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JJ1LFO ~線無きことかな~ (2024/11/23 1:35:59)
現在データベースには 22 件のデータが登録されています。
USB 5V入力12V出力変換アダプターの製作
(2020/10/27 20:04:00)
製作の動機
最近は、車載用のレーダー探知機やポータブルナビも12電源じゃなくてUSB端子から充電できるような製品が増えているが、12Vシガーソケットから電源供給・充電するタイプの機器もまだまだ転がっている。
殆ど車に乗らない生活スタイルに変わったので、車載機器を持ち出していてバッテリーが空になった時に充電する手段が無くて困っていた。
普段からスマホ用にモバイルバッテリーやUSB電源アダプターは持ち歩いているで、
USB の 5V
を 12V に昇圧して DC IN ジャックに変換する機器が在ればいいのだが、
検索してもなかなか良いものが無い!
ので、自分で作ることにした。
検討・調達
5V -> 12V 昇圧用の適当な部品が無いかネットで検索してみたら、
インダクタ不要のチャージポンプIC
というのが有った。
NJU7660 は USB の 5V 入力だと倍電圧で10Vでちょっと足りない。
NJU7670
は負電圧用だけど3倍電圧出力があり、逆に使えば15V=3x
5V出力可。しかし15Vを12Vに落とすのに3端子シリーズレギュレーターなんかを使ったら、折角のインダクタ不要のスペースメリットが無くなってしまう。
- MAXIM MAX662A
という、入力電源電圧範囲:4.5V~5.5V、+12V ±5%安定化出力 という電圧に関してはベストなICもあった。
しかし、変換効率が良く、部品が少なくて小さく作れるメリットが非常に魅力的なキャパシタによるチャージポンプ方式も、宿命的に出力電流があまり取れず充電用途には役不足なので諦める。
そこで常識的にインダクタを使った古典的な昇圧DC-DCコンバータICで、
で、 秋月電子 に寄って部品棚を物色していると
最大24V出力 昇圧型スイッチング電源モジュール LMR62421(TI)使用キット[AE-LMR62421]
[ 拡大 ]
仕様
・出力電圧範囲:3.5V~24V
・入力電圧範囲:2.7V~5.5V(入力電圧<出力電圧)
・スイッチング周波数:1.6MHz
・効率:90%(入力5V、出力12V、電流0.3A)
という 30 mm角、高さ14 mmのDC-DC昇圧キットを発見!
これなら基板作成の手間も不要だし、DIP IC
とバラの部品で組むより小さく作れそうなので、コレにする。
ついでに出来るだけ小さくてモジュールが収まりそうなプラケースも調達。
製作
家に帰ってから説明書とDC-DC ICのデータブックをチェック。
- DC-DC IC は TI の LMR62421 という、なんの変哲もないスイッチング素子内蔵の 5 pin 昇圧 PWM DC-DC
- 電流制限は内蔵スイッチング素子のON期間中の電流監視で大きさは固定。
- 負荷電流が大きくなると、PC の USB 5V 出力 500 mA を超える可能性もあるが、モバイルバッテリーなら大丈夫か?
- DC-DC IC 等の表面実装部品は基板に半田付け済。電解コンデンサやVR、端子台などを半田付けするだけで完成。小さい部品が見づらくなったお年頃には有難い :-)
回路図はシンプルでなんの変哲もないこんなの。
多回転半固定抵抗 VR1
で昇圧出力電圧を調整できる。
動作確認
CN1 Vin+ に USB VUBS +5V を掛けて、
CN2 Vout が 12V になるように VR1
を調整する。
約 180 mA の負荷を掛けた時の、
U1 LMR62421 Pin.1 "SW"
のスイッチング電圧波形を確認した。
負荷 約180mA 5V/div, 0.2us/div
インダクタンス L1 の電流が 0 にならない電流連続モードで動作しており。
変なリンギングも無く、きれいなスイッチング波形。
次に、負荷を軽く約 10 mA
で観測してみる。
インダクタンス L1 の値からすると、電流不連続モードに突入するので
負荷が大きい時のように綺麗なスイッチング波形にはならないはず。
負荷 約10mA 5V/div, 0.2us/div
予想通りに、インダクタンスに電流が流れない区間が出来てスイッチング波形が暴れる。
主にインダクタンスとスイッチング素子の寄生容量による共振現象で、高周波ノイズをまき散らす。
しかし、歯抜けのPWM波形にまで酷くはなっていない。
さらに負荷を軽くすると、PWM周期の1周期の間にスイッチングが行われない場合が出てきて、
歯抜けPWM風のスイッチング動作になり、低周波ノイズをまき散らすことになる。
この低周波ノイズは周期がランダムっぽく、高周波ノイズのように簡単にフィルターで落とすことが難しい。
昇圧スイッチング回路は、原理的には車のイグニッションコイルによる高圧発生回路と同じ。
完璧な無負荷でスイッチングが起きると、超高電圧が発生してしまう。
実際には完全な無負荷はあり得ないので、超が付くほどの高電圧にはならないが。
そこで、あまり軽負荷になりすぎないように。
動作中の表示も兼ねて、Green LED + 1 kOhm の約10 mA @12V 負荷を出力
CN2 に付加しておくことにした。
初号機
最初、写真のような小さいプラケースに
USBケーブルと、
JEITA(旧EIAJ)電圧区分#4 のDCジャックを、
取り付けて組み込んだ。
でも、カバンの中でかさばって邪魔に感じてたので、もっと小型化を画策。
弐号機
小型化の為に、
[ 拡大 ]
場所を食うJACK類を
- MicroUSB Type-B JACK ケーブル
- JEITA(EIAJ) 電圧区分#4 DC JACK ケーブル
に置き換えて、
背の高いネジ端子
CN1, CN2 を外し、
代わりにケーブルを直接基板端子に接続。
変な力が接続部に掛からないようにケーブルを、
結束バンドで基板に固定。
最小出力負荷を与える、動作チェック用 LED + 抵抗も取り付ける。
背の高い電解コンデンサ C1, C2
を一旦取り外し、
足の長さを延長して、横倒しにして半田づけ。
これまた背の高い、多回転可変抵抗 VR1 を外し、
出力電圧が約 12 V になるように、18 kOhm
の固定抵抗に交換。
これで高さが低くなって、全体を薄くできた。
[ 拡大 ]
ケースの代わりに、熱収縮チューブで覆って絶縁。
完成。
かなりペタンこになって、持ち歩いても邪魔にならなそう。
実際に使うときには、
12V
機器側に合わせた DC PLUG と、JEITA(EIAJ) 電圧区分#4 DC PLUG
を接続したケーブル・アダプターで電源供給。
閑話休題
DC プラグ・ジャック端子規格
ACアダプターのDC端子の、極性やプラグ形状の乱立をなんとかしたいと、
旧 EIAJ, 現 JEITA が、せっかく
という統一規格を作ったのだが、
結局あまり普及しなかった。
そうこうしている内に、Mini -> Micro USB
端子が電源供給端子として
使われるようになって普及している。+5V が欲しいならコレが一番便利。
今後は、この用途にも Type-C USB が使われるようになるのかな?
電力や電圧もいっぱい取れるし。
ネックはコントローラーICが必要になるので、コストがどれだけ抑えられるか。
DC-DCコンバーターの設計について
DC-DCコンバーターは、一般的なアナログ回路ともデジタル回路とも、ちょっとセンスが違うので。
意外にベテランと思われるエンジニアにも、しっかり理解されていない場合がある。
PWM 方式
DC-DC で、一番のキモはインダクタンスの選定。
コントローラーICが決められていたら、
- スイッチング周波数
- 消費電流の固定費になる IC 自体の消費電流
- スイッチング素子の抵抗成分、最小電圧
- フライホイール・ダイオード内蔵であれば、その Vf
などは選択の余地ほぼなし。
動作条件として
- 入力電圧範囲
- 出力電圧と、想定する負荷電流範囲
が同一でも、
- 高負荷時の効率を重視するのか?軽負荷時の効率を重視するのか?
- 電流不連続モードまで使うのか?避けるのか?
という設計者の意図次第で、最適なインダクタンスは変わるので、
一意に決まるものではない。
なので、
「このインダクタ定数の選定理由は?」
と訊いて、
「データシートの回路例の部品定数だ」
と答えが返ってきたら、
その設計はかなり怪しいと思って間違いなし。
回路例と自分の欲しい動作条件が全く同一なのか?意図も一緒なのか?
また、盲点として。
シリーズ・レギュレーターと違って、PWM 方式の DC-DC コンバーターの場合。
負荷が重いときより、軽い時にノイズをまき散らしたりスイッチングが不安定になって問題を起こしやすい。
ある程度いい加減に設計されていても、極端に定格を満たしていない部品を使わないかぎり、
負荷が重い時は安定して動作しやすい。
しかし、負荷が軽くなるとインダクタ電流不連続モードに突入しやすくなる。
電流不連続モードのインダクタ電流が流れない区間では、
インダクタの抵抗成分で電力消費されないので、
変換効率を上げる為に意図して使われる場合もある。
でも、電流が流れずスイッチング素子がOFFという事は、
インダクタが不安定なオープン状態。
極端になるとコイルが鳴き出したり、出力ノイズが大きくなったりして
用途によっては問題となる。
そして、パワー・インダクタという部品も曲者。
同じコアで、インダクタンス増やそうとすると、細い線をいっぱい巻くので、
- 直流抵抗が増えて損失も増える
- 磁気飽和も起こしやすい
逆に、インダクタンス減らすために、太い電線を少なく巻くと
- 損失も減って大電流まで磁気飽和を起こさないけど
- インダクタのリップル電流振幅が大きくなりすぎる
全てのパラメーターがトレードオフの関係。
その上に、個別の型番毎の流通量で値段も違うので、
小さいコアの部品の方が絶対安いとも限らない。
ホントは、出力電流に応じてインダクタンス値が可変にできたら、
設計がかなり楽になるのだが、残念ながら現時点ではそんな都合の良い部品はないね。
IC-705 亀井堂総本店 瓦煎餅缶 アンテナ・チューナー
(2020/10/22 11:27:00)
製作の動機
で貰ったオマケ。
蓋に
IC-705 がプリントされた 亀井堂総本店 の煎餅缶。
何か有効な利用法が無いかなと思案し、最初は小物入れに使う位しか思いつかなかったけど。
せっかくHFにも出れる 705
だから、適当なワイヤーアンテナで送信できるようにアンテナ・チューナーを組み込もうと目論む。
構想
ミズホ QRP カップラー版
昔にハムフェアで買っていた、
ミズホの QRPカップラー
用の 空芯 コイル LA-1 が手元にあったので、
これでミズホ・コピーのアンテナ・チューナーを作ろうとした。
このミズホの QRPカップラー に採用されている
π-c型という形式、
米国
DRAKE 社 MN-4
で採用されて広まったようです。
八重洲などの国内メーカーのアンテナ・チューナーにも使われていました。
MN-4 等では BAND
毎に固定だった送信機側の頭のキャパシタを、
ミズホ
QRPカップラー ではバリコンにしています。(一番左のつまみ)
3つのキャパシタ全部を可変にしているので MN-4 より整合範囲は広くできそうです。
は、 おそらくミズホのQRPカップラーと同じ回路でしょう。
しかし!!
コイルのタップ切替以外に、バリコン3つの調整が必要なのも面倒臭そうだし。
なによりも、内部高さが約 30 mm と低く、
LA-1コイルが瓦煎餅缶に収まらず、蓋が出来ないのに気が付いた!
煎餅缶を使えないと意味が無い。今回は
Z-match 版
簡単で使いやすいアンテナ・チューナーの回路がないか調べていたら。
コイルの途中から出したタップと2連バリコンでつくられる2つの
共振点を利用した Z-match
という巧妙なトポロジーを見つけた。
Frank, G3YCC さんがモディファイ したバージョンや。
コイルの切替無しに可変キャパシタ2個の調整で HF帯全域の整合が取れるという、
小さく作れて使いやすそうな回路。
しかし、逆にキャパシタ2個だけの可変でHF帯全域をカバーするというのは、
調整がクリティカル過ぎるようにも思うし。
損失が多いという評価もあるので、
今回はパス。
興味はあるので、一度は実際に作って評価してみたい。
T-match 版 (採用)
いろいろ調べて結局。
部品が少なくて損失が少なそうな、
一般的な π-match か T-match
が良さそう。
LPF になる π-match では高調波がカットされるのに対して、
HPF の T-match
では高調波がスルーされてしまうのですが。
- EFW アンテナのように高いインピーダンスにも T-match ならなんとか整合できる?
- 技適取得済の IC-705 では高調波は問題にならないだろう。
という事で、
単連バリコン2個とコイル1個で作れる T-match 回路を採用する事に。
煎餅缶が金属なので、
「コイルは磁束漏れの少ないトロイダルコアを使うしかないなあ 」とか、
「トロイダルコイルの固定は?直接、ロータリースイッチに半田付けすればいいか。」
などと考えながら調べていたら。
David Cripe, NM0S さん
というのを見つけた。
LED 2個の SWR
インジケータ―回路は、かなり使い勝手が良さそうだが。
IC-705 には SWR
メーター機能が内蔵されているので、
T-match 整合回路の部分のみ参考にさせて頂く。
製作
回路
基本的に、 4S-Tuner/Antenna Coupler から SWR インジケーター回路を省略。
ただし、コイルの未使用タップを何処にも接続しないと、
高電圧が発生してアーク放電が起きるかもしれない。
未使用タップの端を、接地にショートする為コイルの向きを逆さまにしました。
(未使用タップをショートするとコイルの Q が下がるという報告もあるのだけど)
部品
- ポリバリコン 260 pF 2個
2020年10月現在まだ購入可能
- トロイダルコア T-106-2 1個 :
- 12接点ローターリーSW 1個 :
- BNCコネクタ 2 個 :
- つまみ :
ポリバリコンの注意点
私の入手したポリバリコンは回る羽根のローターが、つまみ軸と導通していました。
T-match 回路では、ポリバリコンの両端の端子が接地からフローティングしています。
特に真ん中のコイルとポリバリコンの接続点は、インピーダンスが非常に高くなります。
この高インピーダンス点をポリバリコンのローター側にした場合、
つまみを回そうとして手を近づけると不安定になって SWR がふら付きます。
ローター側を送信機出力/アンテナ端子に接続した場合は、
コイル側ほどは高インピーダンスにならないので、
実用上は大丈夫のよう。
必ず、
テスター等でポリバリコンのつまみ軸と端子が接続されているローター側端子を確認して、
コイルと反対側のBNCジャック側と接続してください。
そういう意味では、π-match 回路ならローター側を確実に接地できるので安心だったかも。
ケースの加工
こんな感じにドリルで穴開け。
φ 9.5 はリーマーを併用。
しかし、煎餅缶の金属板が柔らくて薄いので、意外に苦労。
組み立て、配線
トロイダルコアをロータリーSWの背中に載せて、
SWの端子の穴を利用しながら電線を巻いていき。
巻き終わったらSW端子と半田付けしておく。
穴あけが済んだら、
- 各々の部品をねじ止めして
- 各部品の間をショートしないように注意して空中配線
- 最後につまみをねじ止め
で、完成
使用感
ベランダに100円ショップ針金で作った、21 MHz 1/4 波長に共振する様に長さを調整したアンテナを設置しています。
大昔にヤフオクで安く入手した ヤエス FC-757AT
DRAKE π-c 型で、コイルのタップ切替とエア・バリコンをCPU制御の DC
モーターで回転させるという
原始的なオート・アンテナ・チューナー。
FC-757AT では、21
MHz 用なので 7 MHz には長さが足りないアンテナを
無理やり整合させようとしても、
SWR 3
付近までしか落ちず整合不可能だったのですが。
この T-match 煎餅缶チューナーなら、SWR 1.0
まで追い込む事ができました。
さらに、千石電商で買ってきた BNC ロッドアンテナ(50 MHzには長さが足りず
SWRが下がらない)で、なんと50 MHz でも SWR 1.0 に持っていく事ができました。
- 整合可能範囲はかなり広いようです。
- 10 W 連続送信後に、コイルやポリバリコンを触ってみても、殆ど温度上昇が感じられないので、損失も少なそう。
- 対称的な回路なので。送信機、アンテナをどちらのジャックに接続しても使えます。
- ポリバリコンの耐電圧が不明なので。整合がとれるまでの調整時は、送信機の出力を絞っておいた方が安心。
- 挿入損失を少なくする為、整合がとれて一番インダクタンスが少なくなるコイルのタップを選ぶと良いでしょう。
- コイルのタップを切り替えるときは、念のため送信しないでください。
ただ、煎餅缶ではバリコンのつまみの径に限界があり、
もう少し大きな径のつまみにした方が調整しやすいですね。
煎餅缶を諦めて、普通のケースに組み込む方が良かったかも :-)
参考
アンテナ・チューナーに関して、すごく良く纏まっているサイト
トロイダルコアの計算に便利なサイト。インダクタンスだけじゃなく必要線材の長さも
execution time : 0.034 sec