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feed QSLビューロー問題と電子QSLについて (2023/8/15 8:14:08)

2023年7月29日に開催され たJ ARL第68回理事会報告 が、QSLビューローや電子QSLについて触れていることが、波紋を広げ、誤解や憶測を招いているようです。私が知っている事実関係を整理しておきます。

「電子QSL委員会」の報告は最終決定ではない

理事会報告に添付されている各委員会からの2022年度の活動報告の中に、電子QSL委員会の報告書が含まれています(委員長:JF0JYR髙橋哲也理事)。

第68回理事会報告より

報告書の中に出てくる「第49回理事会に答申した電子QSL案」とは、QSL画像データをサーバーにアップし相手局がそれをダウンロードするだけの、単なる「画像アップローダー」でした(参照: 2020年2月11日付け記事『JARLの「QSL画像あぷろだ」計画』 )。これに初期費用1500万以上・運用費年500万弱をかけるというのです。 2022年2月22/23日の理事会で否決された のも当然のことだったといえましょう。

Turbo HAMLOGの作者として著名なJG1MOU浜田氏は、2015年から電子QSL委員会の委員でいらっしゃいましたが、遅々として進まない委員会に呆れられたのでしょう、2020年限りで委員を退任されました。そして、 その年の4月16日には「HAMLOG専用の電子QSL構想」を公表 され、4月19日には「HAMLOG E-Mail QSL」の最初のバージョンを公開されています。迅速な開発でした。

(余談ですが、私は2019年12月、浜田さんに対し「委員会の電子QSL仕様案のようにサーバーを経由しなくても、ユーザーのPCで生成した電子QSLを直接メールで送信する仕組みをHamlogに組み込めないでしょうか?」とご提案したことがありました。浜田さんは、もちろんその時点ですでにそのような仕組みを考えついていらっしゃいました。JARLの委員としてのお立場から、開発着手を控えていらしたものと想像しています。)

その後、浜田氏は、アップデートを重ねられ、3年の間に、 2023年6月の送信件数は22万枚以上、ユーザー数は4000局を超えるシステム に育てられたのです。

他方、残された電子QSL委員会の委員たちは、同じ3年の間に「電子QSLの全体像・仕様について」議論?するばかりで、理事会への答申もありませんでした。今回の報告書は、松田理事の督促( 第67回理事会第3号議題参照 )を受けて、慌てて作って理事会に提出したものです。

意見書に『「hQSL」が公開されて以来 観察を続けてきた が、 当委員会が当初から検討してきたものと極めて近い形で 交換の仕組みが実現された』とありますが、自分たちが実現できなかったことをひとりで実現された浜田氏に対し、何という”上から目線”でしょうか。浜田氏は紳士であり決して怒られませんが、あまりにも失礼ではないでしょうか。

意見書の末尾に、「JARL での電子QSL 交換システムの開発を断念し、「hQSL」を支援していく方向性に転換していくこと、JARL として「hQSL」の利用を推薦・推奨していくことにしたい。」とあることが、波紋を広げています。

ですが、委員会は、あくまで理事会を補佐する機関であり(定款第66条)、その意見は、理事会で承認されて初めてJARLの正式決定になります。この意見書は、理事会の承認を得ていません。したがって、 「hQSL」の利用を推薦・推奨するという点は、JARLとして正式決定されたものではありません

「電子QSL委員会」は廃止された


ましてや、第68回理事会の第2号議題で、遅々として議論がすすまない「電子QSL委員会」は廃止され、新たに「QSL問題対策委員会」を設置することが決議されています。

新たに設置されたQSL問題対策委員会は、JARLとして電子QSLをどうするかだけでなく、ビューローの遅延問題もあわせて議論することになっています。 したがって、電子QSL委員会の報告内容も、QSL問題対策委員会で見直されることになるでしょう。

以上について、JA1BJTさんが、的確なYouTube動画にまとめてくださっています。

【雑談】JARL 電子QSLどうなる? 電子QSL委員会廃止 開発断念 hQSL推奨? うわさを信じちゃいけないよ 2023/08/05 アマチュア無線 VLOG 304
https://youtu.be/783ujTI44vg

ビューローの「追加」など議論されていない

もうひとつ、なぜか、ビューローが「追加」されるといっている人がいますが、そのようなことは理事会で全く議論されていません。仮にビューローがふたつに増えたら、会員はどちらにカードを送ればよいのでしょうか。会員側もビューロー側も二度手間になり混乱するだけだと思います。

第68回理事会で議論されたのは、QSLカードの配送が大幅に遅延している問題を解消するために、「転送作業の一部を今のビューロー受託会社からさらに外部に委託すること」の是非です。ビューローの「追加」ではありません。

第68回理事会報告より抜粋

理事会報告には詳細が書かれていませんが、こういうことだそうです。つまり、今のビューロー受託会社では、受け取ったカードをまずは大きな単位に分け(エリアごと、あるいはプリフィックスごとでしょうか?)、次いで詳細に分けていく(おそらくサフィックスごと?)という二段階の仕分け作業を行っているそうです。このうち、カードを大きな単位に分ける作業であれば熟練工でなくてもできるので、ビューロー受託会社の外に新たに場所を借り、追加の人を雇って、滞留しているカードを大きな単位に分ける作業だけをやってもらうという構想とのことです。

悪くないアイデアだと思うのですが、問題は期間と費用です。 滞留した膨大な枚数のカードをさばくには少なくとも1年くらい必要で、そのための追加費用は3千万円ほどかかる試算とのことです 。理事会では、3千万をかけるメリットがあるのか、今後会員からビューローに届くカードの枚数を絞ってもらうことでビューローの処理能力の余力を生みだし、その余力で倉庫に滞留しているカードを処理していくことも考えられるのではないか、等々の意見がでて、継続協議になったそうです。

当然の議論でしょう。今後、 新たに設置される「QSL問題対策委員会」で、ビューローの負担軽減策も含め、総合的に議論していただきたい ものです。

なお、今回議論された「転送作業の一部の外部委託」は髙尾前会長の功績であり森田新会長の功績ではないと主張する人がいるようです。ですが、カード転送の遅延はもう何年も前から指摘されてきたのに、前会長はこれを放置し、カード削減の呼びかけも拒否してきました。その結果、JARLは滞留したカードを保管する倉庫を借り増しせざるをえなくなったのです(当然追加費用が発生しています。)。止むに止まれぬ状況に追い込まれた前会長は、ようやく事務局に外部委託の検討を許しましたが、その途中で会長辞任届を出して放り出したのです。森田氏が新会長に就任された時点で、外部委託をした場合の総経費の試算もできていませんでした。7月の理事会の直前になって3千万円もかかると判明したというのが事の経緯です。これをもって、どこが髙尾前会長の功績などといえるのでしょうか。

問題整理と私案(試案)

さて、以下はあくまで私の個人的な分析です。

まず、問題を整理してみましょう。

  1. 財政改善のために
    JARLの年間予算4億円のうち、紙カードの転送に7700万円もかかっています。7700万の内訳は、委託会社への委託料5500万+ビューローから会員への送料約2200万です。JARL全体の収支均衡を実現しビューローとJARLそのものを存続させるために、紙カード転送費用の「見直し」が必須です。
  2. 大量の滞留カードとその処理にかかる費用
    会員からビューローに送られるカードの枚数(一説には月に90万から100万枚)がビューローの処理枚数(約80万枚)を上回っているために、相当な枚数のカードが倉庫に滞留しており、余分な倉庫料が継続的にかかっています。滞留しているカードを急ぎ処理しようとすると、上記のとおりさらに数千万単位の追加費用が必要になります。これでいったん滞留分を処理できたとしても、ビューローに送られる枚数の超過が解消されなければ、数年後にはまた追加費用が必要になってしまいます。
  3. カード転送にかかる時間
    以前は、ビューローに到着したカードは3ヶ月ほどで転送されていたのに、今では10ヶ月から1年かかっているといわれています。そのため、期間限定のアワード(例:東京都支部50周年記念アワード)等の運営に支障を来しています。また、せっかく入会してくれた新会員は、1年経ってもカードがほとんど送られてこないという悲惨な状況が生まれています。
  4. 利用枚数の不均衡
    今は、年に数枚しかカード転送サービスを利用しない人も、数千から数万枚のカードを送る人も、7200円という同一の会費です。これは不公平であるという指摘もあります(バンドを活性化している人にメリットを、という声もありますが、バンドの活性化とカードの大量発行は、必ずしも直結しないように思えます。)。
  5. 電子QSLシステム
    紙カードを減らすために電子QSLを推進すべきであるという意見がありますが、既存の電子QSLシステムはどれも一長一短があります。かといってJARLが独自に電子QSLを今から構築するのは、もう時機を逸したように思います。ユーザーから見ても、ログのアップロード先がまたひとつ増えるのは面倒でしょう。
  6. 電子QSLと紙カードの重複
    電子QSLを送りさらに紙カードを送っていては、結局紙カードは減りません。
  7. IARUの要請
    実は IARUが、各連盟に対し、紙カードの削減を呼びかけているのです。

複数の問題が絡み合っていて複雑です。対策としては、例えば以下のように考えられるのではないでしょうか。

(1)JARLから会員に対し、紙カードの枚数削減を呼びかける。

  • 1枚のカードに複数のQSOを記載することを呼びかける。
  • 電子QSLを送ったら、紙カードは送らない (特にFT8)ことを呼びかける。
  • 同じ相手との交信については1枚(バンド・モードごとに1枚)にすることを呼びかける。
  • コンテストの全QSOにつき紙カードを送るのは避けることを呼びかける。
  • そもそも、カードの交換はQSOに必須ではないことを呼びかける。
  • ★あくまで「無駄な」カードの削減。必要なカード(アワードのため等)の発行まで抑制するものではないことを明示する。

(2) Turbo Hamlogを使っている人に 、hQSLの利用を呼びかける。

  • JAで大きなシェアを占めているHamlogのユーザーがhQSLを利用するようになれば、ビューローに送られるカードの枚数は相当減ることが期待される。
  • JARLが会員向けの電子メールサーバーを構築し、hQSLの転送メールサーバーに指定してもらうことも考えられる(会員つなぎ止め策にもなる。)。
  • あくまで、Hamlogを使っているユーザーへの呼びかけ 。他のログソフトを使っている人にHamlog/hQSLへの移行を求めるものではないことを明示する。

(3)hQSLに、adifのインポート機能と、既存の電子QSLへのログアップロード機能を追加する

  • hQSLにADIFのインポート機能があれば、他のログソフトを使っている人も、電子メールによる電子QSLの送信機能を利用できるようになる。
  • 電子QSLが普及しないのは、既存の電子QSLにログをアップするのに手間がかかるからである。そこで、 既存の複数の電子QSLにログをアップする機能をhQSLに追加する。 すでに世の中にはいくつかのログアップロードソフトが存在する( thw2LogBook など)ので、技術的には可能なはずである。ただし、自局運用地(市区郡とGL)によってアップロードするアカウントを使い分けられるようにする等、細部を詰める必要がある。
  • また、Turbo HAMLOG自身に自局移動地を入力する欄がないため、移動先からの運用のログも常置場所からの運用ログとしてアップロードしてしまう局が多い。アワードに使えるログデータにするためのHAMLOGの改良が必要。
  • ソフトの改良をどういう体制でやるか?⇒JARLが委員会(分科会)をつくり、浜田氏の協力を得る。JARL公式の”hQSL互換ソフト”やログソフトそのものを開発することも考えられる。
  • JARL公式のソフトは、JARL会員は無料で利用可、非会員も有償で利用可とすれば、JARL会員増強と増収策になる。英語版も作れば世界中で利用されるかもしれない?

(4)電子QSLとJARLのアワード

  • そもそも、JARLのアワードのために「QSOデータのマッチング」は本当に必要なのか(紙QSLでは”片方向のマッチング”しか行われていないのに、なぜデータとなると”双方向のマッチング”が必要というのか。)。
  • もし電子QSLデータのマッチングが必要、となった場合、JARLが自前のQSOデータマッチングシステムを作る必要が本当にあるのか。既存の電子QSL(どれ?おそらくLoTWか)に任せ、JARL独自のマッチングシステムは作らなくてもかまわないのではないか(その方が、ログのアップ先が増えず、ユーザーにとってもありがたい。)。JARLとして独自の電子QSLの構築を諦めるとした旧「電子QSL委員会」の意見は承継するのでよいのではないか。
  • つまり、LoTWは、JCC/JCG/AJAの運用地別にログをアップロードできる機能を既に持っているので、AJD/JCC/JCG/AJA等のアワードをLoTWから申請できるようにさせてもらう。ARRLに支払う利用料の交渉が必要だが、特に海外からのアワード申請の増加(増収)が期待できる(珍市区郡のJA局が海外からバンバン呼ばれるようになるかもしれない?)。
  • もっとも相手のあること。ARRLがLoTWのサーバー上にJARLアワードの構築を許してくれるかどうか、費用面で折り合えるかはわからない。もしそれがむりであれば、LoTWのデータを読み出してアワード計算だけ行うサーバーをJARLで構築することはどうか。このほうが、新しいアワード(Challenge AJAのようなもの)を始めるのにも便利かもしれない(ただしユーザーの使い勝手と費用対効果の検証が必須。アカウントは共通にできるか等。)。
  • JARL独自のログマッチングシステムを持つべきという意見もある。最初は両論併記とし、委員会で綿密な調査・検討、ARRLとの交渉が必要。
  • なお、現在、 ARRLにおいてLoTWの全面リプレースの検討が進行中 であり、動向に注意する。

(5)ビューローの従量料金制?

  • 以上の対策の結果、ビューローに流入するカードの枚数が激減すれば(例えば今の半分)、ビューローに従量料金制は導入しなくてもよいかもしれない(従量料金制を避けるためにカードを減らしてほしいと呼びかける?)。カードの枚数が減っても、従量料金は導入するという考え方もあり得る。
  • 従量制を導入する場合は、会員がビューローに送る方に追加料金をかけるべきと思われる(会員がビューローから受け取る方に追加料金をかけても、受け取りを拒否されれば追加料金を回収できない。ビューローへの過大な負担を減らすためには、ビューローに送る方に負荷をかけて枚数を減らさないといけない。)。
  • 以前のステッカー方式ではなく、①ある一定の枚数以上については追加料金を支払ったことを示す証票(振込受付票)を同封しなければ転送作業に入らないことにする、②100枚入る封筒を販売しそれ以外では受け付けないといった策が考えられる。

(6)ビューローの存続?

  • 毎月80万枚を処理できる業者は、20年以上のノウハウがある今の委託先以外に考えにくい(「ビューローをアマチュア無線家のボランティアで」という意見も聞くが、JAの枚数を処理するのは到底無理と思われる。)。万が一今の委託先が事業を停止した場合、毎月80万枚を処理できる業者を探すのはほぼ不可能だが、例えば毎月30万枚であれば、引き受けてくれる業者が見つかる可能性が出てくると思われる。
  • 紙カード仕分けの機械化は、既に過去に検討し断念したとされる。転送先コールサインの読み取り技術は進化したかもしれないが、JARL会員6万局分にカードを仕分ける機械(ソーター)の技術は進化しただろうか。そもそもそのような巨大な機械を置くスペースは確保できるのか。開発費用等も考えると、ビューローの機械化はもはや非現実的と思われる。

(7)カードが減ると会員が減る?

  • 受け取るカードが1枚でもある限り、多くの会員は退会しないのではないか。言い換えれば、会員が会員であり続けるために、ビューローが存在することは必要だが、ビューローから送られてくるカードの枚数が大量である必要はない。
  • 「JARLの価値はカード転送以外ない」という意見も耳にするが、JARLがなければ、ハムフェアもコンテストもアワードも、各地のイベントも存在しない。総務省や各総通と交渉する主体もなくなる。JARLの価値をあまりにも矮小化した意見だと思う。もちろん、JARL自身が、カード転送サービス以外の会員にとっての価値・魅力を持ち、増やしていかなければならない。

森田新会長のご意見

JARL森田新会長が、ラジオ番組「ハムのラジオ」の第554回で、「今後JARLがやるべきこと」を語っていらっしゃいます 。ビューロー問題、電子QSL問題についても語っていらっしゃいますので、ぜひお聴き下さい。

脚注)この記事は、森田会長他複数の理事や浜田氏にも見て頂いておりますが、前半の内容の正確性や後半の私見に関する責任は、すべて7K1BIB山内にあります。

(2023-08-15 記)


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