無線ブログ集
メイン | 簡易ヘッドライン |
リンク 単体表示
7K1BIB/AC1AMの業務日誌 (2024/11/22 7:05:52)
現在データベースには 149 件のデータが登録されています。
2024年11月3日(日)から8日(金)まで、タイの首都バンコクにて、第19回IARU(International Amateur Radio Union・国際アマチュア無線連合)第3地域(Region 3=アジア及び太平洋地域)総会が開催されました。
JARLからは、森田会長、国際問題検討委員会委員の福島さん、朝生さん、私が代表団として参加しました。また、IARU側の日本人として、IARU-R3の理事である山本さん(JARL国際課長)、事務局長の内山さんも参加されました。
出席することになった経緯
JARLには、理事を補佐する機関として「委員会」があります(定款第66条)。前会長(JG1KTC髙尾氏)の時代は、各委員会の活動状況は会員はおろか理事会にも十分に報告されないなど、理事会と各委員会の関係は希薄でした。委員会のひとつである国際問題検討委員会も、理事会(髙尾前会長)から関心を持たれていない、と感じていらしたようです。
昨年6月にJA5SUD森田会長に交代してからは、各委員会の年間活動報告書が作成・公表されるなど、理事会(会長)と各委員会の関係は徐々に緊密になってきています。そのような関係改善の中で、国際問題検討委員会から森田会長に対し、理事会から1名参加してほしい、との要請があったそうです。私は2024年6月からJARLの常務理事(総務担当)を務めていることもあり、国際問題検討委員会の委員も兼任することになりました。
国際問題検討委員会の重要な役割のひとつとして、IARU第3地域というアマチュア無線関係の国際組織での活動が挙げられます。今年は、3年に一度のIARU第3地域総会の開催年です。なんと偶然にも、IARU第3地域総会が開催される同じ週に、バンコクで本業の用件(所属法律事務所のバンコク支店の10周年記念パーティ)があり、JARLに旅費交通費の負担をそれほどかけずに(ホテル代のみで)IARU第3地域総会に参加できることがわかりました。森田会長にご相談し、私もJARL代表団の末席に加えて頂けることになったのです。
事前準備
2024年7月9日、WIA(Wireless Institute of Australia)のウェブサイトに、IARU第3地域バンドプラン委員会による40mバンドプランの統一に関する文書が掲載され、各国連盟から意見募集がなされるとの記事が掲載されました( https://www.wia.org.au/newsevents/news/2024/20240709-1/index.php )。私はこの情報をいち早くつかみ、7月27日のJARL理事会( https://www.jarl.com/Page/Login/Login.aspx?Url=rijikai/74rijikai.pdf )で、JARLとしての意見をとりまとめるために、理事会から国際問題検討委員会、周波数委員会、コンテスト委員会に諮問を行い、また一般から広く意見募集することを提案し、ご承認いただきました。各委員会の答申と一般アマチュア無線家からの意見を踏まえたJARLとしての意見は、8月31日のオンライン臨時理事会で承認され( https://www.jarl.com/Page/Login/Login.aspx?Url=rijikai/75rijikai.pdf )、締切りの9月6日までに、IARU第3地域バンドプラン委員会に提出されました。
10月4日には、IARU第3地域バンドプラン委員会による修正提案がWIAのウェブサイトに公表されました( https://www.wia.org.au/newsevents/news/2024/20241004-1/index.php )。これは、10月8日の国際問題検討委員会で検討され、概ね賛成できるとの意見でまとまったため、その他の論点についてのJARLとしての対応も含め、国際問題検討委員会の議論の結果を理事会に報告し、また事務局を通じて周波数委員会及びコンテスト委員会に報告し、追加の意見がないか確認を求めました。
これまでは、IARU第3地域総会におけるJARLの対応方針は、国際問題検討委員会の中で決定され、理事会の関与はなかったようです。私は、JARL常務理事(総務担当)として、ガバナンスとコンプライアンスの観点から、できるだけ理事会を含む関係者の意見を取り入れ、了承がえられるように尽力しました。
IARU第3地域総会関係資料
IARU第3地域総会の特設ウェブサイトが用意されており、
https://www.iarur3conf2024.net/home
会議資料はすべて公開されています。さながら、ITU等の国際会議のようです。
https://www.iarur3conf2024.net/document
各Documentsのリストの右上にマウスポインタを持っていくと右上向きの矢印のアイコンが現れるので、そこをクリックするとGoogle Driveが開き、ファイルを一度にダウンロードすることができます。
第0日目:11月3日(日)
深夜0時20分羽田発のタイ航空便でバンコク入りし、空港で森田会長と合流した後、ホテルに向かいました。森田会長と「超からい」タイ料理を食べた後、時間が空いたので、私は近くの電器関係のショッピングモールを見分しました。
夜19時から、各国連盟代表者による準備会合に同席しました。議長は、IARU第3地域事務局長のJH1NBN 内山さん(JARL国際問題検討委員会委員)でした。森田会長は、「The Credentials and Elections Committee(信任状および選挙管理委員会)」の委員としてJARLからJH6RTO福島さん(JARL国際問題検討委員会委員)を推薦すると発言されました。
日本のアマチュア無線家の方々に少しでも総会の雰囲気をお伝えできるように、期間中、現地からのX(旧Twitter)への投稿をできるだけマメに行なうようにしました。
第0日目の様子は、下記のTwitterへの投稿まとめをご覧下さい。
https://twilog.togetter.com/7K1BIB/date-241103?order=allasc
第1日目:11月4日(月)
午前中は、VIPを迎えての開会式でした。
ご来賓として、Asia-Pacific Telecommunity(APT・アジア・太平洋電気通信共同体) のSecretary(事務局長)である近藤勝則氏( https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press7_000217.html )がいらしており、ご挨拶することができました。国際的に活躍されている日本人がここにもいらっしゃることを誇りに思いました。
お昼休みに、総会開催を記念する記念局「HS19IARU」のリモート運用室を訪問し、運用させていただきました。コンディションはあまり良くなかったのですが、JAの1局とQSOできました。
午後はPlenary Session(全体会合)が行なわれ、IARU-R3のConstitution(第3地域憲章)の改正が審議されました。改正案は、①第1地域及び第2地域と同じようにPresidentとVice Presidentを置くこととし、各国連盟の直接選挙により選ぶこと、②Secretary(事務局長)の役割からTreasurer(会計)を分離すること、③SecretaryとTreasurerも、理事会の投票権あるメンバーとすること、④各国連盟は2名以上の理事会メンバーを出せないとの制限を設けること、を内容とするものでした。
改正の目玉である①はJARLにとって大きな問題はありませんが、②③④が問題です。というのは、JARLからは伝統的に、理事1名と事務局長の2名がIARU第3地域の運営に参加してきたのですが、もし改正案がそのまま通ってしまうと、IARU-R3の銀行口座が日本にあることから、JARLとしてはTreasurer(会計)しか出すことができなくなり、第3地域最大の連盟であるにもかかわらず、プレゼンスが極めて小さくなってしまうことになりかねないからです。そこで、JARLとしては②③④に反対する論陣を張ることになり、私が会議でそのように発言する重役を担うことになっていました。
初参加の会合で、しかも英語で・・と緊張しましたが、予定通り意見を述べたところ、IARUにおけるJARLの役割・立ち位置はとても高く評価されているのでしょう、JARLの修正提案は、ありがたいことにすんなり採択されました。これで、従来通り、JARLから事務局長と1名の理事を出す権益を確保することができたことになります。私も役目を果たすことができました。
夜のディナーのスポンサーは、ICOMタイランドでした。ありがたいことです。
第1日目のTwitter投稿まとめ
https://twilog.togetter.com/7K1BIB/date-241104?order=allasc
第2日目:11月5日(火)
分科会会合が行われ、WG1ではR3の全体方針に関する事項が、WG2では運用および技術に関する事項が審議されました。私は、WG2に参加しました。WG2の議長は、JA1BJI朝生さんが務められました。
議論の中心は、40mバンドプランの改正についてでした。バンドプラン委員会委員長がリモート参加だったこともあり審議に時間がかかりました。バンドプラン委員会委員長からは、意見を出した連盟は少なく、もっと意見が欲しかったとの苦言もありました。
JARLとしての意見は事前に用意していたのですが、昼休みに、意見は口頭ではなく文書で提出した方が良いということになり、私が急いで意見書案を作り、JARL代表団のご了承を得て、IARU第3地域事務局に提出しました。
午後になり議論が再開すると、バンドプラン委員会委員長から、今総会では基本的な事項を決議するに留め、具体的な検討事項は今後6ヶ月の間に各連盟において継続審議する、との修正提案が提出されました。私は、修正提案についてその場で口頭で意見を述べるとともに、原案に対してもJARLの立場を説明しました。議論はなかなか白熱し、第3日目に継続審議となりました。
なお、WG1では、IARU会長のTim Ellam氏から、IARUの組織変更プランに関するプレゼンがあったものの、プレゼンのみで具体案が審議されたわけではなく、1日で審議を終了したと聞きました。
夜は、JARL主催の夕食会がホテル近くの海鮮レストランで行われ、森田会長の英語での挨拶と乾杯で始まりました。50名以上の参加者は大いに満足してくれた様子で、帰りには皆さん森田会長と挨拶を交わされていました。
第2日目のTwitter投稿まとめ
https://twilog.togetter.com/7K1BIB/date-241105?order=allasc
第3日目:11月6日(水)
前日の大役を果たされた森田会長は帰国されました。朝9時から行なわれた全体会合で、WG1の報告の確認と、WG2の中間報告が行われました。
その後、部屋を移してWG2の審議が継続して行なわれました。議長と秘書が作成されたReportの案文がプロジェクターに映し出され、1行1行確認していきました。
私はJARLの代表として、また個人的に、複数回意見を述べ、適切なReportの作成に貢献しました。私から、日本の総務省が、1.2GHz帯がGNSS(「みちびき」などの全地球航法衛星システム)に影響を与えないよう新たな規制に向け動き始めたこと( 周波数再編アクションプラン(令和6年度版)(案)に対する意見募集 )を報告すると、各国連盟から強い関心を呼びました。IARU第1地域では、役所に提出する解説文書を作成中とのことで、解説文書の案文を頂くことができました。
15時半から、過去3年分の決算と今後の予算を審議する財務委員会が開催されましたが、私はこれは欠席して外出し、本業での用事を済ませました。
第3日目のTwitter投稿まとめ
https://twilog.togetter.com/7K1BIB/date-241106?order=allasc
第4日目:11月7日(木)
アユタヤ遺跡の見学ツアーが行なわれました。和やかな雰囲気の中、参加者は、親睦を深め、また各所で意見交換が行なわれていました。単なる遊びではない、意義深い行事でした。
私は、この日いち日、スマホアプリ(APRSdroid)を使ってAPRSの位置情報を流していました。同じことをしていた参加者が他にもおり、やっぱり無線家の考えることは同じだなと笑ってしまいました。