件と考えます。』
(4) 申請者は、連盟又はアマチュア業務の健全な普及発展を図ることを目的とする社団であって、行事等に密接な関係があるものであること。 (6)
(項番号変更。内容は変わらず)
(5) 申請者が当該アマチュア局を運用することにより当該行事等を記念すること及びその意義を広めることについて、行事等の主催者から了解を得ていることが確認できるものであること。 (7)
(項番号変更。内容は変わらず)
(6) その運用期間は、行事等の開催期間からみて適当なものであること。 (6) 当該アマチュア局の運用期間は、行事等の開催期間からみて必要かつ適当な最短期間とし、 かつ、1年以内とすること
⇒今までも、1年を超える記念局はほとんどなかったと思います。
(7) アマチュア局を行事等の開催地内に設置する場合は、当該行事等の主催者からの同意を得ていることが確認できるものであり、必要に応じて書類によりその旨が確認できるものであること。 (9) アマチュア局を行事等の開催地内に設置する場合は、当該行事等の主催者からの同意を得ていることが確認できるものであること。
⇒設置についての主催者の同意は、紙でなくても良くなりました。わずかに規制緩和。
(新設) (10) 運用計画書等の書類により、運用スケジュール、運用体制及び上記のすべての事項について確認ができるものであること。
⇒今までも「運用計画書」の提出が求められていました。それが明文化されたということです。

「同一構内」の遠隔操作

アマチュア局の遠隔操作を行うときは、無線局工事事項書及び工事設計書(無線局免許手続規則別表第二号の三第3に定める書式)(の備考欄)に、どういうしくみで遠隔操作を行うか記載する必要があります。

今まではどんなケースでも、例えば、同じ部屋のあっちに無線機を置きこっちのPCから遠隔操作をするとか、はたまたBluetoothでマイクをつなげるときにまで、遠隔操作の届出をしなければならないと言われていました。さすがにそれは面倒ということで、今後は、「同一構内」の場合は遠隔操作にあたらない(届出不要)扱いになります。

ただし、電波の送信の地点は「設置場所又は常置場所」である必要があり、遠隔操作する場所は電波の送信所と「同一の構内」でないといけないとされているので、結局のところ 「設置場所又は常置場所」内で遠隔操作する場合に限り、届出不要 となっただけです。

パブコメで、「設置場所又は常置場所」の要件はいらないのでは、近距離であれば認めても良いのでは、との意見が出されていましたが、総務省からは「免許人の所有又は管理できない場所を含む場合は、免許人以外の者が無線設備をみだりに取り扱うことのないよう措置するなど無線局の適正な運用の確保について免許人により適切な監督を行うことが困難であり、認められないと考えます。」との答えでした。

別荘に固定局を開局せず移動局の常置場所も置いていない場合は、別荘内で遠隔操作する場合であっても今回の改正の恩恵にはあずかれず、届出が必要になります。そしてその届出において、他人が勝手に入って無線機をいじったりしないように措置されているか等々をきちんと書く必要がでてきそうです。

なお、今回の改正と関係ありませんが、電波が出っぱなしになってしまったときの停止措置について、無線局関係審査基準とJARLの指針に、以下のような差があります。

電波法関係審査基準 JARL指針
電波が連続的に発射し、停波しなくなる等の障害が発生したときから3時間以内において速やかに電波の発射を 停止できることが確保されている ものであって、その具体的方法が確認できるものであること。 ・・・これは、遠隔操作設備を含め障害が発生した場合、3時間以内に 無線設備に駆け付け 速やかに対応できることが確保されている必要があります。

JARLの指針は「3時間以内に無線設備に駆け付け」られなければならない(=移動時間3時間を超える遠隔操作は不可)としています。

ですが、審査基準上は「停止できることが確保されている」としか書かれていないので、無線機に備え付けられている送信停止タイマーや、安定化電源がつながっているコンセントをネット越しに遮断できる装置等でも要件を満たすはずであり(むしろその方が、早く電波を止められるでしょう。)、移動時間3時間を超える遠隔地に対する遠隔操作も認められるように読めます。

JARLの指針は2003年に作られた古いものであるにしても、実際にリグがある場所まで「駆け付け」なければならないとしている点には、自ら首を絞めているようで、疑問があります。

以下、(その3)に続きます。。

(2023-03-06 記)


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